今回ご紹介する言葉は、故事成語の「管鮑の交わり(かんぽうのまじわり)」です。
意味、使い方、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「管鮑の交わり」をざっくり言うと……
読み方 | 管鮑の交わり(かんぽうのまじわり) |
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意味 | 互いをよく理解していて非常に仲がよいことのたとえ |
由来 | 古代中国の斉という国にいた管仲と鮑叔牙の話より |
類義語 | 「莫逆の友」「水魚の交わり」「刎頸の交わり」など |
英語訳 | A Damon and Pythias friendship (古代ギリシャのダモンとピュシアスのような関係) |
このページの目次
「管鮑の交わり」の意味をスッキリ理解!
「管鮑の交わり」の意味を詳しく
「管鮑の交わり」とは、「管と鮑の交友関係」という意味です。「管鮑」は、2人の人の名前なのです。
「交わり」というと少し古めかしい言い方のように思われるかもしれません。しかし、「交流」「交際」「交友」など、人づきあいを意味する熟語に「交」が使われていることから、友人づきあいを意味することがわかるでしょう。
管と鮑は非常に仲がよく、互いをよく理解していました。長いつきあいだからこそ、お互いの失敗を許せる関係になったのです。
「管鮑の交わり」の使い方
- A社の社長とB社の社長は、小学校からずっと一緒に過ごしてきた管鮑の交わりの仲だ。
- 管鮑の交わりの君になら、秘密を打ち明けられるよ。
- 管鮑の交わりだと思っていた2人の仲が、借金をきっかけに崩れてしまって驚いた。
「管鮑の交わり」の由来
「管鮑の交わり」は、中国の古典に由来する言葉です。古代の中国は、いくつもの国に分かれて争っていました。そうした時代にあった、斉(セイ)という国に、管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)がいました。この2人こそが、「管」と「鮑」です。
斉を治めていた桓公(かんこう)は、鮑叔牙の勧めによって、管仲を仕えさせることにしました。実は管仲は、斉の王の座をめぐって争っていた桓公を、暗殺しようとしていました。しかし、桓公は、鮑叔牙の勧めに従って管仲を登用するのです。
管仲はさまざまな実績を上げますが、後に鮑叔牙から受けた恩を振り返ります。「私を生んだのは父母だが、私を本当に知っているのは鮑叔牙だ」と言いました。そのようなことを言ったきっかけは、いくつかあるのです。
- 一緒に商売をしていたとき、いつも自分が多く利益を得ていた。
鮑叔牙は、管仲が貧乏なことを知っていたので、管仲のことを欲張りだと思わなかった。 - 鮑叔牙のためにとった策が、失敗に終わって鮑叔牙はかえって苦しい立場になった。
管仲がたまたま運が悪かっただけだと考え、鮑叔牙は管仲を愚かだと思わなかった。 - 管仲は、政治家に登用されるたびに失敗していた。
鮑叔牙は、管仲がたまたま時流に乗れなかっただけだと考えた。 - 管仲は、戦いに出るたびに、負けて逃げ帰ってきた。
管仲には老いた母がいるので、戦死するわけにはいかないことを鮑叔牙は知っていた。 - 管仲は戦いに敗れて捕虜になったときも、殉死せずに逃げ帰った。
鮑叔牙は、管仲が小さな義理よりも天下に功績が残ることを気にすることを知っていた。
6つのエピソードをあげてみました。どれも、管仲が一方的に鮑叔牙の世話になっているような話ばかりです。これで、本当に「お互いのことを理解している」と言えるのでしょうか。
しかも、鮑叔牙は、管仲を推薦すると、自らは管仲の部下につきます。
これでは、まるで鮑叔牙が一方的に管仲に尽くしているだけのように思いませんか。
しかし、鮑叔牙は管仲が非常に優秀であることを見抜いていたのです。管仲は、兄弟の争いから逃げてきました。そのときの世話をしていたのが鮑叔牙なのです。若いときから管仲のことをよく知っているからこそ、このような献身的な関係が作れるのでしょう。
管仲が大臣として斉を治めるのに成功しても、人々は鮑叔牙が管仲を政治家に勧めたおかげだと考えました。そして、鮑叔牙の一族は、十数代にわたって領地を得て厚い信頼を受けます。
「管鮑の交わり」は、それぞれが斉で活躍したというハッピーエンドの物語でした。
「管鮑の交わり」の類義語
には、以下のような類義語があります。
- 莫逆(ばくぎゃく)の友:ケンカしないほど仲がよい様子
- 水魚(すいぎょ)の交わり:水と魚のように切っても切れない関係
- 刎頸(ふんけい)の交わり:その人のためなら首をはねられてもいいというほど仲がいいこと
- 断金の交わり:金を断ち切れそうなほど堅い友情で結ばれている様子
- 金蘭の契り:金のように堅く蘭のように素晴らしい友情
「管鮑の交わり」の英語訳
「管鮑の交わり」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- A Damon and Pythias friendship
(古代ギリシャのダモンとピュシアスのような関係)
古代中国だけでなく、古代ギリシャにも、堅い友情で結ばれた人の話はあるのですね。
まとめ
以上、この記事では「管鮑の交わり」について解説しました。
読み方 | 管鮑の交わり(かんぽうのまじわり) |
---|---|
意味 | 互いをよく理解していて非常に仲がよいことのたとえ |
由来 | 古代中国の斉という国にいた管仲と鮑叔牙の話より |
類義語 | 「莫逆の友」「水魚の交わり」「刎頸の交わり」など |
英語訳 | A Damon and Pythias friendship (古代ギリシャのダモンとピュシアスのような関係) |
互いによく理解している親友が1人でもいれば、人生が豊かになることでしょう。たくさんの知り合いより、1人の親友の方が頼りになります。