今回ご紹介するのは、ことわざ「烏合の衆(うごうのしゅう)」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「烏合の衆」をざっくり言うと……
読み方 | 烏合の衆(うごうのしゅう) |
---|---|
意味 | バラバラで統一性がない、無能な群衆・軍勢 |
由来 | 中国の『後漢書』 |
類義語 | 寄り合い所帯、有象無象、雑輩など |
英語訳 | The mob has many heads but no brains.(考えのない、人数ばかりの暴徒) |
「烏合の衆」の意味をスッキリ理解!
「烏合の衆」の意味を詳しく
「烏合の衆」とは、規律・統制・秩序がなく、役に立たない軍勢・群集を指します。
『烏(カラス)』という言葉が使われていますが、この場合、カラスは鳥ではなく『人』を表します。
また、『烏合』とは、カラスの集団が、規律がなくバラバラであることを表しますが、カラスは人に変換されるので、『烏合』は人間の集団が、規律がなくバラバラであることを表す言葉となります。
一方、『衆』は『多くの人間の集まり』を指します。
つまり、「烏合の衆」とは、カラスのようにまとまりなく集まった人間の群れという意味になるのです。
その意味からも想像できる通り、ある集団をあざけったり、揶揄(やゆ)する際に使われる言葉です。
「烏合の衆」の使い方
- わが軍のほうが数は劣っているが、所詮敵軍は烏合の衆なので、勝算は大いにある。
- 休みの日に大勢でテニスをしたが、急遽(きゅうきょ)集まったメンバーだったため、みんな素人で烏合の衆でしかなかった。
- どんなにこのプロジェクトに人数を割いたところで、リーダーを務められるような人物がいなければ、烏合の衆も同然だ。
①では、敵軍を「烏合の衆」と表現することで、人数ばかり多いが役に立たない軍勢と侮辱(ぶじょく)しています。
②では、テニスのために人が集まったは良いものの、まともにプレーできる人間がおらず、自分たちを皮肉っています。
③では、プロジェクトのために集められたが、支持をだす司令塔がいないため、まとまりがなくふらついたチームと、自分たちを卑下(ひげ)しています。
例文のように、「烏合の衆」は良い意味で使われることはなく、対象の集団を表現する際、マイナスな意味で使われます。
「烏合の衆」の由来
「烏合の衆」は、中国の『後漢書(ごかんじょ)』に登場する、耿(こう)えんが発した言葉に由来します。
後漢書とは、5世紀に書かれた、中国後漢朝時代にまつわる歴史書のことです。
耿えんは、漢皇帝の子孫と嘘をついて挙兵した王郎の軍隊に対して、次のように言いました。
『烏合の衆に過ぎない王郎の軍など、枯れ木を折るように簡単に蹴散らすことができる』
このとき、耿えんが嘘をついて挙兵した兵士を、カラスの群れと喩え、そんなものは簡単に倒すことができると罵倒(ばとう)しました。
彼が軍勢をカラスに喩えたのは、昔は今のように動物に対する知識がなかったためでしょう。
今でこそ賢い鳥として知られるカラスですが、列をなして飛ぶ姿よりも、単体で木に止まったり飛んでいる姿が印象的です。
そのため、昔は頭が悪く、カァーカァー鳴くうるさい鳥と思われていたようです。
しかしながら、古代中国の神話や絵画には『三足烏(さんそくう)』と呼ばれる、三本の足を持ったカラスがたびたび描かれます。
このカラスはことわざで喩えられているような悪いものではなく、神聖な存在として登場します。
足が3本あるのは、中国では偶数を陰、奇数を陽と考えるためです。
この三足鳥は太陽に住むと考えられており、太陽のシンボルとされています。
また、清朝(1644-1912)の時代には、皇帝がカラスに命を救われたことから、神聖な動物として重宝されていたそうです。
「烏合の衆」の類義語
「烏合の衆」には、以下のような類義語があります。
- 寄り合い所帯(よりあいしょたい):「烏合の衆」に同じ
- 有象無象(うぞうむぞう):取るに足らない雑多な連中
- 雑輩(ざっぱい):数のわりに関心を寄せない連中
「有象無象」と「雑輩」は、より強い蔑(さげす)みを表す言葉なので、使う場面はよく考えたほうが賢明でしょう。
これらの類義語は、市民を蔑むときにも使われますが、いずれにしても、失礼な言葉には違いありません。
「烏合の衆」の英語訳
「烏合の衆」を英訳すると、次のようになります。
- the mob has many heads but no brains
(暴徒は頭数は多いが、脳みそは一つも持たない) - a disorderly crowd
(無秩序な群衆)
“the mob has many heads but no brains” は、直訳すると『暴徒は、頭はたくさん持っているが、脳みそは全く無い』という意味です。
つまり、『どんなに人数が多くても、物事を考えられるような人間は一人もいない、取るに足らない集団』を表す文章です。
一方、 “a disorderly crowd” はそれをより短く、名詞にしたものです。
まとめ
以上、この記事では「烏合の衆」について解説しました。
読み方 | 烏合の衆(うごうのしゅう) |
---|---|
意味 | バラバラで統一性がない、無能な群衆・軍勢 |
由来 | 中国の『後漢書』 |
類義語 | 寄り合い所帯、有象無象、雑輩など |
英語訳 | The mob has many heads but no brains.(考えのない、人数ばかりの暴徒) |
「烏合の衆」ということわざは、日常的に使うものではないかもしれません。
しかし、私たちは常に何かの集団に属しながら生活しています。
集団の中にいると、ついつい自分の頭で考えることを忘れてしまったり、意見を述べることがおろそかになりがちです。
このことわざは、そんな人間が陥(おちい)りやすい現象を指摘してくれる言葉でもあります。
『自分はいま、烏合の衆の一部になってはいないかな?』と、心にとどめておきたいですね。