「覆水盆に返らず」の意味とは?使い方から英語や類語まで例文付きで

言葉

今回ご紹介する言葉は、故事成語の「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」です。

今回は、「覆水盆に返らず」の意味、由来、使い方、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「覆水盆に返らず」をざっくり言うと……

読み方覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
意味1度起こったことは元には戻らない
由来復縁を申し出た前妻に、太公望が「盆に水を戻せ」と言ったことから
類義語後の祭り、後悔先に立たずなど
対義語転ばぬ先の杖、備えあれば患いなしなど
英語訳It is no use crying over spilt milk(こぼれたミルクを嘆いてもどうにもならない)など

「覆水盆に返らず」の意味をスッキリ理解!

覆水盆に返らず:1度起こってしまったことは2度と元には戻らない

「覆水盆に返らず」の意味を詳しく

「覆水盆に返らず」は「1度起きてしまったことは、2度と元には戻すことができない」という意味です。

「覆水盆に返らず」のもともとの意味は、「1度離婚した夫婦は、元には戻れない」という意味でした。

これが転じて、「1度起きてしまったことは、2度と元には戻せない」という意味が生まれました。

「覆水盆に返らず」は以下のような言葉の組み合わせになっています。

「覆水盆に返らず」の構成
  • 覆水:こぼれた水
  • :お盆(由来となった中国では「ボウル状の容器」のこと)
  • 返らず:戻せない

つまり、「覆水盆に返らず」は直訳すると「こぼれてしまった水は、もうお盆に戻すことができない」となるのです。

ちなみに、水が自分でお盆に戻っていくわけではないので、「帰らず」ではなく「返らず」が適切です。

「覆水盆に返らず」は以下のように表記されることもあります。

「覆水盆に返らず」の別名
  • 覆水収め難し
  • 覆水不返(ふくすいふへん)
  • 覆水難収(ふくすいなんしゅう)
  • 覆水不可収

「覆水盆に返らず」の使い方

  1. セーブデータが消えてしまいショックだったが、覆水盆に返らずだ。
  2. 彼女と別れてしまったが、今となっては覆水盆に返らずだ。
  3. 間違えて来客用のお菓子を食べてしまった。覆水盆に返らずの状態だ。

「覆水盆に返らず」の由来

「覆水盆に返らず」の由来は、紀元前11世紀頃の中国について記した「拾遺記(しゅういき)」に書かれている以下のようなエピソードです。

紀元前11世紀の中国は、周という名前の国でした。この国に、太公望(たいこうぼう)という人物がいました。

太公望には妻がいました。2人は貧しかったにもかかわらず、彼は働きもせずに本ばかりを読んでいました。あきれた妻は、太公望に離婚を申し出ます。

 

その後、太公望は出世し、とても高い役職につくことになります。それを聞きつけた前妻は太公望に復縁してほしいと言います。

すると太公望は持っていたお盆の水をこぼし、妻に「この水をお盆に戻すことができたなら復縁しよう」と言います。もちろん妻はそんなことはできません。

太公望は「この盆の水をもとに戻すことができないように、私たちの関係も元に戻すことはできないのです」と言いました。

この逸話がもとになって「覆水盆に返らず」という言葉ができました。

「覆水盆に返らず」の類義語

  • 後の祭り:物事が終わった後に後悔してもどうにもならないこと
  • 後悔先に立たず:過ぎたことを悔んだり、落ち込んでも取り返しがつかない状態
  • 時すでに遅し:修正が効く段階にないこと
  • 打つ手がない:行うべき有効な策がないこと

「覆水盆に返らず」の対義語

「覆水盆に返らず」には以下のような対義語があります。

  • 転ばぬ先の杖:準備しておけば、予想していない出来事にも対応できるという意味
  • 備えあれば患いなし:用意をしておけば心配は無いという意味
  • 焼け棒杭(くい)に火が付く:以前に関係があった者同士が再びもとの関係に戻る
  • 元の鞘(さや)に収まる:一度離縁した人同士が再びもとの関係に戻る
  • 落花(らっか)枝に返らず:一度離婚した夫婦は再び元に戻らない
  • 破鏡(はきょう)再び照らさず:一度離婚した夫婦は再び元に戻らない
  • 濡れぬ先の傘:失敗しないように手回し良く準備する

「覆水盆に返らず」の英語訳

「覆水盆に返らず」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • It is no use crying over spilt milk.
    (こぼれたミルクを嘆いてもどうにもならない)
  • A broken egg cannot be put back together
    (潰れた卵は元通りにできない)
  • Never comb a bald head.
    (禿げた頭にくしを使うな)
  • Things done cannot be undone.
    (一度行われたことは元に戻せない)
  • What’s done is done.
    (終わったことは終わったこと)
  • It is useless to flog a dead horse.
    (死んだ馬をムチで叩いても無駄)

日本語では「水」の部分が、英語では「ミルク」や「卵」になっていますね。

ちなみに、“It is no use crying over spilt milk.” は「ミルクはまた注げばいい」というポジティブなニュアンスも含まれています。

まとめ

以上、この記事では「覆水盆に返らず」について解説しました。

読み方覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
意味1度起こったことは元には戻らない
由来復縁を申し出た前妻に、太公望が「盆に水を戻せ」と言ったことから
類義語後の祭り、後悔先に立たずなど
対義語転ばぬ先の杖、備えあれば患いなしなど
英語訳It is no use crying over spilt milk(こぼれたミルクを嘆いてもどうにもならない)など

「覆水盆に返らず」という故事成語はとても有名な言葉ですね。

間違えた使い方をして、恥ずかしい思いをしてしまっても「覆水盆に返らず」です。

日常生活で使うことも多いのでこの機会にきちんと理解しておきましょう。