今回ご紹介する言葉は故事成語の「井の中の蛙(かわず)大海(たいかい)を知らず」です。
言葉の意味、由来、例文、会話例、続き、類義語、英語訳、中国語訳について詳しく解説します。
☆「井の中の蛙大海を知らず」をざっくり言うと……
読み方 | いのなかのかわずたいかいをしらず |
---|---|
意味 | 狭い知識や見方にとらわれて、視野がせまくなっている状態 |
原点 | 荘子の書いた『秋水』で説明されている |
由来 | 井戸の中の蛙に海の話が通用しないのは、蛙が井戸という小さな世界に生きているから |
続き | 狭い世界にいたとしても、空が雄大なことは知ることができる |
類義語 | 夜郎自大、針の穴から天をのぞく、夏虫氷を疑う、など |
英語訳 | The frog in the well knows nothing of the great ocean. など |
中国語訳 | 井底之蛙 |
このページの目次
「井の中の蛙大海を知らず」の意味をスッキリ理解!
「井の中の蛙大海を知らず」についてもっと詳しく
「井の中の蛙大海を知らず」とは、「狭い知識や見方にとらわれて、視野がせまくなっている」という意味です。
ちなみに、「蛙」は正式には「かわず」と読みますが、「かえる」と読んでも間違いではありません。
「井の中の蛙大海を知らず」は、小さな井戸の中に住むカエルは、大きな海があることを知らない、という意味です。
知識が足りない状態にありながら、自分は何でも知っているように勘違いしたり、得意げになっている人を指すこともあります。この場合では、世間知らずを意味します。
「井の中の蛙大海を知らず」の表記
「井の中の蛙大海を知らず」は以下のように表記されることもあります。
- 井蛙(せいあ)
- 井底の蛙(せいていのかわず)
- 井蛙の見(せいあのけん)
- 井の中の蛙(いのなかのかわず)
- 井蛙(せいあ)は以(も)って海を語るべからず
意味は変わりません。
「井の中の蛙大海を知らず」の由来
「井の中の蛙大海を知らず」の由来は、中国の『秋水(しゅうすい)』という本です。
『秋水』では以下のように書かれています。
黄河(こうが)の神が、初めて海へ行ったところその広さに驚き、北海の神に話したらこのように言われました。
「井戸の中の蛙が海のことを語れないのは、井戸のくぼみにこだわっているからだ。夏の虫が凍りのことを語れないのは、夏の季節にとらわれているからだ。
いずれも狭い環境にとらわれ、ありきたりの視野・見方しか持ち合わせていないからだ。
あなたは大きな海を見て、自身のおろかさを知り、物事の真理を知ることができたのだ。」
このように、『秋水』では、視野が広がったことを賞賛する言葉として「井の中の蛙大海を知らず」を使用しました。
この話が転じて、「井の中の蛙大海を知らず」は世間知らずを意味するようになりました。
- ※道教:中国の三大宗教の一つ。他の二つは、儒教と仏教。
- ※『秋水』:道教を先導した壮子(そうじ)の思想が書かれた書物
「井の中の蛙大海を知らず」の例文
「井の中の蛙大海を知らず」を使用した例文を見てみましょう。
- 甘やかされて育った彼は、井の中の蛙大海を知らずで、周囲にいばってばかりだ。
- 彼はいつも得意げに話すけど、話を聞いていると井の中の蛙大海を知らずだ。
「井の中の蛙大海を知らず」の会話例
日常生活でもこの言葉を使うことがあります。
B「あんなに偉そうにしてたのに、びっくりだね。」
A「彼は、井の中の蛙大海を知らずだったから、良い機会になったはずだ。」
「井の中の蛙大海を知らず」の続き
実は「井の中の蛙大海を知らず」には続きが存在します。
「井の中の蛙大海を知らず」は、世間知らずを指すネガティブな言葉として使用されることが多いです。
しかし、「されど空の蒼さを知る」はポジティブな意味を込めて書かれました。
ほかにも、「井の中の蛙大海を知らず」の続きには以下のようなバリエーションがあります。
- されど天の高きを知る
- されど地の深さを知る
- ただ天の広さを知る
- されど井の中を知る
意味はどの場合でも同じで、一般的に世間知らずと言われても、狭い世界にいたからこそ自分の道を突き詰めることが出来た、という意味です。
ちなみに、続きの部分は、荘子が書いたものではありません。
中国の故事が日本に伝わったあとに、日本人が加えた文です。
加えた人物は定かではなく、複数の方が自分の解釈を加えたと言われています。
「井の中の蛙大海を知らず」の類義語
「井の中の蛙大海を知らず」には以下のような類義語があります。
- 夜郎自大(やろうじだい):自分の力量を知らずにいばっている人のこと
- 針の穴から天をのぞく:狭い知識をもとに大きな問題を解決しようとすること
- 夏虫(かちゅう)氷を疑う:見聞が狭いこと
- 葦(よし)の髄(ずい)から天井を覗く:狭い見識で勝手に判断すること
- 管(くだ)を以(もっ)て天を窺(うかが)う:狭い知識を基準にして大きな問題の判断を下すこと
- 天水桶(てんすいおけ)の孑孑(ぼうふら):広い世界を知らない世間知らずな人
- 木を見て森を見ず:物事の細部に気を取られて全体を見失うこと
「井の中の蛙大海を知らず」の英語訳
「井の中の蛙大海を知らず」には以下のような英語訳があります。
- The frog in the well knows nothing of the great ocean.
(井の中の蛙大海を知らず) - He that stays in the valley shall never get over the hill.
(谷の中に住み続ける人は決して山を超えることはない)
“The frog in the well knows nothing of the great ocean.” は「井の中の蛙大海を知らず」を直訳した表現です。
「井の中の蛙大海を知らず」の中国語訳
「井の中の蛙大海を知らず」は中国語訳すると以下のような表現になります。
まとめ
以上、この記事では「井の中の蛙大海を知らず」について解説しました。
読み方 | いのなかのかわずたいかいをしらず |
---|---|
意味 | 狭い知識や見方にとらわれて、視野がせまくなっている状態 |
原点 | 荘子の書いた『秋水』で説明されている |
由来 | 井戸の中の蛙に海の話が通用しないのは、蛙が井戸という小さな世界に生きているから |
続き | 狭い世界にいたとしても、空が雄大なことは知ることができる |
類義語 | 夜郎自大、針の穴から天をのぞく、夏虫氷を疑う、など |
英語訳 | The frog in the well knows nothing of the great ocean. など |
中国語訳 | 井底之蛙 |
「井の中の蛙大海を知らず」は、日常生活でもよく使用することが出来る言葉です。
ぜひ使ってみてください!