「少なからず」とは「少なくない」という意味です。
「少ないという意味なのか、少なくないという意味なのか、いつも混乱してしまう」という方が多いはずです。
そこで、この記事では、「少なからず」の意味や使い方、語源、類義語、対義語などについて詳しく解説します。
☆「少なからず」をざっくり言うと……
読み方 | 少なからず(すくなからず) |
---|---|
意味 | 少なくない |
語源 | 少なし+ず |
類義語 | 少なからぬ かなり 相当 など |
対義語 | 多からず 多少なりとも わずかに など |
英語訳 | not a few (少なくない) not a little (少なくない) considerably (かなり) |
「少なからず」の意味
少なくない
例:彼の発言に嫌悪感を抱く人が少なからずいた。
「少なからず」とは、「少なくない」という意味です。
ネガティブな意味合いでも、ポジティブな意味合いでも使うことができます。
「多い」ではなく、あえて「少なからず」と表すことで、以下のような効果があります。
- 実際は量が多い(または、程度が激しい)のだが、「少なからず」と遠回しに言うことで明言を避けることができる
- 「少なくはなくが、決して多くもない」という微妙なニュアンスを表すことができる
「少なからず」は「少ない」という意味ではないため、気をつけましょう。
「少なからず」はむしろ、「少ない」を否定する言葉であるため、正反対の意味なのです。
また、「少なからず」は「少なくとも」とも異なります。
「少なからず」は「少なくない」ということを表すのに対して、「少なくとも」は「最低限の程度」を表すからです。
「少なからず」の使い方
「少なからず」は、以下のような場面に使います。
- 量や数が少なくないとき
- 程度が低くないとき
それぞれの場面に分けて、使い方を見てみましょう。
使い方①量や数が少なくないとき
量や数が少なくないとき、「少なからず」は以下のように使うことができます。
- 彼の発言に嫌悪感を抱く人が少なからずいた。
- 期間限定品を販売すれば少なからず注目が集まるはずだから、売上は上がるだろう。
- 先日のコンサートはファンから酷評されていたが、「良かった」という声も少なからずあった。
- ゴミ捨てのルールを守らない住民の方が、少なからずいらっしゃいました。
- 彼の噂については少なからず耳に入ってきた。
使い方②程度が小さくないとき
程度が小さくないとき、「少なからず」は以下のように使うことができます。
- 彼女は、その詐欺事件に少なからず関係していたそうだ。
- その上、今日の空模様も少からず、この平安朝の下人の Sentimentalisme に影響した。
[出典:芥川龍之介『羅生門』] - 祖父の表情は、少なからず喜んでいたように見えた。
- 新しい目標が見つかったことは、私の転職理由に少なからず関係していた。
- ライバル企業の倒産に、私たちは少なからず衝撃を受けた。
このように、「少なからず」は、数や量だけでなく、抽象的な程度に対しても使うことができるのです。
「少なからず」の語源
「少なからず」は、古語の「少なし」と「ず」の二語が組み合わさってできた言葉です。
「少なし」と「ず」には、それぞれ以下のような意味があります。
- 少なし
少ない - ず
打ち消しの助動詞
このように、「少なからず」は古くから使われていたのです。
平安時代に書かれた『竹取物語』でも、すでに「少なからず」という表現が登場しています。
五穀たちて、千余日に力を尽くしたること少なからず
(五穀の食事もせずに千日あまり頑張ったのは非常に大変だった)
[出典:『竹取物語』]
「少なからず」は、漢文では「不少」と表記されます。
例:非合理のことにて文学的には面白きこと不少(すくなからず)候。
(文学には、非合理的なものでも、面白いものが少なからずある。)
[出典:正岡子規『五たび歌よみに与ふる書』]
「少なからず」の類義語
「少なからず」には以下のような類義語があります。
- 少なからぬ
少なくない - かなり
程度が高いこと - 相当(そうとう)
かなりの程度・量 - 著しく(いちじるしく)
物事が顕著である - 大分(だいぶ)
相当の程度 - 大いに(おおいに)
程度がはなはだしい - 非常に
程度がはなはだしい - すこぶる
程度がはなはだしい - ずいぶん
程度がはなはだしい - 大層(たいそう)
程度がはなはだしい - 随分(ずいぶん)
程度がはなはだしい - 余程(よほど)
かなりの程度である - たんまり
たくさんある様子
上記の類義語のなかで、「少なからず」と意味が最も近いのは「少なからぬ」です。
ただし、「少なからず」と「少なからぬ」には、使い方において次のような違いがあります、
- 少なからず
後ろに動詞や読点を入れる
例:会場には、参加者が少なからずいた。 - 少なからぬ
後ろに名詞を入れる
例:会場には、少なからぬ参加者がいた。
「少なからず」の対義語
「少なからず」には以下のような対義語があります。
- 多からず
多くない - 多少なりとも
少しだけ - わずかに
少しだけ - いくらか
少し - いくばくか
少し - 若干(じゃっかん)
少し - ほのかに
かすかに
「少なからず」は、「少なくない」ということを表します。
そのため、「多くない」「少ない」といった意味をもつ言葉が対義語になります。
「少なからず、多からず」とは、「少なくもなく、多くもない」という意味です。
つまり、「ちょうど良い」ということを指しています。
「少なからず」の英語訳
「少なからず」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- not a few
(少なくない)
※数えられる名詞に対して使う
例:Not a few people saw him that night.
(あの夜大勢の人が彼を目撃していた。) - not a little
(少なくない)
※数えられない名詞に対して使う
例:There is not a little information.
(かなり多い情報が提示されていた。) - considerably
(かなり)
例:We had a considerably hard time.
(私たちはかなり辛い日々を送った。)
「少なからず」のまとめ
以上、この記事では「少なからず」について解説しました。
読み方 | 少なからず(すくなからず) |
---|---|
意味 | 少なくない |
語源 | 少なし+ず |
類義語 | 少なからぬ かなり 相当 など |
対義語 | 多からず 多少なりとも わずかに など |
英語訳 | not a few (少なくない) not a little (少なくない) considerably (かなり) |
似ている言葉と混同しないように気をつけながら、「少なくない」を正しく使いこなしましょう。