アンビバレンスとは「ひとつの対象に相反する感情を持ったり、相反する態度をとったりすること」という意味です。
アンビバレンスはドイツ語が由来の心理学用語であるため、意味を知らない人も多いのではないでしょうか。
しかし、私たちが自然と持つ感情でもあるのです。
この記事では、日常の中の具体例も挙げてアンビバレンスの意味を解説します。
☆「アンビバレンス」をざっくり言うと……
読み方 | アンビバレンス |
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意味 | ひとつの対象に相反する感情を持ったり、相反する態度をとったりすること |
提唱者 | スイスの精神科医オイゲン・ブロイラー |
類議語 | 愛憎半ば 葛藤など |
語源 | ドイツ語の “ambivalenz” |
英語訳 | ambivalence |
このページの目次
「アンビバレンス」の意味
ひとつの対象に相反する感情を持ったり、相反する態度をとったりすること
例:彼は学園のマドンナに対してアンビバレンスを抱いた。
ただひとつの物や人に対して、憎悪と愛情、尊敬と軽蔑(けいべつ)などの矛盾する感情を同時に抱くことを表します。
また、相反する感情を交互に持つことも表す言葉です。
つまり、最初はとても愛おしく思えた相手のことが急に憎らしく感じ、また愛おしくなることもアンビバレンスだと言えます。
また、これらの感情によって、矛盾した態度を取ってしまうことも表す言葉です。
「相反する感情」として、愛と憎しみが挙げられることが非常に多いですが、他の感情でもお互いが反するものであればアンビバレンスに当てはまります。
アンビバレンスは「アンビバレンツ」と表記されることもあります。
英単語の “ambivalence” をカタカナ読みした単語であるため、このような発音の違いが生まれているのです。
「アンビバレンス」の具体例
アンビバレンスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 恋人
- 仕事
例➀:恋人
アンビバレンスの具体的な対象としてもっともよく挙げられるのは、「恋人」です。
人は、恋人に対して愛情や好意を感じると思います。
しかし、会うたびに喧嘩をしてしまったり、少しのすれ違いで憎らしく感じてしまうこともあるでしょう。
このようなときに、恋人というひとつの対象に対して「愛おしいが憎らしい」という相反する感情を持つのです。
例➁:仕事
アンビバレンスは、人以外の対象にも使うことが出来ます。
例えば、人は仕事に対してアンビバレンスを抱くことがあります。
アルバイトをすればするほど、多くの給料ややりがいを手に入れることができます。
一方で、アルバイトをすることで自分の自由な時間は少なくなり、疲労感も大きくなります。
このときに、「アルバイトをしたいけれど、したくない」という相反した感情を持つことになります。
これがアンビバレンスです。
「アンビバレンス」の間違ったイメージ
アンビバレンスの例として、以下のようなものが挙げられることがあります。
- テニスをしたいが外が雨なので外出したくない。
- SNS上では饒舌(じょうぜつ)だが、現実世界ではおとなしい
上記の2つは、アンビバレンスの例としては適切ではありません。
間違い➀:テニスをしたいが外が雨なので外出したくない。
アンビバレンスはあくまで、ひとつの対象に相反する感情を持ったり、相反する態度をとったりすることを表す言葉です。
➀は「テニス」に対して好意的な感情を持っており、「雨」には否定的な感情を持っているという例です。
これは、「ひとつの同じ対象への相反する感情」とは言えません。
間違い➁:SNS上では饒舌だが、現実世界ではおとなしい
➁は、「人間の性格が両面性を持っている」という意味の文章です。
そもそも、「対象に対する矛盾した感情」というアンビバレンスの定義とは異なっています。
「アンビバレンス」の提唱者
アンビバレンスは、スイスの精神科医であるオイゲン・ブロイラーが提唱した概念です。
[出典:サイエンス365days]
その後、フロイトが精神分析理論に組み入れて、詳しい理論を構築しました。
精神分析における「アンビバレンス」
精神分析理論の中で、「人がアンビバレンスを抱いたときにその感情が本人の行動に影響を与える過程」は以下のように説明されています。
その抑圧された方の感情が、その人の行動にさまざまな影響を与えます。
また、この状態が長く続いた場合、人は葛藤状態となり、神経症に繋がる可能性があります。
例えば、「愛情」に比べて「憎しみ」の感情は社会的に「抱くべきでない感情」と捉えられています。
そのため、愛と憎悪というアンビバレンスを抱いたときに、「憎悪」の感情は抱くべきではない感情として自然と抑圧されます。
その結果、対象に無意識に冷たい態度をとったり、きつく当たったりしてしまうようになるのです。
「アンビバレンス」の類義語
「アンビバレンス」には、以下のような類義語があります。
「アンビバレンス」と「スプリッティング」の違い
アンビバレンスもスプリッティングも「自分の中にふたつの相反する気持ちが生まれる」という点では類似しています。
しかし、スプリッティングは、そのような矛盾する気持ちをなかったことにするという心理現象なのです。
また、アンビバレンスの日本語訳として、以下のような言葉が使われます。
- 愛憎感情(あいぞうかんじょう)
- 両向性
- 相反性
- 両面価値
- 二面価値
複数の訳が存在しますが、場面によってどれも使われることがあります。
「アンビバレンス」の語源
アンビバレンスの語源は、ドイツ語の “ambivalenz” です。
ここから英単語の “ambivalence” が生まれました。
そして、 “ambivalence” をカタカナ語読みしたものが「アンビバレンス」です。
ドイツ語の “ambivalenz” も英語の “ambivalence” もカタカナ語「アンビバレンス」と同じ意味を持ちます。
「アンビバレンス」の英語訳
アンビバレンスを英語に訳すと、次のような表現になります。
- ambivalence
(日本語)
「アンビバレンス」のその他の意味
アンビバレンスは、心理学用語以外に、以下のように使われています。
- アニメ『黒子のバスケ』第3期エンディングテーマ
- すりぃによるオリジナルボーカロイド曲
上記のように、アンビバレンスという言葉は曲名によく使われるのです。
「アンビバレンス」のまとめ
以上、この記事ではアンビバレンスについて解説しました。
読み方 | アンビバレンス |
---|---|
意味 | ひとつの対象に相反する感情を持ったり、相反する態度をとったりすること |
提唱者 | スイスの精神科医オイゲン・ブロイラー |
類議語 | 愛憎半ば 葛藤など |
語源 | ドイツ語の “ambivalenz” |
英語訳 | ambivalence |
具体例に心当たりがある人も多かったのではないでしょうか。