「俗人化」と「属人化」。
どちらも普段あまり耳にすることのない言葉ゆえに、両者の違いどころか、それぞれの意味すら知らないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、『違い』だけではなく、それぞれの「ぞく人化」が持つ意味についても、しっかり解説していきます。
結論:「俗人化」はヒトの一般化、「属人化」は業務の特殊化を表す
『ヒトの一般化』とは、多くの日本人が「ごめんなさい」という謝罪の言葉を頻繁に口にしたり、地下鉄では静かにするなど、大半の人々のとる行動や思考が一定であることです。
一方、「属人化」とは、企業等における業務の特殊化を意味します。
両者は、言葉が使われる対象の違いだけでなく、<一般化>と<特殊化>と意味においても大きな違いがあります。
「俗人化」をもっと詳しく
「俗人化」とは、ヒトが一般化することです。
この言葉自体には馴染みがないかもしれません。しかし、「俗」を用いた言葉で、『世俗(的)』や『俗世界』という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
これらの言葉は皮肉的な意味で使われることが多く、『世間一般的なありさま』『人間が住んでいる世間』を意味します。つまり、『俗』という漢字を含んだ言葉は、形は変われど『世間』という意味を持っているのです。
世間とは、『利害関係を基盤としている社会=芸術や文学などの高尚な趣味や風情のない世界』のことです。
また、『世間体を気にする』『世間的な考え』という表現からわかるように、『大多数=一般的』という意味も持っています。
まとめると、世間は『文化に基づいた思想が欠落した、平均化された人間の集合』ということができます。
そして、これらの意味を備えた「俗人化」という言葉は、多くの人々が文化的側面を失い、利益や財産に傾倒していくことを意味するのです。
たとえば、『われわれ現代人の思考は「俗人化」していきている』という文章があったとします。
この文章を「俗人化」という言葉に内容を要約せずに表現すると、『多くの現代人の思考は、学問・芸術などによって生まれる文化的な思想が退化した、名誉・評判などの世俗的な思想に基づいたものになりつつある』となります。
このように、「俗人化」という言葉は、皮肉的・批判的なニュアンスを持つだけではなく、『世間の一般化』という現象そのものを表す言葉でもあるのです。
「属人化」をもっと詳しく
「属人化」とは、企業等における業務の特殊化のことです。
経験や勘が求められるような、マニュアル化されていない仕事を、ある特定の個人に依存してしまう状態をいいます。
では、どういうときに「属人化」は起こるのでしょうか。
たとえば、多くの知識や長年の経験を必要とする、専門性の高い職人業です。
手でもっただけで正確な重さがわかったり、人目みただけでモノの良し悪しを判断したりする能力は、説明だけでは対処できないので、結果的にそれができる人間に頼ってしまいます。
ほかにも、会社内で情報を共有しきれていないときにも、この現象は起こります。
たとえば、あるクライアントの情報を担当者しか把握していないと、担当者が風邪や病気などで休んでしまった場合、ほかの社員は情報がないので、そのクライアントとの仕事はストップしてしまいます。
そのため、体調が悪くても担当者がやらなければいけないという、業務における非効率な状況が生じてしまうのです。
そして、「属人化」という言葉は批判的な意味合いで使われます。
「俗人化」が一般化を批判した言葉なのに対し、「属人化」は特殊化を表す批判した言葉なのです。
しかし、ふたつは意味的には全く対照的なので、それぞれが何を批判している言葉なのか、きちんと理解しておくことが大切です。
まとめ
以上、今回は「俗人化」と「属人化」の違いについて解説しました。
- 俗人化:社会におけるヒトの一般化
- 属人化:企業における業務の特殊化
「俗人化」と「属人化」は発音こそ同じですが、その意味は対極的で全く異なる漢字です。
それゆえに、間違えて使ってしまうと文章の意味がすっかり変わってしまうので、意味をしっかりと理解して、間違えることがないようにしましょう。