今回ご紹介する言葉は、熟語の「癒着(ゆちゃく)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「癒着」をざっくり言うと……
読み方 | 癒着(ゆちゃく) |
---|---|
意味 | 本来は離れているはずの臓器や組織面がくっついてしまうこと、好ましくない関係性で組織や人が結びついていること |
類義語 | 接着、密着 |
英語訳 | adhesion/adhere(癒着/癒着する)など |
「癒着」の意味をスッキリ理解!
「癒着」の意味を詳しく
「癒着」には、2つの意味があります。
1つ目は、本来は離れているはずの臓器や組織面がくっついてしまうことです。
2つ目は、好ましくない関係性で組織や人が結びついていることです。
「癒」は、訓読みすると「癒(い)える」です。これは、病気や怪我が治ることを言います。「着」は、ここではくっつくことを意味しています。つまり、「癒着」は本来1つ目の意味を表しており、2つ目の意味は比喩的な表現であると言えます。
医療現場における「癒着」
1つ目の意味をもう少し詳しく説明します。
癒着は、体が傷ついた箇所を元に戻そうとする過程に起こります。このときに、本来くっつくべき細胞ではない細胞同士が間違ってくっついた状態で再生が起こってしまうのが癒着です。
たとえば、メスを使った手術では、切開した箇所や損傷を受けた箇所の細胞がお互いに接触したままの状態で組織の再生が行われてしまうと、癒着が起こってしまいます。
特に、腹部の手術を受けると、腸や腹壁、腸同士の癒着が起こりやすいと言われています。出産に伴う帝王切開などでも、癒着が起こる可能性があります。
医療現場では、術後の癒着を防ぐために患部に「癒着防止シート」というものが使用されるケースもあります。これは、時間が経つと体内に吸収されるようになっており、正しく治癒された頃には体からなくなっているという優れものです。
「癒着」の使い方
「癒着」は、以下のように使われます。
- 手術後の癒着による体の不調を心配していたが、1年経った今でも特に異変もなく過ごせている。
- 大物政治家が、大手企業の社長と癒着していたとスクープされた。
- このファッション誌では同じ事務所のタレントが表紙に起用される比率があまりにも高い。芸能事務所と裏で癒着しているのだろうか。
①は、1つ目の意味で癒着が使われている例です。前の項で説明した、医療現場における癒着を心配していたが特に問題なく過ごせているという文章です。
②と③は、2つ目の意味で癒着が使われています。
②の例文は、政治家と会社社長との間での好ましくない結びつきを摘発されたという文章です。政治家は後援団体から寄附を受け取ることが禁止されており、それは逆も然りです。これは、不正なお金の受け渡しなどがあった可能性が示唆される例です。
③の例文は、タレント起用の裏側に何らかの癒着があるのではないかと疑っている文章です。
「癒着」の類義語
「癒着」には以下のような類義語があります。
- 接着(せっちゃく):物と物がぴったりくっつくこと、くっつけること
- 密着(みっちゃく):ぴったりとつくこと、またその状態のこと
これらの熟語は、「くっつくこと」「くっつけること」という意味が共通しています。
「接着」は、物と物をくっつける場合に使われる言葉です。一方、「癒着」と「密着」は、物と物の他に、人間関係にも用いることができます。
「癒着」の英語訳
「癒着」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- adhesion/adhere
(癒着/癒着する) - conglutination/conglutinate
(癒着、膠着/癒着する、膠着する) - close relationship
(癒着関係、親しい間柄) - a back‐scratching alliance of A and B
(AとBのごますりの同盟関係)
1つ目と2つ目は、「本来は離れているはずの臓器や組織面がくっついてしまうこと」の英語訳です。
3つ目と4つ目は、「好ましくない関係性で組織や人が結びついていること」の英語訳です。特に4つ目の英語訳は、まさしく好ましくない関係性を表していますね。
まとめ
以上、この記事では「癒着」について解説しました。
読み方 | 癒着(ゆちゃく) |
---|---|
意味 | 本来は離れているはずの臓器や組織面がくっついてしまうこと、好ましくない関係性で組織や人が結びついていること |
類義語 | 接着、密着 |
英語訳 | adhesion/adhere(癒着/癒着する)など |
癒着と聞いて、2つ目の「好ましくない関係性で組織や人が結びついていること」という意味を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。本来は、体の再生機能によって起こる現象のことなのです。
「癒着」の意味や使い方を覚え、正しく使えるようにしましょう。