今回ご紹介する言葉は、熟語の「夜伽(よとぎ)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「夜伽」をざっくり言うと……
読み方 | 夜伽(よとぎ) |
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意味 | 一晩中そばに付き合うこと |
類義語 | 寝ずの看病、同衾、お通夜など |
英語訳 | nursed all night(一晩中看病する)など |
「夜伽」の意味をスッキリ理解!
「夜伽」の意味を詳しく
「夜伽」とは、一晩中寝ずにそばに付き添うことを意味します。付き添う対象によって意味が変わります。
- 主君が対象:主君が飽きないように臣下が付き添うこと
- 病人が対象:夜通し病人に付き添って看病すること
- 男性が対象:女性が男性と共寝すること(性的なニュアンスを含むことが多い)
- 故人が対象:亡くなった人のそばに夜通しいること(=お通夜)
ただし、「夜伽」という言葉自体、現在はあまり使いません。
もともと「伽(とぎ)」という漢字には、以下の4つの意味があります。
- 話し相手をする
- 病人の世話をする
- 寝所での相手をする
- お通夜
「夜伽」の使い方
- ご主人さまのご命令で、夜伽をするため、たくさんの逸話(いつわ)を集めた。
- 息子が高熱を出したため、夜伽をし、峠(とうげ)を越えるまで付き添った。
- 夜伽をしたから社長から重用されているだなんて、失礼な噂を流さないで。
- 今晩の夜伽が、亡くなってしまった旦那と過ごせる最後の時になる。
上記の例文のように、「夜伽をする」という形で使われることが多いです。「夜伽」単体でも使えます。
①の文は、従者が主人を飽きさせないよう、一晩中話をするためのお話を集めてきた、という意味です。この「伽(とぎ)をするための話」が、いわゆる「おとぎ話」です。
②は、高熱を出した息子を夜通し看病した、という意味の文です。「夜通し看病する」という意味で使いたい場合、「息子が高熱を出した」などの病状の説明があると伝わりやすくなります。
③は、女性が、「自分が社長に(性的に)奉仕をしているから重用されている」という噂を流されて怒っている文章です。現在で「夜伽」と言うと、この文のように「(性的な)奉仕」がイメージされることが多いです。
④も現在でもときどき使われる用法です。妻が、旦那の遺体を火葬する前の夜に、夜通し隣で過ごす様子を表した文で、この儀式は今でいうお通夜にあたります。
現在はお通夜を夜通し行う人は少なくなりましたが、かつては、葬式の前の晩は遺族が一晩中火を焚いて遺体とともに過ごしました。
このように、「夜伽」にはさまざまな意味があります。しかし現在は「(性的な)奉仕」という意味に捉えられることが多いため、類義語で言い換えるか、意味を限定できるように前後の文章を工夫すると良いです。
人が亡くなったときの「夜伽」
人が亡くなったときに行う「夜伽」にまつわる、知識や注意点などを紹介します。
どういう儀式なのか?
お葬式を行う前の晩に、遺体の隣で、夜通し線香の火を灯す儀式になります。基本は親族が行いますが、かつては故人の知り合いが訪れ、飲食を共にしながら話などをしたようです。
なぜ行うのか?
複数の説があります。ご紹介します。
- 遺体の腐臭を防ぐため
- 遺体を獣から守るため
- 故人を魔物から守るため
- 故人が極楽浄土にいけるように道しるべを示すため
今は行われているのか?
現在はあまり行われておりません。お通夜を斎場で行うことが多くなり、夜伽を行う必要性が薄れたためです。また、火の取扱上の問題で、斎場によっては夜伽を行うことが禁止されています。
行う場合も、以下のような形で簡略的に行われたりします。
- 電気式ろうそくなどを灯す
- 渦巻き型の線香(通常の線香より長く持つ)を使う
地域によっては、夜伽見舞いというものを香典とは別に包んだりします。主に西日本に残っている風習です。
渡すのはほぼ親族のみでよく、額の相場はおおよそ2000〜3000円程度です。
行うときの注意点
もし夜伽を行うのであれば、以下の点が気になるかと思います。
- 服装:普段着で問題ありません。落ち着いた色の服装が無難です。
- 線香:宗派によって本数が変わります。代表的な宗派ですと、天台宗は3本、臨済宗・浄土宗・日蓮宗は1本を立てます。浄土真宗は1本ですが横に倒します。極楽浄土へと故人を導くという考えから、なるべく火が絶えないように気をつけます。
- ろうそく:なるべく火が絶えないようにします。
「夜伽」の類義語
夜伽には以下のような類義語があります。「意味を詳しく」で解説した意味ごとに分けて紹介します。
- 寝ずの看病:寝ないで病人の面倒を見ること、またそれほど熱心に看病すること
- 夜通しの番:一晩中相手のことを見守ること
- 介抱:看病すること
- 添い寝:一緒に寝ること
- 同衾(どうきん):(男女で)同じ布団に入ること
- お通夜:葬式の前の晩に行う儀式のこと。一晩中、亡くなった人のそばで過ごす(現在は夜通しではない場合も多い)
- 弔事(ちょうじ):身近な人の死去や葬儀など、お悔やみごと全般をまとめて指す言葉
「同衾」は、現在ではあまり使われていません。
「夜伽」の英語訳
夜伽を英語に訳すと、次のような表現になります。こちらも、「意味を詳しく」で解説した意味ごとに分けて紹介します。
- sit up with 〜 all night
(〜と一晩中過ごす) - nursed all night
(一晩中看病する)
- sleep with 〜
(〜と寝る、〜とセックスする) - get laid with 〜
(〜とセックスする) - have a physical relationship
(体の関係を持つ)
- vigil
(夜通し番をすること、徹夜の番、通夜)
「女性が男性と共寝する」の英語訳として紹介したものは、いずれも遠回しな比喩表現とされています。
まとめ
以上、この記事では「夜伽」について解説しました。
読み方 | 夜伽(よとぎ) |
---|---|
意味 | 一晩中そばに付き合うこと |
類義語 | 寝ずの看病、同衾、お通夜など |
英語訳 | nursed all night(一晩中看病する)など |
「誰となぜ一晩中付き添っているのか?」に注目すると、意味を理解しやすいです。