「蘇る」と「甦る」は「使い分け」の点が異なり、「蘇る」は「死者が生き返る」の意味で使うことが多く、「甦る」は「復興」の意味で使うことが多いです。
文字で書くときに、どちらを使えばよいか迷う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「蘇る」と「甦る」の違いについて解説します。
このページの目次
「蘇る」と「甦る」の違い
「蘇る」と「甦る」の意味は同じですが、以下のような使い分けがあります。
「蘇る」の意味
「蘇る」には2つの意味があります。
- 死んだ人が生き返ること
- 一度衰えたものがまた盛んになること
「蘇る」は、①「死んだ人が生き返ること」の意味で使うことが多いです。
死んだ人、あるいは死にかけている人が再び息を吹き返すことを言います。
「蘇る」のもう1つの意味は、「衰えたものがまた盛んになる」です。
一度勢力をなくしたものが再び勢いを取り戻すことを指します。
「蘇る」の使い方
「蘇る」は以下の例文のように使います。
- 死者が墓から蘇る。
- 一度死んだ人が蘇ることはない。
- 地域に活力が蘇った。
①は、「死んだ人が生き返ること」の意味で使われています。
②は、「一度衰えたものがまた盛んになること」の意味で使われています。
「甦る」の意味
「甦る」の意味は以下の2つです。
- 死んだ人が生き返ること
- 一度衰えたものがまた盛んになること
「甦る」の意味は「蘇る」と同じであることがわかります。
ただ、「蘇る」は主に①「死んだ人が生き返ること」の意味で使い、「甦る」は主に②「一度衰えたものがまた盛んになること」の意味で使います。
「甦る」の使い方
「甦る」は以下の例文のように使います。
- 彼女は死者を甦らせることができる。
- さびれたシャッター街を甦らせたい。
- 目の光が甦った。
①は、「死んだ人が生き返ること」の意味で使われています。
②は、「一度衰えたものがまた盛んになること」の意味で使われています。
「蘇る」と「甦る」の使い分け
「蘇る」と「甦る」の意味は同じですが、若干の使い分けが存在します。
「蘇る」は「死んだ人が生き返ること」の意味で使われることが多く、「甦る」は「一度衰えたものがまた盛んになること」の意味で使われることが多いのです。
これは、「蘇生」という言葉から分かるように「蘇る」には生物が死にかけた状態から戻ってくるという印象が強いためです。
一方で「甦る」には、「更」と「生」で構成されていることから分かるように、生まれ変わるという印象が強いです。
ご紹介したような使い分けがあるといっても、これは厳格なものではないため、「蘇る」を「甦る」と書いても問題はありません。
また、「甦る」は「蘇る」よりも後にできた漢字です。
メディアではひらがなで表記する
「蘇る」と「甦る」は、どちらも常用外の漢字です。
意味も同じであるため、テレビや新聞などのメディアではひらがなで表記することになっています。
「蘇る」と「甦る」の語源
「蘇る」の語源は、「黄泉(よみ)帰る」にあります。
「黄泉」とは神話にある死者の国のことで、「黄泉(よみ)帰る」は死者の国から帰ってくる、つまり生き返ることを指していました。
その後、「逆らう」などの意味を持つ「蘇」の字が当てられるようになりました。
時が経つと、「蘇」の代用として「甦」が使われるようになりました。
「蘇る」と「甦る」の漢字の成り立ち
「蘇」と「甦」漢字の成り立ちをご紹介します。
「蘇」の成り立ち
「蘇」の音読みは「ソ」「ス」です。
「窒息した状態から生き返る」という意味があります。
「蘇」は、植物を表す「艸(くさかんむり)」と「禾(いね・のぎ)」と動物である「魚」を組み合わせた漢字です。
植物と動物という関係のないものが1つの漢字になっているため、「離れている、すきまがある植物」を表していました。
ここから意味から転じて、「喉にすきまが空いて窒息していた息が通ること」を表すようになりました。
「甦」の成り立ち
「甦」の音読みは「ソ」です。
「生き返る、息が通る」という意味があります。
「甦」は、「更」と「生」から成り立っています。
「更」には、「硬」という漢字から分かるように「固める、引き締める」という意味があります。
また、「更新」のように「変える、改める」という意味を持ちます。
この「更」に「生」がついて、「息が詰まって死にかけて緩んだ体が生き返ること」を指すようになりました。
「蘇る」と「甦る」の類義語
「蘇る」と「甦る」には以下のような類義語があります。
- 復活
いったん機能しなくなったものが、活動力を盛り返すこと - 再生
衰えたものが生気を取りもどすこと - 蘇生
生き返ること - 生き返る
一度死んだ者や活動力を失ったものが活気を取り戻すこと
「蘇る」と「甦る」の違いのまとめ
以上、この記事では、「蘇る」と「甦る」の違いについて解説しました。
- 蘇る
「死んだ人が生き返る」の意味で使うことが多い - 甦る
「一度衰えたものがまた盛んになる」の意味で使うことが多い
使い分けにも厳格なルールがあるわけではないため、特にこだわりが無ければ「よみがえる」とひらがなで表記しても良いでしょう。