「資本主義」と「社会主義」と「共産主義」の違いとは?わかりやすく

違いのギモン

みなさんは「資本主義」「社会主義」「共産主義」の違いについてご存知でしょうか。

「日本は資本主義」、「中国は社会主義」という漠然とした認識はあるかもしれません。

今回は、そんな漠然とした認識を明確な知識にするために、「資本主義」「社会主義」「共産主義」の違いについて詳しく解説します。

結論:経済活動に対する考え方の違い

「資本主義」は経済活動を完全に自由にするべきだと考えています。

それに対し、「社会主義」は経済活動を社会や政府が完全に管理するべきだと考えており、「共産主義」は「社会主義」よりも厳格に経済活動を管理するべきだと考えています。

そもそも「主義」とは

「資本主義」「社会主義」「共産主義」の説明に入る前にまず、「主義」という日本語の意味について解説します。

「主義」には、ある程度の期間、持ち続けている考えや方針、態度という意味があります。

また、「○○主義」といったときには「○○を中心に据えて物事を考えること」という意味になります。

つまり、例えば「伝統主義」といったときには「伝統を中心に据えて物事を考える態度」という意味になるということです。

「資本主義」についてもっと詳しく


「資本主義」とは「人々が自由に経済活動できるようにすべきだ」という考えを指します。

先ほど説明したように、「○○主義」とは「○○を中心に据えて物事を考えること」という意味でした。

つまり、「資本主義」とは「資本を中心に据えて物事を考えること」という意味になります。

 

では、「資本」とはどういう意味でしょうか。

「資本」とは簡単にいうと「より多くのお金を得るために使われるお金」という意味です。

つまり、「資本主義」とは「より多くのお金を得るために使われるお金を、中心に据えて物事を考える」という意味になります。

これを簡潔に説明すると、「資本主義」とは「より多くのお金を得るために活発的にお金を使おう」という考え方になります。

 

そして、その「お金を得る」という行為は「完全に個人の自由であるべきである」と主張しているのが「資本主義」という考え方です。

現在の日本は資本主義社会です。

よって、お金を稼ごうとしても、稼いだお金で何をしようとも、法律に反しない限り、妨害されることはありません。

 
しかし、この「資本主義」にはいくつか弱点があります。

それは、「人々の経済活動が基本的には自由である」という点です。

「自由に経済活動できる」ということは、字面だけ見ると素晴らしいことだと思うかもしれません。

しかし、経済活動が完全に自由であり、政府や国家が介入しないという状況は「弱肉強食」のようなものです。

 

「弱肉強食」とは、弱い存在は強い存在の犠牲になるものだ、というものです。

経済活動が完全に自由であるため、政府や国家が介入しないという資本主義社会では、強い存在は強く、弱い存在は弱くあり続け、弱者が強者に利用される状況が変化することはありません。

 

そして、弱者が強者に利用されたところで、それは「自己責任」として資本主義社会では処理されてしまいます。

なぜなら、資本主義社会では、「自由な」経済活動が認められており、「自由」な環境で成功しようが、失敗しようが、個人が勝手にやったことであるため個人の問題であり、政府や国家の問題ではないと捉えられるからです。

 

しかし、実際に個人に降りかかる不利益が完全に「自己責任」であることがどれだけあるでしょうか。

例えば、貧乏な家庭に生まれた子どもが学校に行けず、結果、低所得者になり、裕福な家庭に生まれた人間に搾取(さくしゅ)されるという構造があったとします。

この構造のせいで、搾取される側の人が不幸になったときに、「経済活動は自由だから」という理由で、この人の不幸を「自己責任」として捉えることは妥当と言えるでしょうか。

 

つまり、「自由な経済活動」という文言は、一見、素晴らしいことのように感じられますが、強い存在は強く、弱い存在は弱くあり続け、強者が弱者を利用する構図が維持されることに一役買ってしまうということです。

また、自由な経済活動が認められた社会では、企業間や個人間の競争が激化していきます。競争が激化し、より多くの利益を上げようとすると、環境・資源に対しての配慮、労働環境への配慮がどうしても軽視されやすくなってしまいます。

「資本主義」は数多くの問題点をかかえているということです。

「社会主義」についてもっと詳しく


「社会主義」とは「社会や国が人々の経済活動に対して介入して不条理が起きないように調整し、公正で平等な社会を目指す」という考え方です。

「社会主義」は先ほど説明した「資本主義」の反省から生まれた考え方です。

資本主義社会が発展していき、自由な経済活動が認められていく中で、貧富の差の拡大や環境汚染、労働環境の悪化といった不条理が起こるようになってきました。

そういった不条理を防ぐためには、自由な経済活動を推進するのではなく、社会全体や国が介入していく必要があるのではないか、という考え方が歴史の流れの中で生まれました。

 

「○○主義」は「○○を中心に据えて物事を考えること」という意味になることはすでに説明しました。

これを「社会主義」にあてはめると「社会主義」は「社会を中心に据えて物事を考える」という意味になります。

「社会が主体的になって経済活動に対して介入していくべき」、つまり「社会を中心に据えて物事を考える」ため、このような考え方は「社会主義」と呼ばれます。

 

「社会主義」の国家では個人は自由な経済活動はできず、その全てが社会や国に管理されることとなります。

管理していくことで、「資本主義」の国家では成し得なかった、公正で平等な社会を構築していくことを目標としています。

「共産主義」についてもっと詳しく


「共産主義」は「社会主義」をさらに高度にしたものです。

「共産主義」は「社会主義」を高度にしたものなので、当然、経済活動の管理は行いますが、「共産主義」はそれに加え、利益や消費、生活、生産手段に至るまで全てのものを平等にします。

全てのものが平等になれば、人々の間には争いはなくなるので、最後には政府も必要なくなるという考え方をし、こういった考えのことを「共産主義」と呼びます。

 

また、「共産」という言葉は「公共が産業を行う」という文言から作られたものです。

「公共」には「社会一般」や「国家」という意味があるため、「公共が産業を行う」という文言は「社会が産業を行い、個人に委ねる(ゆだねる)べきではない」ということを表すものであることがわかります。

「公共が産業を行う」ことを中心に据えた考え方であるため、こういった思想は「共産主義」と呼ばれます。

まとめ

以上、この記事では「資本主義」「社会主義」「共産主義」の違いについて解説しました。

  • 資本主義:経済活動は個人の自由にするべきという考え方
  • 社会主義:経済活動は国家が管理するべきという考え方
  • 共産主義:社会主義をさらに高度にし、全てを平等にすべきという考え方

「資本主義」「社会主義」「共産主義」を理解しておくことは、近代史を理解する上で大きな武器になります。

便宜上、この記事では「資本主義」「社会主義」「共産主義」という大まかな区分けで解説しましたが、それぞれの主義の中にさらに細かい区分けが存在しています。

また、これらの考え方をハイブリッドにしたものも存在するため、一概に「日本は資本主義社会であるから、○○だ」「中国は社会主義国家と名乗っているから○○であるはずだ」と決めつけてしまうことは大変危険です。

しっかりと違いを知り、近代史への理解を深めていきましょう。