「睡蓮(すいれん)」や「蓮(はす)」などは池などに咲いていて、キレイな植物ですよね。しかし、この2つは混同されることが多いです。違いを知っている人からすれば、睡蓮だと思って見に行ったら蓮だったり、その逆だったり……。混乱してしまいますよね。
そこで、今回は「睡蓮」と「蓮」の違いについて解説していきたいと思います。
序論:睡蓮と蓮の共通点
睡蓮と蓮には共通点も多く、だからこそ混同されてしまう場合も多くあります。まずは違いを解説する前に、2つの植物の共通点について見ていきましょう。
まず、睡蓮と蓮はどちらも抽水植物(ちゅうすいしょくぶつ)です。抽水植物とは、水の底の土や泥などに根をはって水面・水上に葉っぱや花を展開する植物のことです。
そして、花は日中に咲いて、夜には閉じてしまうという特徴もあります。また、1つの花の寿命は3日です。しかし、多くの花を持っているので、私たちにはずっと咲いているようにも見えます。
では、次に睡蓮と蓮の6つの違いについて解説していきましょう。
☆「睡蓮」「蓮」の違いをざっくり言うと……
睡蓮 | 蓮 | |
---|---|---|
由来 | 眠る蓮 | 果託が蜂の巣に似てることから |
分類 | スイレン目スイレン科 | ヤマモガシ目ハス科 |
葉っぱ | ・切れ目がある ・光沢がある ・水を弾かない ・緑色、赤い斑点の緑色、赤色 | ・切れ目がない ・光沢がない ・水を弾く ・緑色のみ |
花 | 水面に咲く | 水面より上のほうで咲く |
根っこ | ワサビ形、球根形 | レンコン |
宗教との関わり | 古代エジプトで神聖視 | 古代インドで神聖視 |
【1】由来の違い
睡蓮の由来はいたってシンプルです。睡蓮は日中には花を開いて、夜には閉じるということを繰り返すため、これは日中は起きていて夜は寝ているのだ、ととらえられていました。そこから、睡眠する蓮なので睡蓮と呼ばれるようになったのです。
一方、蓮は花が閉じた後、花託(かたく)というものをつけるのですが、これは蜂の巣に似ています。ちなみに、花託は花びらが散った後の花の残りの部分で、中には果実があります。そこから、ハチノス→ハチス→ハスと変化していって、蓮と呼ばれるようになりました。
【2】分類上の違い
睡蓮と蓮は、昔は同じような種類の植物だと考えられていましたが、現在では学問の発達により、ぜんぜん別の種類の植物だということがわかっています。
睡蓮はスイレン目スイレン科の植物ですが、蓮はヤマモガシ目ハス科の植物なのです。
【3】葉っぱの違い
睡蓮と蓮の葉っぱは似ているようでいて結構違います。
まず、睡蓮の葉っぱは円形ですが、切れ込みが入っています。また、光沢がありますが水を弾くことはできません。
一方、蓮の葉っぱも円形ですが、切れ込みはなく、光沢はないですが水を弾くことができます。そのため、蓮の葉っぱに水をかけると水玉になり、横に流れ落ちていきます。そして、この現象はロータス(蓮)効果として知られています。
また、蓮の葉っぱは緑色のものしかありませんが、睡蓮の葉っぱの中には赤い斑点がついているものや、赤いものがあります。
そして、睡蓮の葉っぱはすべて水面に浮いていますが、蓮の葉っぱには水面に浮いている葉っぱと、空中に浮いている葉っぱが存在して、浮いているほうの葉っぱのことを立ち葉といいます。
【4】花の違い
睡蓮と蓮の花にも違いがあります。
睡蓮の花は水面に咲きますが、蓮の花は水面より上のほうで咲くのです。ただ、これには例外もあって、熱帯種の睡蓮は水面より上で花を咲かせます。
また、花の寿命が終わると、睡蓮の花はしぼんで水中に落ちていってしまいますが、蓮の花は水面上に散り、果托というものを残します。
【5】根っこの違い
まず、蓮の根っこはレンコンです。ちなみに、レンコンには穴が開いていますが、あれは通気孔です。
次に、睡蓮の根っこは温帯種と熱帯種とで違います。温帯種の根っこはワサビのように細長い形をしていて、塊根(※1)です。一方、熱帯種の根っこは球根形をしていて、これも塊根です。
- 塊根(※1):でんぷんなどの養分をためこんでかたまり状になっている根っこ
【6】宗教との関わりの違い
まず、睡蓮は古代エジプトと関わりがあります。睡蓮は古代エジプトでは神の象徴とされていて、死と来世を連想させるため、神聖な花として扱われていました。
そのため、花から香料を抽出したり、葬儀の花として用いたり、神殿のお供え物として用いたり、女性の髪飾りとして使われたりしてありがたがられていました。
一方、蓮は古代インドと関わりがあります。古代インドはヒンドゥー教が生まれた地ですが、ヒンドゥー教の神話の中に蓮が登場するのです。
ヒンドゥー教の神話では、ヴィシュヌ神のヘソから蓮の花が生えてきて、そこから創造神ブラフマーが生まれたとされています。つまり、蓮は神様の誕生を媒介すると考えられていたのです。
そして、蓮は仏教でも神様が座る場所として登場してきます。なぜなら、蓮は泥など本当に汚いところに育ち、可憐で清らかな花を咲かせますが、これが仏教の教えと似ているからです。そして、仏教では蓮は極楽浄土に咲く花としても大切にされています。
まとめ
以上、この記事では、「睡蓮」と「蓮」の6つの違いについて解説しました。
睡蓮 | 蓮 | |
---|---|---|
由来 | 眠る蓮 | 果託が蜂の巣に似てることから |
分類 | スイレン目スイレン科 | ヤマモガシ目ハス科 |
葉っぱ | ・切れ目がある ・光沢がある ・水を弾かない ・緑色、赤い斑点の緑色、赤色 | ・切れ目がない ・光沢がない ・水を弾く ・緑色のみ |
花 | 水面に咲く | 水面より上のほうで咲く |
根っこ | ワサビ形、球根形 | レンコン |
宗教との関わり | 古代エジプトで神聖視 | 古代インドで神聖視 |
睡蓮と蓮には違う点がたくさんあったんですね。今度からは間違えないようにしたいものです。