「ヴァイオリン」と「ヴィオラ」と「チェロ」と「コントラバス」の違い

違いのギモン

「ヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」「コントラバス」の4つの楽器は、弓で弦を擦って音を出す「擦弦楽器(さつげんがっき)」です。形は似ていますが、実は違いを知らない人は多いのではないでしょうか。

この記事では歴史に触れながら各楽器の特徴を解説しています。

結論:ヴィオラとチェロはヴァイオリンの仲間で、コントラバスは違う。

「ヴィオラ」と「チェロ」は色々な音域を出すために「ヴァイオリン」から発展した楽器です。

それに対し、「コントラバス」はヴィオラ・ダ・ガンバ属の仲間である、「ヴィオローネ」と言う楽器から発展しました。

そのため、「ヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」は弦の数が4本であることに対して、コントラバスは5本のものもあります。

「ヴァイオリン」をもっと詳しく

ヴァイオリンは非常に高い音も出るため、弦楽アンサンブル(※1)やオーケストラでは主旋律を担当することが多く、ソリスト(※2)としても活躍する楽器です。

長さは約60cm・重さは約0.5kgと小柄で、顎(あご)に挟んで演奏します

ソロの代表的な曲は、J.S.バッハ作曲の「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001〜6」や、ドラマなどでも使われることが多い、パガニーニ作曲の「カプリース 作品1」などがあります。

また、先祖とされている楽器はいくつか存在します。

代表的なのは、アラビアの「ラバーブ」、中世オリエントから15世紀にスペインとフランスで作られた「ケベック」、中世末にヨーロッパで広まった「フィドル」、また東洋の「二胡」や「馬頭琴」です。

現在も民族音楽を演奏する際は、ヴァイオリンのことをフィドルと呼びます。

 

ヴァイオリンは徐々に完成したピアノや管楽器と違い、1550年頃に突如完全な形で誕生しました。初期のヴァイオリンは、北イタリアのクレモナで活躍した「アンドレア・アマティ」と、サロという町で「ガスパロ・ディベルトロッティ」が作りました。

また、アマティのヴァイオリンは現存しています。

  • 弦楽アンサンブル(※1):弦楽器による合奏
  • ソリスト(※2):独奏者

「ヴィオラ」をもっと詳しく

ヴィオラは長さ約 70cm・重さ約 0.6kg とヴァイオリンより少し大きく、4本の弦をヴァイオリンより5度低い、C(ド)ーG(ソ)ーd(レ)ーa(ラ)の5度間隔で調弦するため、少し低い音が出ます

また演奏法が同じなため、ほとんどのヴァイオリニストがヴィオラを兼任しています。弦アンサンブルやオーケストラでは中音域を担当することが多く、4つの楽器の中で人の声に最も近い音域と言われています。

「ヴィオラ」という言葉は元々「色々な種類の弦楽器」という意味で、ヴァイオリンを「小さなヴィオラ」、ヴィオラを「大きなヴィオラ」と呼んでいました。またヴィオラはヴァイオリンと先祖も同じで、同時期のバロック時代に誕生しました。

「チェロ」をもっと詳しく

宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』でも有名なチェロは、長さがヴァイオリンの2倍の約120cm、重さが約3.5kgと大きいため、低くまろやかな音を出すことができます。

チェロの正式名称は「ヴァイオリンチェロ」と言い、主旋律や伴奏など様々な役割を担います。ヴァイオリン、ヴィオラと違って椅子に座って両足で挟み、楽器を支えるためにエンドピンという棒を床に刺して演奏します。しかし弓は大きさとは逆に短くなります。

正式名称からもわかる通りヴァイオリンの先祖の一つである「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」が発展したもので、ヴィオラ・ダ・ブラッチョの低音楽器などと呼ばれていました。そして17世紀にイタリアで作られた、C(ド)-G(ソ)-D(レ)-A(ラ)の4弦のチェロが一般的になりました。

チェロの仲間、「ヴィオロン」

18世紀初頭までは様々な形態のチェロが存在し、現在でも特に有名なのは「ヴィオロンチェロ・ピッコロ(小型チェロ)」です。チェロよりやや小さく、高音域を拡大するために5本の弦を用いていたものありました。

ヴィオロンチェロ・ピッコロを使用した有名な曲はJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第6番」「教会カンタータ」の中に存在しており、現在これらの曲を演奏する際にヴィオロンチェロ・ピッコロを復元して使用する演奏家もいます。

「コントラバス」をもっと詳しく

コントラバスは縦が約180cm、重さが約10kgと非常に大きいため、多くの場合は立って全身を使って演奏します。

また「コントラ」は音楽用語で「特別低い」、を表すことからもわかる通り音は低くて渋いため、全体を支えるのが役目です。

ジャズや吹奏楽など様々なジャンルで活躍し、「ウッドベース」「弦バス」「アップライトベース」などコントラバス以外にも様々な呼び名が付いています。

 

そして最大の特徴は、先祖が他の3つの弦楽器とは違います。

コントラバスは18世紀前半まで愛好されていた「ヴィオラ・ダ・ガンバ属」の仲間で、低音域担当の楽器である「ヴィオローネ」から発展しました。ヴィオラ・ダ・ガンバ属はヴァイオリン属とは違って音の高さを調節するフレットが付いており、弓の持ち方も違います。

現代のコントラバスはその影響からフレットはなくなったものの、4本または5本の弦を4度間隔で調弦します。弓に関しては形や持ち方が異なる、ヴァイオリン属から来た「フランス式弓」と、ヴィオラ・ダ・ガンバ属から来た「ドイツ式弓」の2種類が残っています。

まとめ

以上、この記事では、「ヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」「コントラバス」の違いについて解説しました。

  • ヴァイオリン:主旋律を担当
  • ヴィオラ:ヴァイオリンより少し大きく、先祖が同じ
  • チェロ:ヴァイオリンの約2倍の大きさで、先祖が同じ
  • コントラバス:一番大きく、他の楽器とは先祖が異なる

大きさと音の高さは密接に関係しており、4つの弦楽器には音域によって、役割や歴史の違いがあります。

大さと難易度は比例しないので、演奏する楽器を選ぶ際はこのような違いを考慮しながら、慎重に選ぶ必要があります。またコンサートを聴きに行く際は、音の高さに注目して聴いてみると面白いですね。