「団扇」と「扇子」の違いとは?由来や歴史から使い分けまで解説

違いのギモン

「団扇(うちわ)」や「扇子(せんす)」は、手動で風を起こすためのアイテムですね。どちらも、暑い日に役に立ちます。

ところで、「団扇」と「扇子」の違いは形状だけだと思っていませんか。実は、両者には他にも異なる点があるのです。

そこで、この記事では、「団扇」と「扇子」の相違点について詳しく解説します。

結論:由来・形状・風を起こす仕組みが異なる

「団扇」と「扇子」の違いは以下の通りです。

  • 団扇飛鳥時代に中国から伝来。柄がある。大きな1つの風のかたまりを作り出す。
  • 扇子平安時代に日本で発祥。折りたためる。小さな無数の風の渦を作り出す。

「団扇」をもっと詳しく

「団扇」の由来

「団扇」の起源は古代エジプトといわれています。

日本には、飛鳥時代に中国から「団扇」が伝わりました。当時は「団扇」ではなく、「翳(さしば)」と呼ばれていました。

現在、「団扇」は風を起こして涼しくなるために使われていますね。しかし、「団扇」が伝来した頃は、他にも以下のような用途で使われていたのです。

  • 身分の高い人が、自らの威厳を出すために顔を隠すための道具
  • 悪い気をはらうための道具
  • 虫を追い払うための道具

3つ目の用途に注目してみましょう。これが「翳」が「団扇」という名称に変わった理由と関係しているのです。

「虫を追い払う翳」という言葉が、「虫を打つ羽」という言葉に変わり、省略されて「打ち羽(うちわ)」という呼び名になりました。そして、「打ち羽」が派生して「団扇」となったのです。

「団扇」の形状

「団扇」は竹や紙、プラスチックなどから作られます。また、「団扇」大きな特徴は、柄があることです。

「団扇」が風を起こす仕組み

「団扇」はどのような原理で風を起こしているのでしょうか。

まず、柄をもって団扇を上下させます。すると、団扇がしなって空気が圧縮されます。

圧縮された空気は1つのかたまりとなって、前に押し出されます。この押し出された空気が皮膚にあたると、涼しいと感じるのです。

柄の先から団扇の先までの距離が長ければ長いほど、大きな風を起こすことができます。

「扇子」をもっと詳しく

「扇子」の由来

「扇子」は、平安時代に日本でうまれた道具です。

「団扇」は、飛鳥時代に中国から日本に伝わったものであると解説しました。実は「扇子」は、「団扇」を改良したものなのです。

「扇子」は当初、「檜扇(ひおうぎ)」と呼ばれていました。また当時は、風を起こすという用途以外にも、下記のような様々な使い道をもっていました。

  • 花を乗せて、上流階級の人どうしが交流するための道具
  • 神事や儀式の道具
  • 茶道や舞踊での小道具

なお、扇子は、17世紀にパリの上流階級の女性のあいだで流行したという歴史があります。つまり、「団扇」は外国から日本に伝わったものであるのに対して、「扇子」は日本から外国に伝わっていったものなのです。

「扇子」の形状

「扇子」は和紙や布、竹、アルミなどからできています。

「団扇」は折りたためないため、持ち歩くときに不便でした。その難点を改良して誕生したのが「扇子」です。

「扇子」は小さく折りたためるという特徴があるため、携帯しやすいのです。

「扇子」が風を起こす仕組み

それでは「扇子」は、どのように風を起こすのでしょうか。

扇子を横から見ると、仰ぐ部分がギザギザとした波型になっています。扇子を上下させると、ひとつひとつの波型の凹凸が、小さな空気の渦をたくさん作り出します。

無数の空気の渦が皮膚にあたると、私たちは涼しいと感じるのです。

「団扇」と「扇子」の使い分け


ここまで、「団扇」と「扇子」の違いを解説しました。それぞれの特徴を踏まえて、両者の使い分けについて考えてみましょう。

風量での使い分け

「団扇」は、仰ぐ部分がしなって、大きな1つの空気の塊が皮膚にあたります。一方「扇子」は、小さな無数の空気の渦が皮膚にあたります。

このことから、風の勢いは「扇子」よりも「団扇」の方が強いということがわかります。ですから、強い風量が欲しい場合には、「団扇」を使うのが効果的です。

なお、強い風を起こすことのできる「団扇」は、炭の火を起こしたり、料理を冷ましたり、濡れたものを乾かしたりするときにも役に立ちます。

手荷物の量での使い分け

「団扇」は折りたたみができません。

しかし、「扇子」は折りたたむことができます。このため、小さなバッグや衣服のポケットに入れて携帯することができるのです。

したがって、荷物の中のスペースに余裕がないときや、手ぶらのときに出かける場合には、「団扇」よりも「扇子」の方が持ち運びしやすいといえます。

その場の静かさでの使い分け

「団扇」は、風量が強いぶん、仰ぐときに大きな音がでてしまいます。一方「扇子」は、仰いでも音が小さいという特徴があります。

ですから、大きな音を出すと周囲の迷惑になってしまうような場所では、音があまり出ない「扇子」を使いましょう。

広告印刷の有無での使い分け

夏になると、街頭で、広告が印刷された「団扇」が配られることがありますね。「団扇」の表面はおおむね平らなので、広告が印刷しやすいのです。

しかし、「扇子」は折りたためるような構造になっているため、表面が蛇腹(じゃばら)式になっています。ですから、広告としての写真や文字を印刷するのは困難です。

このため、ノベルティには「扇子」よりも「団扇」の方が適しているのです。

風習での使い分け

浴衣を着るときには、「団扇」を合わせて持つのが正しいとされています。

一方、振袖を着るときには、末広(すえひろ)という小ぶりな「扇子」を合わせます。なお、末広は仰ぐための扇子ではなく、飾りとしての扇子です。

また、「扇子」は、落語・狂言・能・日本舞踊といった伝統的な芸能の小道具としても使われます。

このように、昔からの風習によって「団扇」と「扇子」を使い分けなければならないこともあるのです。

補足:「団扇」と「扇子」を使うと逆効果になってしまう場合


「団扇」や「扇子」は夏に活躍する道具ですね。

しかし、気温が体温よりも高い日には、「団扇」や「扇子」を使うことでさらに暑くなってしまう場合があります。なぜなら、わざわざ汗で温度を下げた周囲の空気を、「団扇」や「扇子」が吹き飛ばして、体温よりも熱い空気を再び皮膚にあててしまうことになるからです。

具体的には、気温が35°C 以上になると「団扇」や「扇子」の使用が逆効果になるという目安がありますから、気をつけましょう。

まとめ

以上、この記事では、「団扇」と「扇子」の違いについて解説しました。あらためて、両者の相違点をおさらいしましょう。

  • 団扇:飛鳥時代に中国から伝来。柄がある。大きな1つの風のかたまりを作り出す。
  • 扇子:平安時代に日本で発祥。折りたためる。小さな無数の風の渦を作り出す。
好みの風量やTPOを考えて、「団扇」と「扇子」を上手に使い分け、快適な涼しさを手に入れましょう。