今回ご紹介する言葉は、熟語の「黄昏」です。
言葉の意味・語源・関連語・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「黄昏」をざっくり言うと……
読み方 | 黄昏(たそがれ) |
---|---|
意味 | 夕方の薄暗くなった頃・ものごとが終わりに近づき、衰えの見える頃 |
語源 | 「だれですか」という意味の「誰そ彼」 |
関連語 | 黄昏時 黄昏色 黄昏泣き 黄昏る |
類義語 | 逢魔が時、思秋期、かわたれ時など |
対義語 | かわたれ時、明け方、暁など |
英語訳 | twilight(夕暮れ)、dusk(夕暮れ) |
このページの目次
「黄昏」の意味をスッキリ理解!
「黄昏」の意味を詳しく
「黄昏(たそがれ)」には以下の2つの意味があります。
- 夕方の薄暗くなった頃
- ものごとが終わりに近づき、衰えの見える頃
それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
意味①:夕方の薄暗くなった頃
「黄昏」の主な意味は「夕方の薄暗くなった頃」です。
一日のうち、日没の直後で、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯をこう表現します。
意味②:ものごとが終わりに近づき、衰えの見える頃
「夕方の薄暗くなった頃」という意味から派生して「ものごとが終わりに近づき、盛りの時期が過ぎて衰えの見える頃」という比喩的な意味が生まれました。
「日が沈む頃」は、「一日の終わりが近づいていること」を表しているので、ここから一日だけでなく「ものごとの終わりが近づいている頃」という意味になりました。
また、ここからさらに年齢的に老いた頃を「人生の黄昏時」などと表現することがあります。
「ボーッとして物思いにふける」ことを「黄昏(たそがれ)る」と表現することがあります。
しかし、これは間違った使い方なので注意が必要です。
「黄昏」という漢字は、実は当て字です。
本来は「こうこん」という、まったく別の読み方をします。
ちなみに、「たそだれ」は「誰彼」と表記されることもあります。
漢語の「黄昏(こうこん)」は日が落ちた後、まだ完全には暗くなってない時間のことを表します。
この時刻は「初昏(しょこん)」と表現されることもあります。
「黄昏」の語源
「黄昏」とは、「黄昏時」の略で、江戸時代になるまでは「たそかれ」と言われていました。
もともとの漢字は「誰そ彼」で、「あなたは誰ですか」という意味です。
日が落ち始めてあたりが暗くなった頃は、人の顔が見えづらくなり「あなたは誰ですか」と確認する時間帯であるため「誰そ彼時」と言われるようになりました。
本来、「黄昏」は人の顔の区別がつかなくなる暗い時間帯を意味します。
しかし、現在では夕方の時間帯のみを意味します。
このように、明け方のことを表さなくなってしまった原因のひとつに、『源氏物語』の中に出てくる以下の俳句があります。
寄りてこそ それかとも見め 黄昏に ほのぼの見つる 花の夕顔
(近くまで寄って見なければ誰かわかりません。黄昏の時間にぼんやりと花の夕顔を見たのだから。)
「夕顔」は夕方から夜の時間に咲くので、ここで言う「黄昏」は「夕暮れ時の時間」で間違いありません。
江戸時代には、薄暗い時間帯になるとお互いに「誰ですか」とお互いの身元を聞き合う風習がありました。
お互いに誰であるかを確認することでよそ者や不審者を排除する目的があったと言われています。
「黄昏」は農夫が田んぼから帰る時間帯である「田退(たそかれ)」が由来という説もあります。
「黄昏」の関連語
「黄昏」の関連語には、以下の3つがあります。
- 黄昏時
- 黄昏色
- 黄昏泣き
- 黄昏る(たそがれる)
それぞれの関連語について詳しく見ていきましょう。
「黄昏時」
「黄昏時」は「夕方の薄暗くなったころ」という意味です。
「黄昏」と単体で使った時とほぼ同じ意味です。
「黄昏色」の意味
「黄昏色」の意味は、「日没前の夕焼けのオレンジ色と藍色の夜空が組み合わさった情景・その色合い」のことです。
この風景が見られる時間帯は、撮影用語で「マジックアワー」とも呼ばれます。もっとも美しい時間帯と言われています。
「黄昏泣き」の意味
「黄昏泣き」とは、「乳児が夕方から夜にかけて激しく泣くこと・そのような乳児の傾向のこと」です。
「黄昏時」のあたりから乳児が泣き出す様子を表すので、このような名前になりました。
「黄昏る」の意味
「黄昏る」とは、「日が暮れて薄暗くなる」「盛りを過ぎて衰える」という意味です。
「物思いにふける」「ぼーっとする」という意味で使われることが多いですが、これは誤用です。
正しくは「空が黄昏る」などの文章で「空が薄暗くなる」という意味で使われます。
「黄昏」の使い方
- 黄昏の海辺の景色は非常にきれいだ。
- 黄昏時に彼と手をつないで歩く。
- 今はもう人生の黄昏時だ。
➊の「黄昏」と➋の「黄昏時」は同じ意味です。
また、「黄昏」の語源になった「誰そ彼」は、和歌などによく使われます。以下の歌は万葉集に収められている作者不明のものです。
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ
意味は以下のような内容です。
誰だあれはと、私のことを問わないでください。九月の雨に濡れつつ、あなたを待っている私なのです。
「黄昏」の類義語
「黄昏」には意味別に以下のような類義語があります。
- 逢魔が時(おうまがとき):夕方の薄暗くなった時間
- 夕暮れ(ゆうぐれ):日が暮れる頃
- 日暮れ(ひぐれ):日が暮れる頃
- 薄明(はくめい):日の出のすぐ前・日の入りすぐ後の薄暗い時のこと
- 薄暮(はくぼ):日が暮れようとする頃
- 晩年(ばんねん):一生の終りに近い時期
- 思秋期(ししゅうき):身体や精神の衰えが見られる中年期
- 老年期(ろうねんき):年をとって精神的・肉体的な変化への適応能力が減退する時期
- 余生(よせい):盛りの時期を過ぎた残りの生涯
「黄昏」の対義語
「黄昏」には以下のような対義語があります。
- かわたれ時:人の顔の判別がつかなくなる明け方の時間
- 明け方:夜の明けるころ
- 暁(あかつき):太陽が昇る前のほの暗い頃
- 夜明け:夜が明けるころ
- 曙(あけぼの):夜が明ける頃
「黄昏」の英語訳
「黄昏」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- twilight
(夕暮れ) - dusk
(夕暮れ)
まとめ
以上、この記事では「黄昏」について解説しました。
読み方 | 黄昏(たそがれ) |
---|---|
意味 | 夕方の薄暗くなった頃・ものごとが終わりに近づき、衰えの見える頃 |
語源 | 「だれですか」という意味の「誰そ彼」 |
関連語 | 黄昏時 黄昏色 黄昏泣き 黄昏る |
類義語 | 逢魔が時、思秋期、かわたれ時など |
対義語 | かわたれ時、明け方、暁など |
英語訳 | twilight(夕暮れ)、dusk(夕暮れ) |
面白い語源があるので、しっかりと理解しておきましょう。