「津波」と「高潮」と「高波」の違いとは?原因までわかりやすく解説

違いのギモン

島国の日本で避けることのできない災害は、海にまつわるものです。地震や台風のときに沿岸に近づくのは危険です。

高い波が押し寄せ、多くの犠牲者が出ることもしばしば。2011 年に起こった東日本大震災では、地震の揺れだけではなく、その後の津波によって甚大な被害が出たことが記憶に新しいでしょう。

では、「津波」「高波」「高潮」の違いは何でしょうか。

結論:起こる原因によって呼び分けている

「津波」は地震「高潮」は低気圧「高波」は暴風によって引き起こされる高い波です。

いずれも高い波であることには変わりありませんが、起こる原因によって呼び分けています。

「津波」をもっと詳しく

「津波」は、地震によって起こる高い波です

 

津波では、水面全体が動きます。そのため、普段の波と比べて持っているエネルギーが大きく、大きな被害をもたらします

普段の海にある波は「表面波」という水面だけが動いてできたものです。お風呂の水面近くで腕を動かして水面が動いても、全身に波を感じることはありません。お湯に浸かっている部分では水が動かないからです。

それに対して、津波は水全体が動きます。お風呂のたとえでは、お風呂の底が突然持ち上がってくるようなイメージでしょうか。お湯全体が揺れて、浸かっているのがつらくなるでしょう。

 

「津波」では、「引き波」と「押し波」がやってきます。どちらが先かは場合によって異なるので、地震の後に「引き波が来ないから避難の必要はない」と判断するのは危険です。

津波を起こす地震は海底で起こるものが中心です。海底で起こった地震の揺れが海水面に伝わって、海水面が持ち上がる部分とへこむ部分ができます。

 

津波は、沿岸部にいるときだけ心配していればよいというものではありません。強い力を持つ波は川をさかのぼって内陸部で洪水を引き起こすこともあります。

また、地震を感じたときだけ津波の心配をすればよいというわけでもありません。1960 年に太平洋の反対側・チリで起こった地震をきっかけに大津波が起こり、三陸沿岸で多くの犠牲者が出ました。地球の反対側で起こった地震でも津波をもたらすことがあるのです。

「高潮」をもっと詳しく

「高潮」は、低気圧によって起こる高い波です

「低気圧」は雨雲を作ります。低気圧は周りよりも空気の密度が低いので、周りから空気を吸い込みます。そのときに、水蒸気を吸い込むためです。水蒸気が雲を作り、雨を降らせます。空気を吸い込むときに強い風が吹きます。

とりわけ、熱帯で発生する大きな低気圧を「熱帯低気圧」と呼び、太平洋で生まれたものを「台風」(タイフーン)と呼びます。日本で高潮を引き起こす主な原因です。

 

熱帯低気圧が「高潮」をもたらす原因は、大きく分けて二つあります。

吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」です。

 

「吸い上げ効果」は、低気圧によって海水面が持ち上がることによって起こります

風は、気圧が高いところから低いところへと動いて起こります。これと同じ気圧の力が、海水面にもはたらくことで「吸い上げ効果」が起こります。

この「吸い上げ効果」によって大きな高潮が起こったのが、1959 年の伊勢湾台風です。三重県・愛知県を中心に 5000 名以上の犠牲者を出し、高潮としては史上最大の被害をもたらしました。

 

高潮が満月の時期と重なるとさらなる注意が必要です。月の重力も海水面の高さに影響を与えるからです。

地球は地球の中心に向かって重力が働いています。地球の表面という「地球の中心から十分近い距離」にいる私たちにも重力が働いています。そのため、地球がまわる遠心力などに振り落とされることなく地球表面に留まっていられます。

地球の重力は、月にも働いています。このように、天体の重力はかなり強いのです。地球に比べればかなり軽い月も、それなりの重力を持っていることが納得できるでしょう。月の重力が地球に働いて、海水面の高さを変化させているのです。

 

「吹き寄せ効果」は、暴風によって波が高くなる効果です

普段の波も、風が海水面を動かすために起こります。しかし、風があまりにも強ければ、災害をもたらすような高い波が引き起こされます。

「高波」をもっと詳しく

「高波」は、暴風によって起こる高い波です

台風ではなくても、暴風が吹けば高い波が起こりますよね。「高潮」と「高波」は、「強い風」という共通の原因があります。

 

「高潮」のところで例にあげた「伊勢湾台風」では、低気圧の「吸い寄せ効果」だけではなく、暴風の「吹き寄せ効果」も強かったために、戦後最大の水害にいたりました。

南側に開いた湾では台風の被害が大きくなりやすいです。それは、温かくて軽い水蒸気がたくさん海上にある上に、台風が南からやってくるからです。

台風がおこると、温かい水蒸気が雨雲に供給されて、強い雨を降らせます。さらに、海水そのものが吸い上げられたり吹き寄せられたりして、波を高くします。

 

伊勢湾だけではなく、東京湾や土佐湾なども南側に開けています。こうしたところも、台風のときには高潮・高波に特に注意が必要です。

まとめ

以上、この記事では、「津波」「高潮」「高波」の違いについて解説しました。

  • 津波:地震動によって海水全体が動く波
  • 高潮:低気圧によって海水面が吸い上げられて起こる波
  • 高波:暴風によって海水面が大きく波立って起こる波
自治体が配布している「ハザードマップ」などを参考にしながら、日頃から防災に向けた準備をしておくことが大切です。

「ハザードマップ」は、津波や高潮、高波などが起こったときに予想される浸水域や、避難所の位置などの災害対策に必要な情報が地図にまとめられています。最寄りの避難所の位置を確認したり、非常持ち出し袋を準備したりしておくとよいでしょう。