適材適所とは「その人の能力や性質に合った地位や役割を与えること」という意味です。
適材適所は、ビジネスシーンでよく使う言葉ですので、間違った使い方をしたくないですよね。
この記事では、適材適所の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「適材適所」をざっくり言うと…
読み方 | 適材適所(てきざいてきしょ) |
---|---|
意味 | その人の能力や性質に合った地位や役割を与えること |
由来 | 建築現場で特徴に合わせて木材を使い分けること |
類義語 | 黜陟幽明 量才録用 餅は餅屋 など |
対義語 | 驥服塩車 大器小用 大材小用 など |
英語訳 | right person for the job(仕事にふさわしい人) the right person in the right job(適切な仕事に適切な人) right person, right job(適切な仕事に適切な人) など |
このページの目次
「適材適所」の意味
その人の能力や性質に合った地位や役割を与えること
適材適所は、以下の2語から成り立っています。
- 適材
その仕事内容にふさわしい能力をもつ人 - 適所
その人にふさわしい地位や役割
つまり、「ある能力を持っている人がいたら、その人に合った地位や役割を与えること」を表します。
ここからは、それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
「適材」の意味
その仕事内容にふさわしい能力をもつ人
それぞれの漢字には以下のような意味があります。
- 適
ふさわしい。よくあてはまる - 材
持って生まれた能力
つまり、「仕事内容に対して、よく合っている人材」を表します。
「適所」の意味
その人にふさわしい地位や役割
それぞれの漢字には以下のような意味があります。
- 適
ふさわしい。よくあてはまる - 所
ありか。ところ
つまり、「人材に対して、よく合っている仕事内容」を表します。
適材適所を以下のように表記することは誤りですので、注意しましょう。
× 適才適所
× 適材適処
× 適才適処
「適材適所」の使い方
適材適所には以下のような言い回しで使われます。
- 適材適所の◯◯
- 適材適所だ
- 適材適所で
- 適材適所に
- 適材適所による
- 適材適所がある
例文を見てみましょう。
- 社員が適材適所で働くことで、作業の効率化をはかる。
- チームを強くするためには、選手を適材適所のポジションに配置することが必要だ。
- 人事部の社員は、適材適所の達人だ。
- 会社の経営に必要なのは、適材適所だ。
- 分相応、適材適所を常識として、料理と食器を工夫しますことは、充分研究してよいことであると、私は信ずる者であります。
[出典:北大路魯山人『料理する心』] - 一応賛成であるが、適材適所の法則は、如何なる時代に於ても奨励されなければならぬ。
[出典:岸田國士『新劇の始末』] - 「エエ、適材適所と申しまして、害虫も使いようでざんす」
[出典:坂口安吾『現代忍術伝』] - 何とかしてよくしてやらねばならぬ、それも非常に出来のよいものと悪いものとがあるが、これも本人の天性だから仕方がないが、各々適材適所に振り向けて仕事のやりよいようにせねばならぬ。
[出典:相馬愛蔵『私の小売商道』]
「適材適所」の由来
適材適所の由来は、建築現場で特徴に合わせて木材を使い分けることです。
建築現場では、以下のように、特徴に合わせて木材を使い分けます。
スギ | 日本で一番多く植えられている | 柱、母屋、天井板、床板など |
---|---|---|
ヒノキ | 耐久性に優れる 香りが良い 仕上げた場合の光沢が良い | 柱、土台、天井板など |
イヌマキ | シロアリに強い | 沖縄では柱、梁、土台 |
ケヤキ | 耐久性が高い | 寺社建築、和家具、太鼓 |
ここから転じて、適材適所は「その人の能力や性質に合わせて、適した役割を与える」という意味になりました。
「適材適所」のために必要なこと
ビジネスシーンでは、組織の円滑な運営のために適材適所が必要です。
適材適所を実践するためには、以下のようなことが大切です。
- 課題と目標を明らかにする
- 個人をよく知る
- 幅広い視点で計画を立てる
それぞれ見ていきましょう。
必要なこと①課題と目標を明らかにする
適材適所を実践するためには、まずは課題と目標を明らかにすることが大切です。
現状にどんな課題があり、今後どうしていきたいのか目標を洗い出すことで、必要な役割が見えてきます。
反対に、その人材の現状と今後を考えることで、その人材に与えたほうが良い役割が見えてくることもあります。
必要なこと②個人をよく知る
適材適所を実践するためには、集団に属する個人をしっかり知ることも大切です。
具体的には、以下のような方法があります。
- 聞き取り調査
どんな仕事をしたいのか、将来的にどうなりたいのかなどの意見を聞く - 適性検査
個人の性格やストレス耐性を検査して、合った仕事を確認する - ジョブローテーション
一定期間ごとに部署や仕事内容を変更して、様々な視点を持てるようにする
必要なこと③幅広い視点で計画を立てる
適材適所を実践するためには、幅広い視点で計画を立てておくことも大切です。
短期的な視点や、中期的な視点、長期的な視点によって、取り組む仕事は変化していくからです。
突然の異動や退職にも対応できるように、様々なパターンを考えて人材を配置することが大切です。
「適材適所」の効果
適材適所をうまく実践できると、以下のような効果があります。
- 仕事の効率が上がる
- 従業員の離職を防止できる
- 業績が上がる
それぞれ見ていきましょう。
効果①仕事の効率が上がる
適材適所が実践できると、仕事の効率が上がります。
なぜなら、個人の能力を生かせるからです。
仕事は個人と個人の取り組む作業が積み重なることで回っているため、個人に合った役割を任せることは、結果的に仕事の効率が上がることに繋がるのです。
効果②従業員の離職を防止できる
適材適所が実践できると、従業員の離職を防止できます。
なぜなら、従業員は自分に合った役割を果たすことができるため、やりがいを感じ、不満を抱くことが少なくなるからです。
従業員の離職を防止できるため、長期的な人材育成に繋がり、新しい人材を採用するコストも使わずに済みます。
効果③業績が上がる
適材適所が実践できると、その仕事によって生まれる業績が上がります。
なぜなら、前述した通り、仕事の効率が上がり、従業員も育ちやすいからです。
結果的に、良いサイクルに乗ることができ、業績が上がることが見込まれます。
「適材適所」の事例
適材適所は、歴史上の政治や、会社の経営などにおいて見ることができます。
適材適所だというべき代表的な事例には、以下のようなものがあります。
- 徳川家康による政治
- 徳川吉宗による政治
- ソニー株式会社
それぞれ見ていきましょう。
事例①徳川家康による政治
歴史上において代表的な事例のひとつは、徳川家康による政治です。
家康は、江戸に限らず日本中に、徳川家に代々仕える家臣を配置することで、各地で反乱が起きないようにしました。
こうすることで、約270年にわたり、徳川家が国を治めることができたのです。
「その人の性質に合った地位を与える」という点で、適材適所であるといえます。
事例②徳川吉宗による政治
歴史上において代表的な事例のひとつは、徳川吉宗による政治です。
吉宗は、自身が将軍になった時、現在の三重県にあたる伊勢山田奉行だった大岡忠相(おおおか ただすけ)の仕事ぶりを評価して、彼を江戸の町奉行に選びました。
その結果、吉宗は江戸を再興する享保(きょうほう)の改革に乗り出すことができました。
「その人の能力に合った地位を与える」という点で、適材適所であるといえます。
事例③ソニー株式会社
会社の経営において代表的な事例のひとつは、ソニー株式会社です。
ソニー株式会社では、1966年から、直属の上司の許可を得ずに個人が社内求人に応募できる社内募集制度を実施しています。
また、2015年からは以下のような制度も実施しています。
FA(フリーエージェント)制度 | 一定期間を過ぎ、一定以上の評価の人材に対してFA権を与えて、他部署からオファーが来た場合は移動するか残るか決めることができる |
---|---|
兼務/PJ型募集 | 通常業務の2割から3割を、他の部署の仕事と兼業できる |
キャリア登録 | 社内の人材データベースに登録し、全社のマネジメントで共有する |
「その人の能力や性質に合った地位を与える」という点で、適材適所であるといえます。
「適材適所」と「適所適材」の違い
適材適所によく似た語に、適所適材があります。
適所適材は「その仕事に合った人を配置すること」という意味です。
適材適所と適所適材は以下のような違いがあります。
適材適所 | 適所適材 | |
---|---|---|
意味 | その人の能力や性質に合った地位や役割を与えること | その仕事に合った人を配置すること |
先にあるもの | 人 | 仕事 |
それに合わせるもの | 仕事 | 人 |
適材適所と適所適材は、どちらが先にあるかが異なります。
適材適所は、「仕事内容に対して、よく合っている人材」を表します。
一方、適所適材は、「人材に対して、よく合っている仕事内容」を表します。
「適材適所」の類義語
適材適所には以下のような類義語があります。
- 黜陟幽明(ちゅっちょくゆうめい)
功績に合わせて人材を評価したり昇進させたりすること - 量才録用(りょうさいろくよう)
人の能力をよく見きわめて、その能力を生かす地位におくこと - 餅は餅屋
何事もそれを専門とする人に頼ったほうが良い - 水を得た魚
その人に適した場所で、生き生きと活躍すること - 好都合(こうつごう)
物事を行うにあたって条件が良いこと - 相応しい(ふさわしい)
似つかわしい。つり合っている - 適任(てきにん)
その仕事によく適していること - 適性(てきせい)
性質や性格が、それに適していること - 最適(さいてき)
いちばん適していること - 誂え向き(あつらえむき)
希望や注文にピッタリと合っていること
※お誂え向きともいう
「適材適所」の対義語
適材適所には以下のような対義語があります。
- 驥服塩車(きふくえんしゃ)
すぐれた能力を持つ人が、低い地位にいたり、誰にでもできるような仕事をすること - 大器小用(たいきしょうよう)
すぐれた能力を持つ人につまらない仕事をさせること - 大材小用(たいざいしょうよう)
すぐれた能力を持つ人につまらない仕事をさせること - 身の丈に合わない
能力や度量が、役割に合っていないこと - ちぐはぐ
物事が噛み合わず、違和感があること - アンバランス
つりあいが取れていず、不安定なこと - 相違(そうい)
2つのものに違いがあること - 不協和音(ふきょうわおん)
2つ以上の音が同時に響く時、全体が調和しないで不安定になること
「適材適所」の英語訳
適材適所を英語に訳すと、次のような表現になります。
- right person for the job
(仕事にふさわしい人) - the right person in the right job
(適切な仕事に適切な人) - right person, right job
(適切な仕事に適切な人) - right man, right position
(適切な仕事に適切な人) - right people, right place
(適切な仕事に適切な人) - suitable place
(適切な場所) - right place
(適切な場所) - qualified
(資格がある) - suitable material
(適切な素材)
「適材適所」のまとめ
以上、この記事では適材適所について解説しました。
読み方 | 適材適所(てきざいてきしょ) |
---|---|
意味 | その人の能力や性質に合った地位や役割を与えること |
由来 | 建築現場で特徴に合わせて木材を使い分けること |
類義語 | 黜陟幽明 量才録用 餅は餅屋 など |
対義語 | 驥服塩車 大器小用 大材小用 など |
英語訳 | right person for the job(仕事にふさわしい人) the right person in the right job(適切な仕事に適切な人) right person, right job(適切な仕事に適切な人) など |
適材適所は様々な場面で必要になってくる発想です。
適材適所のように、言葉も使い分けていきたいですね。