木でできた製品には、独特な温かみがありますよね。木製の食器などは、近年注目を集めています。
今ではあまり見ることがなくなった「樽(たる)」と「桶(おけ)」も、そんな木製の日用品です。
そんな日本になじみ深い木製製品である「樽」と「桶」は、似ているようで、いくつか異なる点があります。
今回は、そんな「樽」と「桶」の違いについて解説します。
結論:素材と用途が違う
「桶」は、木目が平行の木材でできており、水汲みなどに使われます。
「樽」をもっと詳しく
「樽」とは、木製の筒形の容器で、主にしょう油やお酒を貯蔵・運搬する際に使われます。
材料には、木目が波の形をした「板目(いため)板」を使っています。板目板は、木材を切り出す時に、水平に割ってできるので、木の断面にある円状の模様を見ることができます。
この板目板には、水分を蒸発させにくい性質があります。そのため、液体をもらさずに貯蔵したり、運んだりする「樽」に使われているのです。
「樽」は、発酵を必要とする食品の貯蔵に適しています。大豆製品には「しょう油樽」や「味噌樽」として、日本酒やワインには「酒樽」として現在でも重宝されています。
「桶」をもっと詳しく
「桶」も、木製で筒形の容器ですが、家庭の水回りでよく使われます。元々は、「麻笥(おけ)」といい、麻糸を入れるための容器でした。
「桶」を造るのに使われているのは、「柾目(まさめ)板」と呼ばれる木材です。先程の板目板とは違い、木材を直角に切り出すため、断面には平行線が現れます。
柾目板は、水分を吸収しやすいのですが、温度の変化などには強いです。その耐久性から、水を何度も汲んだり流したりする、生活用品に用いられるようになりました。
代表的な例としては、炊事で使う「米研ぎ桶」や入浴用の「風呂桶」などでしょう。
古くは、ヒノキなどの木材で造られるのが主流でした。しかし、明治時代を経ると、鉄製のバケツや、桶であってもプラスチック製のものが普及し、現在では本来の木でできた桶を見る機会は少なくなってしまいました。
まとめ
以上、この記事では、「樽」と「桶」の違いについて解説しました。
- 樽:板目板が使われた、貯蔵向きの木製容器。
- 桶:柾目板が使われた、水汲み向きの木製容器。
普段あまり気にかけることのない「樽」と「桶」かもしれませんが、木材を古くから使ってきた日本だからこその違いがありましたね。
これを機に、木製の道具の良さを見直してみるのもいいかもしれません。