「袂を分かつ」は「関係が深い人と別れる」という意味です。
意味を知っていたとしても、「過去形ではどのように使うのだろう」「どのような由来があるのだろう」など、さらに詳しい知識に関心を持っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「袂を分かつ」を深く理解することができるよう、意味や使い方、由来などを詳しく解説します。
☆「袂を分かつ」をざっくり言うと……
読み方 | たもとをわかつ |
---|---|
意味 | 関係が深い人と別れる |
由来 | 「着物の袂を切り離す」という意味から |
類義語 | 袂別する、絶交する、決別するなど |
対義語 | 袂を連ねる、和合する、出会うなど |
英語訳 | break up with〜(〜と別れる)、break it off with〜(〜と別れる)など |
「袂を分かつ」の意味
関係が深い人と別れる
「袂を分かつ」とは、関係が深かった人と、意見の分裂などをきっかけに別れることです。
単に関係を解消することではなく、“深くつながっていた大切な人”との別れを表します。
- 仲間
- 信頼し合っている同僚
- 親友
- 家族 など
したがって、関係が浅い人や、もともと意見が一致していなかった人との別れには、「袂を分かつ」を使うことができません。
「袂を分かつ」は、恋人との別れには使いません。
ただし、夫婦間の離婚に対しては使う場合があります。
このルールに明確な理由はありませんが、慣例として覚えておきましょう。
「分かつ」は古語(こご)
「分かつ」は、「2つのものを切り離す」という意味をもつ古語です。
現代の日本語にすると、「分ける」になります。
「袂を分かつ」の誤った表記
「袂を分かつ」を、以下のように表記するのは誤用です。
- 袂を分ける
- 袂を別つ
「袂を分かつ」の使い方
「袂を分かつ」は以下のように用いることが多いです。
- 過去形として用いる
- 否定形として用いる
それぞれ見ていきましょう。
使い方①過去形として用いる
「袂を分かつ」をそのまま現在形で使うことは少ないです。
なぜなら、「袂を分かつ」は、“別れが決まったあと”に使うことが多いからです。
「袂を分かつ」を過去形にした表現には、以下のようなものがあります。
- 袂を分かつことになった
- 袂を分かつ結果となった
- 袂を分かった〇〇
具体的な例文を見てみましょう。
- 私は盟友と袂を分かつことになった。
- 僕たちは長年、苦楽を共にしてきたが、袂を分かつ結果となった。
- 袂を分かった彼女たちは、二度と顔を合わせないだろう。
なお、すでに解説したとおり、「袂を分かつ」の「分かつ」は古語です。
古文では、「袂を分かつ」の過去形は「袂を分かちぬ」です。
しかし、現在ではあまり使われません。
現在では、上記の例文のように「袂を分かつことになった」などの表現で用います。
過去形にしたいからといって、「私たちは袂を分かった。」という表現は使いませんから、注意しましょう。
使い方②否定形で用いる
「袂を分かつ」を否定形にして、「別れない」「別れなかった」という意味を表したい場合、以下のような表現を使います。
- 袂を分かたず〜
- 袂を分かたぬ〇〇
具体的な例文を見てみましょう。
- 私と同僚は、袂を分かたず、これからも一緒に働くことにした。
- 口論が絶えないのにも関わらず、いつまでも袂を分かたぬ彼らに困惑する。
「袂を分かつ」の使い方の注意点
「袂を分かつ」を使ううえでは、以下の点に気をつけましょう。
- 同じ志をもった仲間との別れに使う
- 関係が浅い人との別れには使わない
- 恋人との別れには使わない
- モノとの別れには使わない
「袂を分かつ」の由来
「袂を分かつ」の意味は、親との別れという意味から派生して生まれたと考えられています。
「袂を分かつ」は「着物の袂を切り離す」という意味ですが、昔は結婚すると袂を切り離す習慣がありました。
これが以下のように連想されて、「関係が深い人と分かれる」という意味になったのです。
袂とは
袂は、着物の袖(そで)が袋状になっている部分を指します。
結婚すると袂を切り離した理由
結婚後の女性の着物は、袂の部分を切って、袖を短くするのが一般的でした。
昔は、好きな人に向かって袂を振ると、恋愛が成就すると考えられていました。
そのため、袂を振ることは、未婚女性の習慣的な仕草とされていました。
ただし、結婚をした女性には、今後新たな恋愛をすることがないという前提があり、袂を振らなくなるため、袖を短くしたのです。
袂は「手元」が転じた言葉
ちなみに、袂は、「手元(たもと)」という言葉から転じた漢字といわれています。
「手元」には、以下のような意味があります。
- 自分のそば
- 手で握る部分
- 手の動かし方
- 生活するためのお金
「手元」の①の意味が派生して、袂も、「自分のそば」という意味で使われることがあります。
そのため、「袂を分かつ」の「関係が深い人と別れる」という意味は、自分のそばから離れるという意味が転じたものだと考えることもできます。
「袂を分かつ」の類義語
「袂を分かつ」には以下のような類義語があります。
- 袖(そで)を分かつ
関係が深い人と別れる - 袂別(べいべつ)する
袂を分かつこと - 決別(けつべつ)する
相手との関係を完全に解消すること - 絶交(ぜっこう)する
相手との関係を断つこと - 絶縁(ぜつえん)する
相手との関係を断つこと - 勘当(かんどう)
親が子との関係を断ち切ること - 縁を切る
相手との関係を断つこと - 破局(はきょく)する
相手との関係がなくなること - 手を切る
相手との関係を断ち切ること - 仲違い(なかたがい)する
仲が悪くなること - 決裂(けつれつ)する
相手との意見が対立すること
「袂を分かつ」の対義語
「袂を分かつ」には以下のような対義語があります。
- 袂を連ねる(つらねる)
仲間と一緒に行動する - 和合(わごう)する
仲良くすること - 出会う
人や物事に偶然会う - 結ばれる
人とつながりができる - 巡り合う
めぐりめぐって、人や物事に出会う - 復縁(ふくえん)する
一度別れた人どうしが関係を取り戻すこと - 一緒になる
夫婦になる - 連れ添う
夫婦になること - ゴールイン
結婚すること - 協調(きょうちょう)する
協力しあう - 協力(きょうりょく)する
力を合わせる
「袂を分かつ」は、相手との関係を解消することを表します。
このため、「新たな関係が生まれる」「関係が修復する」といった意味をもつ言葉が、「袂を分かつ」の対義語になります。
「袂を分かつ」の英語訳
「袂を分かつ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- break up with〜
(〜と別れる) - break it off with〜
(〜と別れる) - break off one’s relation
(その関係を断ち切る) - cut off contact with〜
(〜との連絡を断ち切る)
「袂を分かつ」のまとめ
以上、この記事では「袂を分かつ」について解説しました。
読み方 | たもとをわかつ |
---|---|
意味 | 関係が深い人と別れる |
由来 | 「着物の袂を切り離す」という意味から |
類義語 | 袂別する、絶交する、決別するなど |
対義語 | 袂を連ねる、和合する、出会うなど |
英語訳 | break up with〜(〜と別れる)、break it off with〜(〜と別れる)など |
「袂を分かつ」という体験はとても悲しいものです。
しかし、双方が納得したうえで、関係を解消するのであれば、互いの新しい成長にも繋がるでしょう。
この記事で、使い方などを復習して、「袂を分かつ」を正しく使える大人になりましょう。