「加味する」とは「物事にほかの要素をつけ足す」という意味です。
みなさんは、「加味する」という表現を日常的に使ったことはありますか?
わざわざ「加味する」と言わなくても、「加える」と言えばいいのではないか、と思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「加味する」の意味や使い方を詳しく解説していきます。
☆「加味する」をざっくり言うと……
読み方 | 加味する(かみする) |
---|---|
意味 | 物事にほかの要素をつけ足す |
由来 | ある薬にほかの薬を混ぜ合わせて調合すること |
類義語 | 考慮する 織りこむ 補充する など |
対義語 | 加味しない 考慮に入れない |
英語訳 | take into account take into consideration |
「加味する」の意味
①物事にほかの要素をつけ足す
②味をつけ足す
加味するには、上記のように二つの意味があります。
①の意味の方がよく使われます。
ここからはそれぞれの意味について順に解説していきます。
意味①:物事にほかの要素をつけ足す
「加味する」の意味の一つめは、物事にほかの要素をつけ足すというものです。
今まで考慮していなかったようなことを踏まえたり、別の要素を付け加えたりして物事をより良くしようとする場面でこの表現が使われます。
この表現の特徴として、「なんでもかんでも考えの中にいれるわけではない」ということが挙げられます。
この表現では、あくまで自分の考えや判断をより正しいものにするために必要だと思われる事柄のみを考えます。
そのため、幅広くさまざまなことを考えるわけではありません。
意味②:味をつけ足す
「加味する」の意味の二つめは、味をつけ足すというものです。
この表現は、料理の際に使われます。
料理をしていて味が薄いときや、自分の思い通りの味になっていないときに、調味料などを使って味を変えることを加味するというのです。
先ほども述べた通り、「加味する」という表現が使われる際には①の意味で使われることが多いため、この用法自体を目にすることが少ないです。
また、料理をする場面でも「加味する」より「加える」「足す」という表現を使うことが多いです。
「加味する」の使い方
「加味する」は「物事に他の要素をつけ足す」という意味ではビジネスシーンや学校で使われることが多いです。
また、「味をつけ足す」という意味では料理の場面で使われることが多いです。
「加味する」を使った例文は以下の通りです。
- 先方の意見を加味した上で、この商品の計画を練り直そう。
- この授業では、テストの点数だけでなく出席回数を加味した上で成績評価がつけられる。
- もう少し辛さが欲しいので、料理に唐辛子を加味する。
①の例文はビジネスシーンにおいて使う場合の例文です。
他人の考えを自分たちの企画につけ足すという意味合いで「加味する」が使われています。
②の例文は学校において使う場合の例文です。
出席を評価し、点数につけ足すという意味合いで「加味する」が使われています。
これら二つの例文では、どちらも物事に他の要素をつけ足すというニュアンスで「加味する」を使用しています。
③の例文は料理における「加味する」の使い方です。
こちらは味をつけ足すというニュアンスで「加味する」が使用されています。
「加味する」の由来
「加味する」はもともと、ある薬にほかの薬を混ぜ合わせて調合することを表す言葉でした。
加味を構成する漢字にはそれぞれ以下のような意味があります。
- 加:上に積む、のせる
- 味:薬種
ここからも分かる通り、加味にはもともと薬の上に薬をのせて混ぜ合わせるという意味がありました。
ここから発展して、「料理の際に調味料などを足して味をつけ足す」という意味になりました。
さらにそこから派生して「物事を工夫してつけ足す」という意味になったのです。
「加味する」の類義語
「加味する」には以下のような類義語があります。
- 考慮する
思いをめぐらせる - 織りこむ
一つの物事にほかの物事を含める - 補充する
不足しているものを補う - 踏まえる
ある物事を判断の根拠とする - 組み込む
より大きな物の中にある物を入れる - 勘案(かんあん)する
いろいろと考え合わせること - 計算に入れる
あらかじめ予測して計画を立てておくこと - 視野に入れる
物事を考える際に、ほかの物事も合わせて考えること
それぞれの類義語と「加味する」のニュアンスの違いについて、以下で解説します。
「加味する」と「考慮する」の違い
「考慮する」とは、思いをめぐらせるという意味です。
「加味する」と「考慮する」の違いは以下の通りです。
- 加味する
場面に合った事柄を狭く考える - 考慮する
さまざまなことについて考える
「加味する」と「考慮する」は、考える事柄の量に違いがあります。
「加味する」と「織りこむ」の違い
「織りこむ」とは、一つの物事にほかの物事を含めるという意味です。
「加味する」と「織りこむ」の違いは以下の通りです。
- 加味する
「味をつけ加える」という意味がある - 織りこむ
「違う色の意図や模様を入れて織る」という意味がある
「加味する」と「織りこむ」は、「物事にほかの要素をつけ足す」以外の意味で違いがあるのです。
「加味する」と「補充する」の違い
「補充する」とは、不足しているものを補うという意味です。
「加味する」と「補充する」の違いは以下の通りです。
- 加味する
元あるものをさらに良くしていく - 補充する
不足しているものを補う
「加味する」と「補充する」は、物事を改良する狙いに違いがあります。
「加味する」と「踏まえる」の違い
「踏まえる」とは、ある物事を判断の根拠とするという意味です。
「加味する」と「踏まえる」の違いは以下の通りです。
- 加味する
ある物事をほかの物事に加える - 踏まえる
ある物事をほかの物事の判断基準にする
「加味する」と「踏まえる」は、物事の組み合わせ方に違いがあるのです。
「加味する」と「組み込む」の違い
「組み込む」とは、より大きな物の中にある物を入れるという意味です。
「加味する」と「組み込む」の違いは以下の通りです。
- 加味する
物事の大きさに関係なく、ある物を他の物につけ足す - 組み込む
ある物を、それよりも大きな物の中に入れる
「加味する」と「組み込む」には、物事の大きさに違いがあるのです。
「加味する」と「勘案する」の違い
「勘案する」とは、いろいろと考え合わせるという意味です。
「加味する」と「勘案する」の違いは以下の通りです。
- 加味する
単純に、ある物を他の物につけ足すという意味を持つ - 勘案する
考え抜いた後、ある考えを他の考えにつけ足すという意味を持つ
「加味する」と「勘案する」には、「考え抜いたかどうか」という点に違いがあります。
「加味する」と「計算に入れる」の違い
「計算に入れる」とは、あらかじめ予測して計画を立てておくという意味です。
「加味する」と「計算に入れる」の違いは以下の通りです。
- 加味する
時間軸に関係なく、ある物事をほかの物事につけ足す - 計算に入れる
ある事柄より前に、ある考えをほかの考えにつけ足す
「加味する」と「計算に入れる」には、時間軸の違いがあります。
「加味する」と「視野に入れる」の違い
「視野に入れる」とは、物事を考える際に、ほかの物事も合わせて考えるという意味です。
「加味する」と「視野に入れる」には、以下のような違いがあります。
- 加味する
物や考えを、ほかの物や考えにつけ足す - 視野に入れる
考えを、ほかの考えにつけ足す
「加味する」と「視野に入れる」には、物を含めるかそうでないかという点に違いがあります。
「加味する」の対義語
「加味する」という表現には以下のような対義語があります。
- 加味しない
ほかの要素をつけ加えない - 考慮しない
ほかの要素を考えない
「加味する」という表現には、表現としての対義語がありません。
そのため、この言葉自体や類義語である言葉を否定形にした、「加味しない」や「考慮しない」といった表現が対義語になります。
「加味する」の英語訳
「加味する」という表現を英語に訳すと、次のような表現になります。
- take into account
(加味する・考慮する) - take into consideration
(加味する・考慮する)
二つの表現に共通している “take into” とは、「~を~に入れる」という意味のイディオム表現です。
また、一つめの表現に出てくる “account” には、「評価・考慮」という意味があり、二つ目の表現に出てくる“consideration”には、「熟慮・検討」という意味があります。
そのため、どちらの表現も「~を評価、検討の中に入れる」というニュアンスになり、「加味する」を表す英語訳として使うことができるのです。
「加味する」のまとめ
以上、この記事では「加味する」について解説しました。
読み方 | 加味する(かみする) |
---|---|
意味 | 物事にほかの要素をつけ足す |
由来 | ある薬にほかの薬を混ぜ合わせて調合すること |
類義語 | 考慮する 織りこむ 補充する など |
対義語 | 加味しない 考慮に入れない |
英語訳 | take into account take into consideration |
このように、「加味する」は物事にほかの要素を付け加えるという意味をもつ言葉です。
覚えた言葉は積極的に使っていき、語彙の定着を目指しましょう。