「所得税」と「住民税」の5つの違いとは?課税の対象年度まで解説

違いのギモン

日本で生活をしている人には、「納税の義務」があることが憲法に規定されています。納めなければならない税金は多岐に渡ります。一番身近な存在は「消費税」かもしれません。「消費税」は消費するモノやサービスの金額に上乗せする形で徴収します。

しかし、給料を企業などから受け取っている方や個人事業主(自営業)の方は、「所得税」や「住民税」も納めているという実感が強いのではないでしょうか。どちらも、給料から引かれているなどの似ている要素があり、二つの違いは少し分かりづらいかもしれません。

この記事では、税金の種類について簡単に解説しながら、「所得税」と「住民税」の5つの違いについて解説します。

☆「所得税」「住民税」の違いをざっくり言うと……

所得税住民税
納付先国(税務署)各地方自治体
計算方法各種控除を差し引いた課税所得に応じて課税額が決まる累進課税制度「均等割」と「所得割」の合計額
課税の対象年度その年の所得に対して課税前年の所得に対して課税
控除額上記の表を参照上記の表を参照
納付時期翌年の2月16日から3月15日(個人事業主など)一括の場合翌年の6月から7月、分割の場合それぞれ翌年の6月末、8月末、10月末、次の1月末

税金の種類

「所得税」と「間接税」の違いについて解説する前に、税金の種類についても簡単に触れておきます。

税金は、「納付先」と「納付の仕方」によって、それぞれ分類することができます。以下でそれぞれ解説します。

「国税」と「地方税」

税金は、納付する先によって二つに分類することができます。それぞれ、「国税」「地方税」です。

「国税」とは、言葉の通り国に納める税金です。集められた税金は「国家予算」に組み込まれます。国家予算は主に、教育、医療、福祉、公共事業、国防などに当てられます。

そして、「国税」を管轄するのは、「税務署」です。


「地方税」とは、居住している(住民票を登録している)都道府県や各市町村に納める税金です。集められた税金は、「国税」と同じく、その地方自治体内での教育や公共事業などに当てられます。

「地方税」を管轄するのは、税務署ではなく、各地方自治体です。

「直接税」と「間接税」

税金を、納付の仕方によって分類すると、二つに分けることができます。それぞれ、「直接税」「間接税」です。

「直接税」とは、税金を納める義務を負う人自身が直接、納付先に収める税金です。

「間接税」とは、上で述べた消費税と同じように、モノやサービスに上乗せをする形で負担する(納める)税金です。

 

以下が、「直接税」と「間接税」それぞれに当てはまる税金です。

  • 直接税所得税住民税、贈与(ぞうよ)税、相続税、法人税、自動車税、固定資産税など
  • 間接税:消費税、酒税、たばこ税、印紙税、関税、ゴルフ場利用税、入湯税など

上記のように、今回違いを解説する「所得税」と「住民税」はどちらも「直接税」に分類されます。

【1】納付先の違い

「所得税」の納付先

「所得税」は、「国税」です。つまり、前述したように国に納める税金であり、徴収された税金は国家予算に組み込まれます。

管轄するのは「税務署」です。また、関連する法律は「所得税法」です。

「住民税」の納付先

「住民税」は、「地方税」です。したがって、前述したように地方自治体に納める税金であり、その自治体内の住民へのサービスを住民自らが支えるという目的で徴収されています。

管轄するのは「地方自治体」です。また、関連する法律は「地方税法」です。

【2】計算方法の違い

「所得税」の計算方法

「所得税」は、個人の所得(収入から必要経費や給与所得控除を差し引いた額)に対して課税がされる税金です。

ちなみに収入から必要経費を差し引くのは個人事業主(自営業)の人です。他の会社などから給与を受け取る人は、必要経費の代わりに給与所得控除を差し引くことができます。給与所得控除額はその人の収入に応じて決まります。

 

必要経費や給与所得控除の他にも、基礎控除や配偶者控除などの控除があり、それらを収入から差し引きます。これらを算出したものが「課税所得」です。課税所得に税率をかけて算出した額が、納付すべき所得税額になります。

「所得税」は累進(るいしん)課税制度を採用しています。つまり、「所得税」は、所得が高い人ほど納税額が増える税金です。課税所得にかける税率は、低くて5%、高くて45%となっています。

「住民税」の計算方法

「住民税」の計算方法は、「均等割」と「所得割」の合計額ということで少し複雑であると言えます。

「均等割」は、そこに住み、サービスを受ける人が均等に負担をするという趣旨の税金です。つまり、所得の多少に関係なく、その自治体に住む納税義務者が均等に払わなければならない税金ということになります。

ただし、自治体ごとで条件は異なりますが、一定の条件を満たす人は非課税となります。

 

各自治体ごとで、均等割額が定められており、納税が義務付けられています。ちなみに、「住民税」は「県民税(都道府県民税)」と「市民税(市区町村税)」に分けられます。それぞれ納付が必要で、別個で均等割額も定められています。

「均等割」は「所得税」にはないので、「均等割」の有無は、「住民税」と「所得税」の計算方法で大きく異なる部分と言えます。

 

「所得割」は、それぞれの個人の課税所得に応じて算出される税金です。先ほど紹介した所得税の計算方法と似ています。

課税所得に応じて納税額は決定されるため、所得が高い人は多く払うことになり、所得が低い人は少なく払うことになります。

【3】課税の対象年度の違い

「所得税」はその年の所得に対して課税がなされます。つまり、1月から12月までの所得が対象となり、その年のうちに納税することになります。

一方、「住民税」は前年の所得に対して課税がなされます。したがって、新入社員には前年の所得が無いので、「住民税」はかかりません。逆に、退職1年目の人は、前年の所得に応じて「住民税」を支払うことになります。

【4】控除(こうじょ)額の違い

「所得税」と「住民税」では、収入から差し引く各種の「控除額」に違いがあります。

先ほど説明したように、給与所得控除はその人の収入の多少によって額は変動します。しかし、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などは額が定められており、「所得税」と「住民税」でそれぞれ定められている額も異なります。

所得税住民税
基礎控除33万円38万円
配偶者控除33万円38万円
老人配偶者控除38万円48万円
配偶者特別控除33万円38万円
一般の扶養控除33万円38万円
特定扶養控除45万円63万円
老人扶養控除38万円48万円
同居老親等扶養控除45万円58万円
障害者控除26万円27万円
特別障害者控除30万円40万円
同居特別障害者控除53万円75万円
寡婦・寡夫控除26万円27万円
特別寡婦控除30万円35万円
勤労学生控除26万円27万円

この表を参照のように、「所得税」と「住民税」では控除額が異なるので、計算する際には細心の注意が必要です。

【5】納付時期の違い

「所得税」の納付時期

会社などから給与を受け取る人は「所得税」も「住民税」も給与から天引きされ、会社が納付をしてくれているので心配は必要ありません。

個人事業主などの場合には、個人で納める必要があり納付時期には注意が必要です。

その年の「所得税」は、翌年の2月16日から3月15日までの間に納付する必要があります。また、納付は分割で支払うことができません。

「住民税」の納付時期

「住民税」は先ほど説明したように、前年の所得に対して課税がなされます。個人事業主には、翌年の4月から5月の間に納税額の決定通知書と納付書が郵送されてきます。一括で支払う場合は、その後の6月から7月の間に納付をする必要があります。

しかし、「住民税」は「所得税」とは異なり、年4回の分割での支払いが可能です。分割で支払う場合は、第1期の支払い期限が6月末、2期が8月末、3期が10月末、4期が翌年1月末です。

「所得税」と「住民税」では、納付時期はもちろん、分割支払いの可否についても大きな違いと言えます。

まとめ

以上、この記事では、「所得税」と「住民税」の5つの違いについて解説しました。

所得税住民税
納付先国(税務署)各地方自治体
計算方法各種控除を差し引いた課税所得に応じて課税額が決まる累進課税制度「均等割」と「所得割」の合計額
課税の対象年度その年の所得に対して課税前年の所得に対して課税
控除額上記の表を参照上記の表を参照
納付時期翌年の2月16日から3月15日(個人事業主など)一括の場合翌年の6月から7月、分割の場合それぞれ翌年の6月末、8月末、10月末、次の1月末

「所得税」と「住民税」の違いについて理解することはできたでしょうか。似た要素がある一方で、違いが多岐に渡ってあるということを分かっていただけたかと思います。

特に、新入社員に「住民税」が課税されない仕組みについても、「課税年度」の違いによるものだということで納得できたのではないでしょうか。

納税は憲法にも規定された国民の義務です。会社員の方は特に大きな心配はいらないかもしれませんが、個人事業主の方は個人で納税する必要があります。「所得税」と「住民税」の違いを押さえて、確実に納付しましょう。