何らかの罪を犯してしまった人について報道される時、皆さまは次の 4つの言葉をよく見るのではないでしょうか。「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」。これらの言葉は、同じ人物に対して使われることはあれど、同じ意味ではないのです。
今回は「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の違いについて解説します。
☆「容疑者」「被疑者」「犯人」「被告人」の違いをざっくり言うと……
容疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語ではない。 |
---|---|
被疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語。 |
被告人 | 刑事訴訟において、犯罪の疑いが十分であるとして起訴された者。 |
犯人 | 犯罪を行った人物。 |
結論:段階によって呼称が異なる
「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の違いを分かりやすくまとめたものが以下の表になります。
容疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語ではない。 |
---|---|
被疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語。 |
被告人 | 刑事訴訟において、犯罪の疑いが十分であるとして起訴された者。 |
犯人 | 犯罪を行った人物。 |
「容疑者」をもっと詳しく
「容疑者」とは、犯罪をしたのではないかという疑いを捜査機関にかけられているものの、起訴には至っていない者のことを指します。起訴とは、裁判所に訴えを提起して、審理を求めることです。「容疑者」は英語で “suspect” と言います。
「容疑者」という言葉は報道で多く使われますが、正式な法令用語ではありません。正式な呼称は、後に解説する「被疑者」です。
「被疑者」と報道しない理由として、「被疑者」と「被害者」の読み方が似ており、報道する際に受け取り手に勘違いを引き起こしてしまう懸念があることが指摘されています。
「被疑者」をもっと詳しく
「被疑者」とは、犯罪をしたのではないかという疑いを捜査機関にかけられているものの、起訴には至っていない者のことを指します。こちらは正式な法令用語です。「被疑者」の英語表現は、容疑者と同様に “suspect” です。
犯罪の疑いをかけられてから、逮捕され、捜査機関による取り調べを受け終わるまでの間は「被疑者」と呼ばれます。「被疑者」の段階は、あくまで犯罪の疑いがかけられているという状態であるため、犯罪をしたかどうかはまだ明確になっていないという点に注意が必要です。
「被告人」をもっと詳しく
「被告人」とは、刑事訴訟において起訴された者のことを指します。刑事訴訟とは、犯罪事実を認定して刑罰を科すための訴訟手続きのことを指します。「被告人」は英語で “accused” と言います。
「被告人」の段階でも、有罪判決が出ない以上は犯罪をしていない人として扱われます。このように、裁判において有罪判決が宣告されるまでは無罪であるとする考え方を「推定無罪の原則」と言います。
また、「被告人」と似ている言葉として「被告」がありますが、この 2つは同じものを指してはいません。「被告」とは、民事訴訟において訴えられた者のことを指します。民事訴訟とは、個人間の生活に関する紛争を法律で解決しようとする訴訟手続きのことです。
「犯人」をもっと詳しく
「犯人」とは、罪を犯した人のことを指します。英語では “criminal” と言います。
「犯人」という言葉を使う上で注意したいことは、「被疑者」や「被告人」の段階では「犯人」ではないということです。裁判で有罪の判決が出ていない以上、その人が罪を犯したかどうかは分からないためです。
したがって、当人が犯罪行為をしたことが明らかである現行犯などの場合を除いて、「犯人を逮捕した。」という表現は不適切であると言えます。
まとめ
以上、この記事では、「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の違いについて解説しました。
最後にもう一度、下記の表を確認しましょう。
容疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語ではない。 |
---|---|
被疑者 | 捜査機関から犯罪の疑いをかけられているが、起訴には至っていない者。 法律用語。 |
被告人 | 刑事訴訟において、犯罪の疑いが十分であるとして起訴された者。 |
犯人 | 犯罪を行った人物。 |
「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の 4つの言葉は、当人がどの状況に処されているかに応じて使い分けが必要です。混同することのないように注意しましょう。