「夕焼け」と「夕暮れ」。どちらも1日が終わる頃、赤く染まった空の中で太陽が沈んで行く光景をイメージすると思います。しかし、「夕焼け」と「夕暮れ」は違う意味の言葉です。
どちらも日常会話だけではなく、小説や歌でよく使われる言葉です。有名なアーティストの中では、スピッツが『夕焼け』という歌を、THE BLUE HEARTS や JUDY AND MARY が『夕暮れ』という歌を持っていますね。
今回は、日本語話者でもなかなか知らない「夕焼け」と「夕暮れ」の違いについて解説していきます。小説が好きな人や、スピッツのファンの人は必見です。
結論:「夕焼け」は自然現象、「夕暮れ」は時間帯。
一方「夕暮れ」とは、日が暮れる前後の時間帯のことです。
「夕焼け」をもっと詳しく
「夕焼け」とは、日没の時間帯に、地平線近くの西の空が赤く染まる自然現象のことです。厚い雨雲で覆い隠されているときなど、天気によって見ることができない場合もあります。英語では “sunset” といいます。
一方「朝焼け」とは、日の出の時間帯に、地平線近くの東の空が赤く染まる自然現象のことです。「夕焼け」の朝バージョンといえます。
「夕焼け」の「夕」という漢字には、「日が暮れかかっている時、夕方」という意味があります。「焼け」という言葉には、「焼けたように色が変わること」という意味があります。「焼け」は、「夕焼け」という言葉の他には、日焼け、朝焼け、というように使用されます。
「夕焼け」により赤く染まった雲を、「夕焼け雲」といいます。
俳句においては「夕焼け」は夏の季語となっています。ちなみに「朝焼け」も夏の季語です。
「夕焼け」の使い方の例
→見ることができるのは自然現象である「夕焼け」です。「夕暮れ」は見ることができません。
→三木露風(みきろふう)の童謡(どうよう)『赤とんぼ』です。「夕焼け」が登場しています
なぜ「夕焼け」は赤いのか?
日中、太陽の光が地球に届きます。そして光には、波長の違いがあり、それに応じて色が変化します。
波長が長い順に、色には次の種類があります。
- 赤色
- オレンジ色
- 黄色
- 緑色
- 青色
- 藍色
- 紫色
光は波長が長いほど細かい分子の間を通り抜け、遠くまで届きます。具体的には、赤色・オレンジ色の光が遠くまで届くと言えます。
日が暮れる時間帯になると、正午には私たちの上にあった太陽が、横(西の地平線近く)に移動します。この時、太陽光が通り抜ける空気層の距離は日中よりも長くなっています。
そのため、日中であれば地表まで届いていた光の多くが届かなくなり、特に波長の長い赤色・オレンジ色の光だけが私たちのもとに届く状態となります。
これが「夕焼け」です。
「夕暮れ」をもっと詳しく
「夕暮れ」とは、日が暮れる時間帯のことです。「日暮れ」「たそがれ」ともいいます。具体的な時間帯は季節によって異なります。
「夕暮れ」は時間のことなので、たとえ嵐が吹き荒れていたとしても、毎日必ず「夕暮れ」は訪れます。
「夕暮れ」の「夕」という漢字には、「日が暮れかかっている時、夕方」という意味があります。「暮れ」という言葉には、「ある期間の終わり」の他に「夕方、夕暮れ」という意味があります。つまり「夕」も「暮れ」も両方が「夕方」という意味を持っています。
「夕暮れ」間近の時間帯のことを「生夕暮れ(なまゆうぐれ)」といいます。
清少納言が書いた『枕草子』には「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり」という記述があります。
これを現代語にすると「秋は夕暮れが良い。夕日が差し込んで山の端にとても近く感じる時間に、烏が寝床へ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急いでいる様子はしみじみとして趣がある」となります。
「夕暮れ」の使い方の例
→「夕焼け」とは違い、「夕暮れ」は毎日訪れます。
→「夕暮れ」とは時間帯のことです。
まとめ
以上、この記事では、「夕焼け」と「夕暮れ」の違いについて解説しました。
- 夕焼け:日没時に西の空が赤く染まる現象
- 夕暮れ:日没の頃。日が暮れる時間帯。
「どうして空は青いの?」
「どうして空が赤いの?」
おそらく子供の頃、誰もが一度は疑問に思ったことでしょう。
「夕焼け」が赤くなるメカニズムを理解すると、日中空が青い理由・「夕暮れ」に赤くなる理由が分かります。しかし、光の波長や空気の層が関係しており、幼い子供が分かるように教えるのはなかなか難しいかもしれません。
また、「夕焼け」が赤い理由は知らなくても世の中で苦労することはありませんが、「夕焼け」と「夕暮れ」の違いくらいは教養として知っておいても損はないでしょう。ぜひ覚えておいてください。