「隙あらば自分語り」とは「他人の話に割り込んで自慢すること」という意味です。
掲示板が発祥のネットスラングですが、ツイッターなどのSNSや日常会話でもよく使われます。
また、略称の「隙自語(すきじがた/すきじご)」の形で使われることもあり、意味が気になっている方も多いでしょう。
この記事では、「隙あらば自分語り」の意味や使い方に加え、由来や嫌われる理由と対処法などを紹介します。
このページの目次
「隙あらば自分語り」の意味
他人の話に割り込んで自慢すること
例:はい、隙あらば自分語り乙〜
「隙あらば自分語り」とは、他人の話に割り込んで自慢をすることです。略称は「隙自語(すきじがた/すきじご)」「隙あ自」などがありますが、多くは「隙自語」が使われます。
ただでさえ人の自慢は聞き苦しく感じる人が多い上、人の話に割り込んでいることで、より相手から嫌がられます。「隙あらば自分語り」は、そういう人をからかう言葉です。
「隙あらば自分語り」は、以下の2つの言葉で構成されています。
- 隙あらば
相手に油断があったなら - 自分語り
自分について長く話すこと
「隙自語」の読み方には「すきじがた」「すきじご」の2つの説があり、語源から「すきじがた」とする人が多いです。
しかし、もともとネット上で使われる言葉であるため、まず口頭で口に出すことがほぼありません。そのため、読み方の正誤も特にありません。
「隙あらば自分語り」は、かつては、「はいはい、隙あらば自分語りお疲れ様」というように、文章の一部として使われていました。
これが「隙あらば自分語り乙」「隙自語乙」だけでその意味を表すようになりました。「乙」とは「お疲れ様」の省略形です。
さらに現在は乙が取れて「隙あらば自分語り」「隙自語」という略称がメジャーになりつつあります。
これは、「お疲れ様」という一言を入れなくても、十分に揶揄(やゆ)するニュアンスが伝わるからです。
「隙あらば自分語り」の元ネタ
「隙あらば自分語り」の元ネタは、「ハセカラ騒動」と呼ばれる、なんJというインターネット掲示板でかつて起きた騒動です。
ハカセラ騒動とは、以下のような騒動です。
- 八神太一というユーザーが、3年に渡って、なんJで自分語りのためのスレッドを複数立てていた
- ある日、八神太一がネット上に大学の合格証を掲載した
- 個人情報が特定され、「長谷川〇〇(※1)」という本名や住所などの個人情報が流出
(※1)個人情報であるため、〇〇部分は本記事では伏せています - 八神太一こと長谷川〇〇は、「唐澤△△(※2)」という弁護士に対応を依頼
(※2)個人情報であるため、△△部分は本記事では伏せています - しかし、唐澤△△はネットユーザーの煽りに過度に反応し、騒ぎをさらに大きくしてしまう
さらには、長谷川〇〇の自分語りには誇張や嘘が多かったことから「自分騙り」という単語も生まれました。
「隙あらば自分語り」の使い方
「隙あらば自分語り」は、主には複数人のやりとりの中で使われます。よく使われる表現は、以下の通りです。
- 隙あらば自分語り
- 隙自語
- (隙自語)
「隙あらば自分語り」の使い方
「隙あらば自分語り」の使用例は、以下の通りです。
- A:卵かけご飯のいいレシピない?
- B:めんつゆかけると美味しいよ。ミスコン優勝した元カノが作ってくれた思い出の味
- A:うわ、隙あらば自分語りじゃん。うざ
このような状況をAは「隙あらば自分語り」と形容し、苛立ちを表しています。
「隙自語」の使い方
「隙自語」の使用例は、以下の通りです。
- C:おすすめ勉強法募集スレ! よろしくお願いします!
- D:国語は200字要約やると伸びるよ、ちな俺東大文I余裕で受かった
- E:>>D 隙自語乙
- F:>>D 隙自語〜
掲示板だと同時に大人数でやりとりをしていることも多いため、複数人から「隙自語」もしくは「隙自語乙」というリプライがつくことも多いです。
なお、リプライとは、>>D などという形で特定の人への返信であることを掲示板上で示せる機能です。
「隙自語」がネット用語として定着してから、「隙自語」というツッコミ待ちで過度に誇張した自慢をする流れがある種のじゃれあいとして起こることも増えました。
先ほどのような例では「東大文I余裕で受かった」というハイレベルな自慢を端的にしているので、ツッコミ待ちの可能性が高いです。
本当に無自覚の「隙あらば自分語り」の場合は、もっと冗長なことが多いです。
「(隙自語)」の使い方
「(隙自語)」は、相手に対してではなく、自分へのツッコミとして文末につけます。
もともとネット上で「()」の中にツッコミを自分で書く文化があり、それと「隙自語」が融合しました。
使用例は以下の通りです。
- G:夜景好きなんだけど、誰かいいところ知ってる?
- H:都庁の展望台おすすめだよ、ちなみに元彼に連れてってもらった。元彼は年収2000万円でその後にハイアットリージェンシー東京のスイート泊まってバーで飲んだの♡もちろん全部奢りだしプレゼントももらった♡(隙自語)
- G:>>H また隙を作ってしまったか……
- I:>>H 完璧すぎる隙自語
- J:>>H もはや清々しい
特に以下の一連の流れは、今や一種のテンプレートなやりとりになっています。
- 人が自分語りしやすそうな話題でコメントを募集する
- 過剰な自分語りを含めたコメントをし、最後に(隙自語)とつける
- 「また隙を作ってしまったか……」と返す
隙自語の代表的なネタ:「キリトかなーやっぱりww」
「隙あらば自分語り」には、「キリトかなーやっぱりww」から始まる有名なネタがあります。
これは『ソードアートオンライン』という作品の主人公キリトに自分が似ていると主張するテンプレートです。
全文は以下の通りです。
キリトかなーやっぱりww
自分は思わないんだけど周りにキリトに似てるってよく言われるwww
こないだDQNに絡まれた時も気が付いたら意識無くて周りに人が血だらけで倒れてたしなwww
ちなみに彼女もアスナに似てる(聞いてないw)
実際のツイートには、以下のようなものがあります。
キリトかなーやっぱりww
自分は思わないんだけど周りにキリトに似てるってよく言われるwww
こないだDQNに絡まれた時も気が付いたら意識無くて周りに人が血だらけで倒れてたしなwww
ちなみに彼女もアスナに似てる(聞いてないw)— 隙あらば自分語りbot (@sukizigobot) April 19, 2021
「隙あらば自分語り」「隙自語」「(隙自語)」の使い分け
「隙あらば自分語り」「隙自語」「(隙自語)」の使い分けは、概ね以下の通りです。
隙あらば自分語り | 隙自語 | (隙自語) | |
---|---|---|---|
誰に言うか | 相手 | 相手 | 自分 |
本気かネタか | やや本気 | 半々 | ほぼネタ |
口頭で使うか | 使うことがやや多い | ほぼ使わない | ほぼ使わない |
最初は本気の煽りで使われていたのが、だんだんネットの定番ネタと化し、冗談やネタで使うことが増えました。
それに伴い省略化や他のネット用語との融合が起きたため、緩やかにこのような使い分けが発生しています。
「隙あらば自分語り」は、自分語りをするべき場面で自分語りをしているときには使われません。
たとえば、自己紹介をしなければいけないときや、就活で自己PRを求められているときの自分語りは「隙あらば自分語り」には該当しません。
「隙あらば自分語り」の類義語
「隙あらば自分語り」には以下のような類義語があります。
- 自慢
自分の優れたところを他人に見せびらかすこと - アピール
自分の優れたところを他人に見せつけること - マウンティング
自分の優れたところを使って他人を馬鹿にすること - 衒(てら)い
自分の才能や知識を必要以上にひけらかすこと
「隙あらば自分語り」が嫌われる理由
「隙あらば自分語り」は、ネタでやっているのでない限りは基本的には悪印象です。理由は以下の通りです。
- 割り込まれた側が自分の話をないがしろにされたと感じてしまう
- 聞きたい/話したい本題の話の流れが切られている
- 本題に関係のない他人の話を聞くのはつらい
- 自慢されると腹が立つ
- 揚げ足取りが含まれている場合もある
「隙あらば自分語り」をする人の特徴と対処法
「隙あらば自分語り」をする人は、このような特徴や心理状況にいます。対処法とセットで見ていきましょう。
特徴 | 対処法 |
---|---|
①共感の態度を示したつもりになっている | A.「自分の話をせずに共感する」練習をする B.②〜④の対処法を試す |
②周囲から認められたい | 自分を自分で認められるようになる |
③自己顕示欲が強い | 自分を自分で認められるようになる |
④他人に興味がない | 相手も自分に興味がないことを理解し、自分の順番を待つ気持ちになる |
それぞれ詳しく説明していきます。
特徴①:共感の態度を示したつもりだった
1つめの特徴は、「共感の態度を示したつもりだった」です。
自分では相手に共感して自分の話をしたつもりなのに、相手からしたら「隙あらば自分語り」に見えてしまっていることはよくあります。
この場合は単に円滑なコミュニケーションに慣れていないか、もしくは裏に特徴②〜④などから来る「自分の話を聞いてほしい」という気持ちが隠れている可能性が高いです。
自分の話を聞いてほしいという気持ちがある場合は、それに沿った対処法を取りましょう。
一方、円滑なコミュニケーションに慣れていない場合は、「相手の話に一旦自分のことを入れずに返事をする」という練習をすることで改善する可能性が高いです。
いくつか例をあげます。
- 「昨日、美味しいチョコレートを食べたんだ」
×「私も〇〇ってブランドのチョコレートをこの前食べて〜」
○「へえ、いいじゃん!」「いいね! チョコ美味しいよね」 - 「仕事で上司に怒られちゃってさ」
×「私はこの前褒められたなあ」
○「そっか、大変だったね」「そうなんだ、お疲れ様」 - 「うちの子、なかなかテストでいい点取れなくて」
×「うちの子なんかもっとダメダメなんですよ」
○「そうなんですね」「勉強させるのは難しいですよね」
一度自分の話をせずに返事をしてみる、ということに慣れると、共感していることが伝わりやすいです。
特徴②:周囲から認められたい
2つめの特徴は、「周囲から認められたい」です。
普段からあまり承認を得る機会がなかったり、自分で自分を適切に褒めてあげることが難しいと、自己主張を強くして周囲から認められようとすることがあります。
この場合は、自分で自分を褒めるくせをつけることで、周囲に無理に褒めてもらう必要がなくなり、無理な自慢も減る可能性があります。
特徴③:自己顕示欲が強い
3つめの特徴は、「自己顕示欲が強い」です。
特徴②と似ていますが、もともと自己顕示欲が強い場合もあります。
負けず嫌いだったり、②同様にあまり承認を得る機会がなかったりと、さまざまな要因で自己顕示欲は強くなります。
この場合も、自分で自分を褒めるくせをつけることが有効です。
特徴④:他人に興味がない
4つめの特徴は、「他人に興味がない」です。
これはそもそももともと話している相手や話題に興味がなく、遮って自分の話を始めてしまうパターンです。
ただし、相手も自分に興味があるとは限らないことを見落としていることも多いです。
そのことを意識するだけで、「隙あらば自分語り」は減る可能性が高いです。
「隙あらば自分語り」のまとめ
以上、この記事では「隙あらば自分語り」について解説しました。
読み方 | 隙あらば自分語り(すきあらばじぶんがたり) |
---|---|
意味 | 他人の話に割り込んで自慢すること |
由来 | ハセカラ騒動 |
類義語 | 自慢 アピール マウンティング など |
「隙自語(すきじがた、すきじご)」という略称も覚えておきましょう。ネタとしての用法も覚えておくと、ネット上でのコミュニケーションが楽しくなるかもしれません。