「総合商社」と「専門商社」の違いとは?仕事内容までわかりやすく解説

違いのギモン

就職活動中の大学生に対して様々な媒体などが調査を行う「就職人気ランキング」に、毎回のように上位にランクインするのが「商社業界」です。

「三菱商事」、「伊藤忠商事」、「三井物産」など上位に必ずランクインすると言っても過言ではありません。「商社マン」に憧れている就活生も多いのではないでしょうか?

 

しかし、商社と一言で言っても「総合商社」と「専門商社」の二種類存在します。それぞれどのような違いがあるのか説明できるでしょうか。

この記事では、「総合商社」と「専門商社」の違いについて解説します。

結論:専門商社は特定の商材を扱う

総合商社が扱う商材は特に決まっておらず、商売として成り立つもの、つまり儲かるものであれば何でも扱います。専門商社は特定の商材を専門的に扱い、売り上げ比率の50%以上を特定の商材が占めます。

商社のビジネスについて


総合商社と専門商社の違いについて詳しく解説する前に、なかなかどのようなビジネスを行っているのか分かりづらい商社のビジネス(業務内容)を簡単に説明します。

商社のビジネスが私達に分かりづらい原因の一つに挙げられるのが、商社のビジネスが “B to B” であることです。 “B to B” とは “Business to Business” の略で、簡単に言うと「企業対企業」のビジネスです。

“B to B” の場合、企業同士でしかビジネスを行っていないため、私達が普段生活している中で接する機会はほとんどありません。

 

ちなみに私達、消費者に対してのビジネスを “B to C” といい、 “Business to Consumer” の略です(Consumerは消費者という意味)。また、最近では消費者同士で行うビジネス、 “C to C” というものも生まれています。メルカリなどいい例です。

そんな “B to B” ビジネスを行う商社は、具体的にどのような業務を行っているのかというと、大きく二つに分けることができます。「トレーディング」「事業投資」です。

 

「トレーディング」は、商社が昔から行ってきた従来のビジネスモデルです。国内外のあらゆる商品をつなぐ、いわば仲介ビジネスで、国内外問わずグローバルに展開します。

例えば、日本に、ジュースを作るのに大量のオレンジを必要とする食品メーカーがあったとします。商社はそのメーカーの「需要」に着目し、海外のオレンジを栽培する農家、企業にそのオレンジを買わせてくれないかと営業を行います。

つまり、「オレンジを買いたい」という需要と、「オレンジを売りたい」という供給を掛け合わせる仲介を行います。

商社はそこで発生する手数料(コミッションマージン)を利益としています。あくまでこれも一例ですが、「需要」と「供給」を掛け合わせるという点は「トレーディング」に必ず共通する部分です。

 

しかし、日本でもバブル期頃から各企業、商社を仲介せずとも海外の企業とも取引が可能となる時代が到来し、「商社不要論」という言葉まで登場し、商社はピンチを迎えます。

メーカーも海外に拠点を置くようになったりIT化が進み連絡が取れるようになったりなど、商社が強みとしていた部分がメーカー内で完結してしまうようになったのです。

もちろんそれなりの需要はありましたが、トレーディングビジネスだけでは収益がなかなか上げられず、日本特有と言われるビジネスを展開する「商社」は衰退し、破産していくとも思われていました。

 

そんな状況で登場したのが、「事業投資」というビジネスモデルです。

「事業投資」とは、商社が長年培ってきたビジネスにおける様々なノウハウを生かして、様々な事業に投資を行い、そこから利益を得ることです。

投資の方法は、子会社化する場合もあれば、経営に参画する場合もあります。商社が持つノウハウや人材、情報を最大限活用し、事業を好転させます、商社は、その事業であげられた利益のうち、その事業への出資比率(簡単に言うとどれだけお金を投資したか)に応じて利益を得ます。

 

三菱商事がコンビニエンスストアのローソン、伊藤忠商事がファミリーマート、三井物産がセブンイレブンに事業投資を行っているなどしています。

後ほどそれぞれ詳しく説明はしますが、この「事業投資」というビジネスは基本的には総合商社が強く力を入れていることがほとんどで、専門商社のビジネスは「トレーディング」がメインとなります。総合商社ももちろん現在も強く力を入れて「トレーディング」も行っています。

「総合商社」について詳しく解説


総合商社はトレーディングビジネスで扱う商材に特に決まりも無く、収益をあげられる商材であれば何でも扱います。よく総合商社の扱う商材について「ラーメンからミサイルまで」とまで言われることもあります。

国内外問わず、多種多様な商材を扱う商社はその分、売上高、事業規模も圧倒的に大きく、総合商社は7社しか存在しません。以下が総合商社一覧です。

  • 伊藤忠商事
  • 三菱商事
  • 三井物産
  • 丸紅
  • 住友商事
  • 双日
  • 豊田通商

ちなみに伊藤忠商事から住友商事まで、上から5つの商社のことを「五大商社」、さらにそこに双日と豊田通商を合わせで「七大商社」と呼びます。五大商社ともなると平均年収も1000万円を超え、日本人の平均年収の1.5倍近くとなります。年収の高さも総合商社の人気の一つと言うことができます。

 

また、総合商社の強みとしては、「ビジネスの規模が非常に大きいこと」、「ビジネスが幅広いこと」にあります。

ビジネスの規模は最大のもので何兆円にものぼることもあり、それだけの規模のビジネスを行うだけの力を持っています。大きなビジネスを行いたいと考えている就活生には理想的ともいえる環境です。

また、ビジネスが幅広いこともあり、扱う商材の制約もなく、自由にビジネスを行うことができるのも強みです。また、一つの商材に縛られていない分、そのビジネスで失敗、減収などがあっても他で補てんすることができます。

 

そして、総合商社は前で説明したように、ビジネスとして「事業投資」も行います。この事業投資も国内外問わず、様々な事業に積極的に投資を行っていきます。

「トレーディング」と「事業投資」を合わせて、二輪のビジネスを展開するのが総合商社の特徴です。

「専門商社」について詳しく解説


専門商社は総合商社とは異なり、「トレーディング」で扱う商材は決まっており、売上高の50%以上を特定の商材が占めています。また、行うビジネスもほとんどが「トレーディング」で、「事業投資」の額は少ないです。

それぞれ企業ごとに扱う商材が決まっているため、鉄鋼を扱う商社、食品を扱う商社、洋服を扱う商社など、様々な専門商社が存在し、総合商社とは違って無数とも言える数が存在します。以下、専門商社の抜粋です。

  • JFE商事(鉄鋼商社)
  • 伊藤忠丸紅鉄鋼(鉄鋼商社)
  • 三菱食品(食品商社)
  • 伊藤忠エネクス(エネルギー商社)
  • ワールド(アパレル商社)
  • SCSK(IT商社)

上記をご覧になるとわかる通り、専門商社の中には総合商社の子会社、グループ会社のものもあり、企業名の中に総合商社の名前が入っていますね。

中でも、総合商社二つの企業名を含む、伊藤忠丸紅鉄鋼は、総合商社の伊藤忠商事と丸紅の鉄鋼部門が分社、合併し、専門商社としてできたものです。

 

専門商社の強みは、「特定の分野に精通していること」、「精通している分独自のネットワークを築いていること」、「細やかなサービスが提供できること」です。

特定の商品を扱う専門商社だからこそ、その分野については専門知識も豊富で、動向を押さえることに大きな強みを持っています。動向を押さえられる分、大きな失敗も基本的にはしないと言われています。

また、特定の分野に精通しているため、その分野で築く人脈などのネットワークは非常に強いものがあり、総合商社にも勝るほどです。

そして、専門商社は総合商社ほど、ビジネスの規模が大きくなく、また、その分野での人脈も豊富であるためその分顧客に対して細やかなサービスを提供することができます。

 

売上高、規模、年収で総合商社に劣るため、専門商社は総合商社の下に位置付けられてしまうことも多いですが、以上のような非常に大きな強みを持っています。

また、扱う商材が決まっている分、就職後の配属リスクがありません。総合商社の場合、扱う商材が様々な分、希望通りの配属とならず、鉄鋼を扱いたかったのにエビを扱うことになるといったようなリスクがあります。扱いたい商材が決まっている人は専門商社の方が良いと言うことができます。

まとめ

以上、この記事では、「総合商社」と「専門商社」の違いについて解説しました。

  • 総合商社:幅広い商材を扱う。ビジネスはトレーディングと事業投資の両輪。
  • 専門商社:特定の商材を扱う。ビジネスはトレーディングがメイン。

商社と一言で言っても、総合商社と専門商社が存在し、以上のような違いがあります。私達の生活では直接接することのない業界ですが、日本の産業を支える大事なビジネスを行っています。

就活生には大変人気な業界ですが、総合商社と専門商社どちらにするかは自分が就職活動において何を大切にしたいかによって、変わってくると思います。しっかりとその部分を見極めていくことが大切です。