楠木正成の名言「七生報国」とは?意味や英語訳を例文付きで解説

言葉

「七生報国」とは「何度生まれ変わっても、国の恩に報いる」という意味です。

「七生報国」は現代ではほとんど使われなくなった言葉ですので、意味や使い方がわかりにくいですよね。

「七生報国」は南北朝時代に活躍した武将・楠正成(くすのきまさしげ)の最期の言葉としても有名なので、意味を知っておくと日本史の勉強にもなります。

この記事では、「七生報国」の意味や使い方をわかりやすく解説していきます。

☆「七生報国」をざっくり言うと……

読み方七生報国(しちしょうほうこく)
意味何度生まれ変わっても、国の恩に報いる
語源楠木正成の最期の言葉
類義語一死報国、尽忠報国、報国尽忠など

「七生報国」の意味

七生報国しちしょうほうこく

何度生まれ変わっても、国の恩に報いる

「七生報国」は「何度生まれ変わっても、国の恩に報いること」という意味です。

たとえ死んで何度生まれ変わったとしても、現世と同じく国に尽くすという強い忠誠心を表します。

一般的には「しちしょうほうこく」と読みますが、「しちせいほうこく」と読むこともあります。

ここからは、「七生」と「報国」の2語に分けて解説していきます。

「七生」の意味

七生しちしょう

何度も生まれ変わる

「七生」とは、七回生まれ変わるのではなく、仏教用語で「何度も生まれ変わる」という意味です。

「七生報国」における七は、数が多いことを表す数字です。

「報国」の意味

報国ほうこく

国から受けた恩に報いるために尽くす

「報国」とは、国に対して恩返しをするということを表す言葉です。

「七生報国」の使い方

「七生報国」は、第二次世界大戦時、国民に愛国心を抱かせるために、教育現場や国民のスローガンとして盛んに使われていました

第二次世界大戦で編成された神風特別攻撃隊(しんぷうとくべつこうげきたい)※の隊員は、出撃前に「七生報国」と書かれた鉢巻(はちまき)をしていたとされています。

「七生報国」という言葉は戦争を想起させることがあるので、扱いには注意した方がよい言葉です。

現代では、日常会話やビジネスシーンなどでもほとんど使いません。

神風特別攻撃隊とは

神風特別攻撃隊とは、第二次大戦のとき大日本帝国海軍によって編成された、自爆攻撃を行う部隊のことです。

省略して「特攻隊(とっこうたい)」ともいいます。

「七生報国」の例文

「七生報国」は第二次世界大戦を題材にした小説などでよく使われています。

「七生報国」の例文には以下のようなものがあります。

  1. そのため「七生報国」は、日本国民の血液にひそむ大悲願なのであります。
    [出典:岸田國士『国防と文化』]
  2. 愛国という語がなまごろしになっているように、正成といえば“七生報国”もおもい出されよう。
    [出典:吉川英治『随筆 私本太平記』]
  3. それはとにかく、正成のいう七生報国の精神は、千古不滅、彼の本領を物語っている。
    [出典:菊池寛『日本武将譚』]
  4. しかし、その考え方が七生報国の世界を生んだことは、年配の人はよくおわかりであろう。
    [出典:養老孟司『涼しい脳味噌』]
  5. 暢彦(のぶひこ)は学校で最近「七生報国」という言葉を教わって来たので、しきりにそれを口にする。私も「七生報国」と書いて、玄関の上にかかげた。
    [出典:海野十三『海野十三敗戦日記』]
「何度でも生まれ変わる」という意味ではない

「七生報国」は「何度生まれ変わっても、国の恩に報いたい」と思うほど強い忠誠心を表す言葉です。

そのため、「どれだけ悪事をしても何度でも生まれ変われる」という意味で使うのは誤用です。

「七生報国」の語源

「七生報国」の語源は、楠木正成の最期の言葉です

楠木正成は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて、生涯のほとんどを後醍醐(ごだいご)天皇に捧げた武将です。

南北朝の戦いで弟と息子とともに自害した際に、以下のように言ったとされます。

七度人として生まれ変わり、朝敵を誅(ちゅう)して南朝天皇家に報(むく)いん
(何度生まれ変わっても、国の敵を倒して国のために後醍醐天皇に尽くそう。)

この言葉が「七生報国」となり、「何度生まれ変わっても、国の恩に報いること」という意味になりました。

「天皇陛下万歳、七生報国」とは

「天皇陛下万歳、七生報国」とは、民族主義者・反共主義者の山口二矢(おとや)が遺書に書いた言葉です

天皇陛下万歳、七生報国
(天皇陛下のために、何度生まれ変わっても、国の恩に報いる)

1960年10月、当時17歳だった山口は、日本社会党の党首・浅沼稲次郎氏を政党代表放送の演説中に刃物で殺害しました。

事件後、山口は実行犯としてすぐに逮捕され、東京少年鑑別所で「後悔はしていない。自ら償いをする」と述べました。

しかし後日、「天皇陛下万歳、七生報国」という遺書を残し、自らの命を絶ちました。

「七生報国」の類義語

「七生報国」には以下のような類義語があります。

  • 一死報国(いっしほうこく)
    命をかけて、国の恩に報いること
  • 尽忠報国(じんちゅうほうこく)
    忠義を尽くし、国から受けた恩に報いること
  • 報国尽忠(ほうこくじんちゅう)
    忠義を尽くし、国から受けた恩に報いること
  • 忠君愛国(ちゅうくんあいこく)
    君主に対して忠節を尽くし、国を愛すること
  • 八紘一宇(はっこういちう)
    天下を一つの家のようにすること
  • 滅私奉公(めっしほうこく)
    私利私欲を捨てて、主人や国のために忠誠を尽くすこと
  • 蹇蹇匪躬(けんけんひきゅう)
    自身のことはあとまわしにして、主君に尽くすこと

「七生報国」のまとめ

以上、この記事では「七生報国」について解説しました。

読み方七生報国(しちしょうほうこく)
意味何度生まれ変わっても、国の恩に報いる
語源楠木正成の最期の言葉
類義語一死報国、尽忠報国、報国尽忠など

「七生報国」は戦争を連想することもある言葉なので、使い方には注意が必要ですが、日本人として知っておきたい言葉ですね。

ABOUT US

まや
自称、誤字キラー。 Web記事でも誤字脱字を見逃しません。言葉が大好きです。 大学では言葉遊びについて研究していました。マイブームは日本語ラップを聴くこと。