セレンディピティの意味とは?具体例や由来、英語訳まで詳しく

言葉

セレンディピティとは「思いがけない幸福を手に入れる力」という意味です。

日常的に使う言葉ではないため、「聞いたことはあるけれど、正確な意味は知らない」という方が多いのではないでしょうか。

また、「具体的にどんなシチュエーションを “セレンディピティ” と指すの?」と疑問に思う方も多いはずです。

そこで、この記事では、セレンディピティの意味や具体例、使い方、由来などについて詳しく解説します。

☆「セレンディピティ」をざっくり言うと……

読み方セレンディピティ
意味思いがけない幸福を手に入れる力
具体例「万有引力の法則」の発見
ペニシリンの発見
ポストイットの開発 など
由来イギリスの小説家による造語
類義語シンクロニシティ
対義語ゼンブラニティ
英語訳serendipity

「セレンディピティ」の意味

セレンディピティ

思いがけない幸福を手に入れる力

例:彼女のあの発見は、まさにセレンディピティだ。

セレンディピティとは、予期せぬ幸福を偶然手に入れる力です。

セレンディピティによる幸運は、「ぼーっとしていたら偶然いいことが起きた」というようなものではありません。

下記のような要素が積み重なって、ある日突然訪れるものなのです。

  • たくさんのチャレンジ
  • 観察力
  • 経験から意味を見出す知識…など

「セレンディピティ」のメリット

セレンディピティを得ると、以下のようなメリットがうまれます。

  • 今まで意識していなかった発見を得る
  • 課題点の解決策が浮かぶ
  • 新たな発明が生まれる

このように、思いがけないことと出会うことで、ひらめきが生まれるのです。

近年は、固定観念や自分の価値観だけにとらわれずに物事を判断することが求められています。

そのため、セレンディピティを持っていることは非常に重要です。

「セレンディピティ」の具体例


セレンディピティから生まれた発見や商品の例として、下記のようなものがあります。

  • 「万有引力の法則」の発見
  • ペニシリンの発見
  • ポストイットの開発
  • コカ・コーラの開発
  • カッターの開発

1つずつ見ていきましょう。

①「万有引力の法則」の発見

「万有引力の法則」は、セレンディピティによって発見されました。

ニュートンはある日、木からリンゴが落ちるのを見ました。

この偶然の出来事から発想が生まれ、「万有引力の法則」を見出したのです。

つまり、ニュートンは、何気ない現象から着想を得て、画期的な法則を偶然手に入れたのです。

②ペニシリンの発見

抗生物質のペニシリンも、セレンディピティによって発見されたものです。

アレクサンダー・フレミングは、もともとぶどう球菌の研究をしていましたが、細菌を培養するべきで場所に、誤って青カビを発生させてしまいました。

すると、青カビの周りだけは細菌が繁殖しないことに気づきます。

この出来事がきっかけで、そこから抗生物質のペニシリンを発明し、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 

つまり、フレミングは、自分の失敗から偶然、新しい発明を得ることができたのです。

③ポストイットの開発

ポストイットは、セレンディピティがきっかけとなって開発された商品として有名です。

↑ポストイット
[出典:Amazon]

ポストイットのメーカー・3Mに、スペンサー・シルバー氏という研究員がいました。

シルバー氏は強力な接着剤を作ろうとしていましたが、開発に失敗し、粘着力が弱い粘着剤が出来上がってしまいます。

しかし、同僚の研究員が、この失敗作を見て、「ある程度の粘着力があるのにも関わらず、簡単に剥がすことができる」という独特なメリットに気づきました。

そして、「この粘着剤が、付箋(ふせん)として使えるのではないか」ということになり、ポストイットが生まれたのです。

 

このように、シルバー氏は、失敗作を同僚に見せたことで、新しい商品化につながり、偶然の幸福を手に入れることができました。

④コカ・コーラの開発

コカ・コーラも、セレンディピティによって生まれた商品です。

↑コカ・コーラ
[出典:Amazon]

アメリカにはもともと、薬剤師のペンバートン博士が開発した「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」というお酒がありました。

しかし、19世紀末に禁酒法ができた結果、「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」は販売中止となりました。

 

その後、ペンバートン博士はある日、「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」のワインに、誤って炭酸水を入れてしまいます。

すると、出来上がった飲み物は思いがけず美味しい味となりました。

このことから炭酸飲料のコカ・コーラの前身が生まれ、のちに商品化されたのです。

このように、コカ・コーラは、「アルコール飲料を売ることができなくなった」という状況のなか、偶然生まれたのです。

⑤カッターの開発

カッターも、セレンディピティがきっかけで開発されました。

カッターは、1956年に日本で開発されました。

当時、人々は紙を切る道具としてカミソリを使っていました。

しかし、カミソリは刃が切れなくなると使えなくなるため、古くなったものはすぐに捨てて、新しいものを買わなければなりませんでした。

 

カッターの発明者である岡田良男氏は、カミソリがすぐに捨てられてしまうことを「もったいない」と感じていました。

彼はふと、板チョコのパキパキと折れる様子が頭に浮かびます。

そこで、「板チョコのように刃に切れ込みを入れておいて、簡単に刃が折れるようにすれば何度も使える」とひらめき、カッターを開発したのです。

「セレンディピティ」の使い方


セレンディピティは、文や会話のなかで、以下のように使うことができます。

  1. 彼女のあの発見は、まさにセレンディピティだ。
  2. 科学はセレンディピティのおかげで発展してきたと言っていいだろう。
  3. 昨日、提出課題のレポートのテーマを勘違いして書き始めてしまったんだ。でも、そのおかげで、来年の卒論のテーマ案が思い浮かんだよ。これってセレンディピティだよね。
  4. たまたま話した人からアイディアの着想を得たり、偶然の怪我から新しい発明が浮かんだりと、最近はセレンディピティを感じることが多いです。
  5. 本を買うなら、本屋さんに足を運ぶのがおすすめだよ。思いがけない本が目に入ることも多いし、セレンディピティがあるから。

セレンディピティには決まった言い回しはないため、自由なかたちで使われています。

「セレンディピティ」を使ったビジネス用語

ビジネスシーンでは、セレンディピティを含んだ専門用語があります。

そのため、セレンディピティは、そのようなビジネス用語の一部として使うこともあるのです。

代表的な言葉として、以下の2つを紹介します。

ビジネス用語
  • セレンディピティ消費
    偶然の出会いを求める購買行動
    例:福袋やミステリツアーなど、予期せぬことを体験できるもの
  • セレンディピティ・マネジメント
    セレンディピティを利用して、価値観にとらわれずに物事をロジカルに判断し、ビジネスに活用すること

「セレンディピティ」を使ったタイトル

セレンディピティは、作品のタイトルにもよく使われます。

  • 映画『セレンディピティ』
    2001年に公開されたアメリカの映画
    偶然出会った男女のラブストーリー
  • 書籍『乱読のセレンディピティ』
    言語学者・外山滋比古による自己啓発本。
    本を手当たり次第に読んでいくことで、思わぬ発見と出会えるということを説く

「セレンディピティ」の由来

セレンディピティは、英語の “serendipity” をカタカナのかたちにしたものです。

“serendipity” は、イギリスのホレス・ウォルポール氏という小説家が1754年に作り出した造語です。

ウォルポール氏は、子どもの頃に『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』という童話を読んだことがありました。

あらすじ
セレンディップ(現在のスリランカ)にジャファールという王様がいました。

ジャファールは優れた教師を雇って、3人の王子に教育を受けさせます。王子たちがしっかりと知識を身につけたことを確認すると、旅立ちを命じました。

王子たちは、学んだ知識を活かしながら、協力して旅を進めていきます。

この童話に登場する王子たちは、旅の道中で思いがけないことと出会い、新しい物事を発見していきます。

このことをふまえてウォルポール氏は、自分が何かを発見した際、タイトルの「セレンディップ」をもじって、友人への手紙で以下のように書きました。

この私の発見は、私に言わせればまさに「セレンディピティ」です。

この「セレンディピティ」という造語が浸透し、日本でもカタカナ語として定着したのです。

“serendipity” の和訳

“serendipity” は、発音をそのままカタカナにして「セレンディピティ」と訳されるのが一般的です。

他にも、下記のように訳されることがあります。

  • セレンディーピティー
  • 偶察力
  • 徴候(ちょうこう)的知

「セレンディピティ」の類義語

セレンディピティには以下のような類義語があります。

  • シンクロニシティ
    関係のない2つの出来事に、思いがけないつながりが見つかること

シンクロニシティは、以下のように、セレンディピティとは意味が少し異なります。

  • セレンディピティ
    偶然と巡り合う “能力・才能” を指す
  • シンクロニシティ
    “能力・才能” ではなく、単に “偶然と一致する現象” のみを表す

「シンクロニシティ」の具体例

シンクロニシティとは、関係のない2つの出来事に、思いがけないつながりが見つかることです。

具体例として、以下のようなことが挙げられます。

  1. Aさんが友人のBさんのことを思い浮かべ、「Bさんに連絡しようかな」と思う
  2. その瞬間に、BさんからAさんに連絡が届く
  3. つまり、2人の意識と行動が偶然揃った

このように、シンクロニシティは、2つの物事が偶然一致することを表すのです。

ちなみに、シンクロニシティは、心理学者のカール・グスタフ・ユングが提唱した用語です。

「セレンディピティ」の対義語


セレンディピティには以下のような対義語があります。

  • ゼンブラニティ
    予想外の出会いがないこと

ゼンブラニティは、イギリスの小説『アルマジロ』のストーリーに由来する言葉です。

『アルマジロ』には、「ゼンブラ」という名前の土地が登場します。

ゼンブラは、収穫物が実らない冷え切った場所です。

この「ゼンブラ」という名称から派生して、「予定調和で、ときめくような新しい出会いがない」という意味の「ゼンブラニティ」が生まれました。

 

ちなみに、小説『アルマジロ』の作者は、ウィリアム・ボイド氏です。ボイド氏は、『ジェームズ・ボンド』シリーズの脚本を手がけた人物としても有名です。

「セレンディピティ」の英語訳

セレンディピティを英語に訳すと、次のような表現になります。

serendipity

幸せな偶然に出会い、予想外のものを発見すること

例文を見てみましょう。

例文
  • This invention is a fruit of serendipity.
    (この発明は幸せな偶然の結果だ。)
  • I happened to meet my friend there by sheer serendipity.
    (私はまさに偶然の力によって、そこで友人とたまたま会うことができた。)

「セレンディピティ」を得づらい近年


近年は、セレンディピティを得づらい時代になりつつあります。

下記のような要因があるからです。

  1. インターネットの発達
  2. 新型コロナによる外出自粛の習慣

それぞれの要因について解説します。

要因①インターネットの発達

セレンディピティと出会いづらくなっている要因の1つ目は、インターネットの発達です。

インターネットには情報がたくさんありますが、履歴などから検索予想が表示されることが多いため、自分が興味のある情報ばかりに囲まれる生活になりがちです。

SNSでも、自分がフォローしている人(つまり、自分が共感できる考え方の人)の投稿が目に入りやすいようになっています。

このように、インターネットの発達により、「思ってもみなかった発見」や「自分が普段接しないような物事・人物」と出会うのが難しくなっているのです。

要因②新型コロナによる外出自粛の習慣

セレンディピティと出会いづらくなっている要因の2つ目は、新型コロナによる外出自粛の習慣です。

新型コロナウイルスの感染拡大で、濃厚接触を防ぐため、人々はできるだけ自宅で過ごすようになりました。

自宅で思いがけない発見があることもありますが、外に出たほうが、劇的な出会いが多いです。

そのため、近年の「ステイホーム」の習慣は、セレンディピティを妨げているのです。

「セレンディピティ」を得るためのコツ


セレンディピティを得るためには、下記の点を心がけましょう。

  • 他の人と積極的に会話する
    自分が思ってもみなかったことを指摘してもらえる
  • 新しい挑戦をする
    行動量が増えると、偶然との出会いも増える
  • 物事をよく観察する
    偶然に何かを発見する力が身につく
  • 知識を身につける
    知識を学ぶことで、身の回りの出来事から気づきを得ることができる
  • 自分の所持金や能力、環境などの前提を無視して思考する
    斬新で思いがけないアイディアに出会える

セレンディピディによる幸せは偶然に起きるものですが、行動や努力をしなければなかなか得られないものです。

そのため、いつかセレンディピティが自分のもとに来るように、日頃から積極的に経験を増やすことが大切です。

また、何気ない出来事から意味や発見を見いだすためには、知識や観察力を身につけることも重要です。

「セレンディピティ」のまとめ

以上、この記事ではセレンディピティについて解説しました。

読み方セレンディピティ
意味思いがけない幸福を手に入れる力
具体例「万有引力の法則」の発見
ペニシリンの発見
ポストイットの開発 など
由来イギリスの小説家による造語
類義語シンクロニシティ
対義語ゼンブラニティ
英語訳serendipity

セレンディピティによる幸せを得ることができるよう、努力を忘れないようにしましょう。