心理学用語「自己開示」の意味とは?恋愛や仕事における例も解説

言葉

自己開示とは「自分自身に関する情報を、何の意図も持たずに他者に伝えること」という意味です。

自己開示は心理学用語であるため、意味を知らない人も多いですよね。

自己開示は日常生活にも活用できる言葉であるため、この記事で詳しく解説します。

「自己開示」の意味

自己開示じこかいじ
自分自身に関する情報を、何の意図も持たずに他者に伝えること
例:信用されるために自己開示すべきだ。

自己開示とは、自らの個人的な情報を他者に知らせるという意味の心理学用語です。

特に、「こう思われたい」というような意図を持たずにありのままの情報を開示することを表す言葉です。

ありのままの自分を伝える自己開示は、他者とのコミュニケーションをよりよくするのに役立ちます。

自己開示は言葉で伝えること

自己開示は、自分の情報を他者に開示することです。

それは語りや文章などの言語を介して伝えることを指します。

つまり、言語外の目線やジェスチャーなどで伝えることは自己開示に含まれないのです。

自己開示とは、自分に関するプライベートな情報を正直に相手に話すことを表しますが、プライベートな内容とは、以下のようにさまざまなものを含みます。

  • 生い立ち
  • 価値観
  • 主義・思想
  • 趣味
  • 過去の失敗

「この内容は自己開示だが、あの内容は自己開示にならない」などの厳密な定義はありません。

「自己開示」の効果


自己開示で相手からの信頼が得られたり、コミュニケーションがうまくいく仕組みを説明します。

  • 自分が相手を信頼しているアピールになる
  • 「自己開示の返報性」が相乗効果を生む

自分が相手を信頼しているアピールになる

プライベートな情報であればあるほど、その情報を開示することは「心から信頼している相手に行うものである」という感覚は誰しもが持っています。

この常識によって、自己開示をすることで相手に「私はあなたを信頼しています」という気持ちを伝えることができるのです。

この積み重ねから、相手との距離感を縮めることができるのです。

「自己開示の返報性」が相乗効果を生む

人間には、自己開示の返報性の心理があります。

自己開示の返報性とは、個人的な情報を相手に伝えた時、相手もそれに反応して自分のことを話しやすくなるという心理現象のことです。

この原理によって、自己開示をすると、相手も自分のプライベートな情報を話してくれることがあるのです。

このように、個人的な打ち明け話をお互いに繰り返すことによって、関係性を深めることができるのです。

「自己開示」の具体例

また、自己開示は以下のような場面で活用できます。

  • ビジネス
  • 恋愛
  • カウンセリング

それぞれの場面における自己開示の活用を見ていきましょう。

ビジネスにおける「自己開示」

例えば、保険のセールスの営業を行っている際に自己開示は活用できます。

生命保険などに加入するのならば、信頼できる人に担当してもらって加入したいと思うのが人間の心理です。

そのため、営業に回る際に、いきなり保険の重要性や営業トークを始めるのではなく、まずはセールスマンからの自己開示を行うとよいのです。

これによって、自分が相手のことを信用しているということを伝えることができ、相手の警戒心を解くことができるのです。

恋愛における「自己開示」

恋愛においても自己開示が活用できます。

例えば、新しくできた恋人に対して自分の幼少期の出来事や家族のことなどを話します。

 

プライベートな情報を話すことで「あなたのことを信用していますよ」というアピールになります。

その上、相手も自分のことを話してくれる確率がぐっと高まります。

恋人との関係性を深めていく上で、自己開示はとても重要なのです。

カウンセリングにおける「自己開示」

カウンセリングにおいても自己開示はよく活用されます。

カウンセリングでは、患者とカウンセラーという関係性があります。

しかし、患者が一方的に「自分の辛かった思い出や気持ちを素直に話せ」と言われても、急には話しにくいものです。

 

そのため、まずはカウンセラーが患者に対して、自分の過去のできごとや生い立ちなどを話すことがあるのです。

これによって、患者の方も、隠し事をせずに自分のことを話しやすくなります。

「自己開示」の逆利用

自己開示は相手との信頼関係を構築するのに役立ちます。

この原理を逆に利用して、相手との距離を取るために用いることができます。

関係を解消したい相手に対して過剰な自己開示をしてしまうと、相手が距離感を勘違いしてしまうことがあります。

そのため、意図的に自分の情報を開示しすぎないことで、相手との距離をとることができます。

 

たとえば恋愛の終わりに、別れたくなった原因をひとつひとつ細かく伝えて、自分の気持ちも詳細に正直に話すことは自己開示になってしまいます。

そのため、理由をあえて簡略化して「なんとなく気持ちが冷めたので別れたい」と告げるのが自己開示の逆の利用法になります。

「自己開示」の注意点


自己開示の注意点には以下のようなものがあります。

  • 情報を悪用される可能性がある
  • 一方的な自己開示は逆効果
  • 情報の受け取られ方はコントロールできない

情報を悪用される可能性がある

信頼できない相手に対して、自分のプライベートな情報を開示することにはリスクがあります。

自分の個人的な情報を不特定多数の人に言いふらされたり、情報を悪用されたりすることがあるのです。

特に自分のプロフィールや家族の情報などは、その情報が悪い目的に利用されるリスクが伴います。

 

また、お互いが信頼関係で結ばれている時だとしても、信頼関係が崩れた時にプライベートな情報が相手を傷つける手段として使われてしまうこともあります。

相手と、その相手との関係性を見極めながら、開示する内容を選んでいく必要があります。

一方的な自己開示は逆効果

相手の気持ちや都合を考えずに、自分の話だけを一方的に行うというような自己開示は逆効果です。

たとえば、出会って間もない人から極めて個人的なことを突然切り出されては、反応に困ってしまいますよね。

 

自己開示する内容が話しにくいものであればあるほど、相手へ伝わる信頼の度合は大きいです。

だからと言って、関係性が浅いうちから何でもかんでも自己開示をすればいいわけではありません。

相手との関係性を考えながら、適切なタイミングで行うことで、関係性を発展させられるのです。

情報の受け取られ方はコントロールできない

自己開示は、「こう見られたい」というような意図は持たずに正直にありのままを話すことです。

しかし、内容をまっすぐに伝えても、受け手側の解釈によって、自分が予想していたものと違う形で情報が受け取られることがあります。

このように、必ずしも自分が考えた通りに情報が伝わるわけではないという点に注意が必要です。

「自己開示」の提唱者


自己開示は、心理学者で精神医学者のシドニー・M.ジュラードが、1971年に提唱しました。

その後、日本でも著書が翻訳され、自己開示という言葉と概念が広がりました。

「自己開示」の類議語


自己開示には、以下のような類義語があります。

  • 自己呈示(じこていじ)
    自分をより良くみせようとアピールすること

「自己開示」と「自己呈示」の違い

自己開示とは、自分の情報を意図を持たずに相手に伝えることです。

一方で自己呈示は、自分の印象を作り上げるために、どのような情報を公開するかを選ぶのです。

そのため、相手に認められたり、すごいと思われることなどを目的にした情報開示は自己呈示になります。

「自己開示」の対義語


自己開示には、以下のような対義語があります。

  • 自己韜晦(じことうかい)
    すぐれた才能などを人に気付かれないように包み隠すこと

「自己開示」の英語訳


自己開示を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • self disclosure
    (自己開示)

「自己開示」のテクニック


自己開示には、以下のようなテクニックがあります。

  1. 雑談から始める
  2. 弱みを見せる
  3. 自己開示を適切な度合いで行う
  4. ジョハリの窓で自己分析する

テクニック➀:雑談から始める

自己開示のテクニックとして、雑談から会話を始めるというものがあります。

初対面の相手に、いきなり自分の情報を伝えるのは唐突すぎる場面があるでしょう。

そのため、雑談から初めて、会話の中で自分のことを話せるタイミングを見つけて自己開示を行うことが適切です。

テクニック➁:弱みを見せる

自己開示のテクニックとして、弱みを見せるというものがあります。

自分から弱みを見せることで、相手からの信頼感を得やすくなるのです。

テクニック➂:自己開示を適切な度合いで行う

注意点の項でも述べたように、自己開示は適切な度合いで行う必要があります。

初対面のひとにいきなり、重い話やプライベートすぎる話をしすぎると相手が引いてしまうことがあります。

そのため、関係性に合わせた自己開示を行う必要があるのです。

テクニック➃:ジョハリの窓で自己分析する

自己開示をしたいものの、自分がどのような人間かわからないという場合もあるでしょう。

その際に、ジョハリの窓を活用して自己分析を行うというテクニックがあります。

ジョハリの窓とは、4つの「窓」ごとに自分の性質を分析するフレームワークです。

  • 解放の窓
    自分も他者も知っている、自分の姿
  • 盲点の窓
    自分は知らないけれど他者は知っている、自分の姿
  • 秘密の窓
    自分では知っているが他者には見せていない、自分の姿
  • 未知の窓
    自分も他人もまだ知らない、自分の姿

この中の、秘密の窓の部分を他者に開示することで、自己開示を行うことがあります。

「自己開示」のまとめ

以上、この記事では自己開示について解説しました。

読み方自己開示(じこかいじ)
意味自分自身に関する情報を、何の意図も持たずに他者に伝えること
提唱者心理学者で精神医学者のシドニー・M.ジュラード
類義語自己呈示
対義語自己韜晦
英語訳self disclosure(自己開示)

自己開示はさまざまな場面で活用できることがわかりましたね。