「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の違いとは?わかりやすく解説

違いのギモン

世界遺産に登録されるということは、現地の人にとっては、観光業が発展するチャンスです。しかし、観光客が集まることは、遺産が汚されたり、環境汚染を招いたりする原因にもなります。

長い歴史や貴重な価値が詰まった世界遺産は、人類みんなで守るべきですよね。世界遺産にはどんな種類があるか知っていますか?

そこで、今回は「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の違いについて解説します。

結論:「世界自然遺産」は自然なもの、「世界文化遺産」は人の手で作られたもの

  • 世界自然遺産人類にとって重要な地形や生物多様性、景観美をもつ土地を対象とします。
  • 世界文化遺産歴史、芸術、研究の上で重要な建造物や遺跡、石碑(せきひ)を対象とします。

そもそも世界遺産とは

世界遺産は、ユネスコ(UNESCO)という国際連合の専門機関によって認定されます。ユネスコは、国民の教育・科学・文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とする機関です。

世界遺産を認定する根本には、「人類共通の宝を守ろう」という考え方があります。これが広まったきっかけは、1960年代にユネスコがダム建設によって水没する危機にあったヌビア遺跡を救済するキャンペーンを行ったことです。

その後、1972年のUNESCO総会で、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約が規定されました。そして、1978年に世界で初めて、ガラパゴス諸島など12件が世界遺産に認定されました。2017年の時点では、世界遺産は1073件登録されています。

 

世界遺産には、3つの種類があります。それは、世界自然遺産、世界文化遺産、そして世界複合遺産です。世界複合遺産は、自然遺産と文化遺産の両方の要素をもった遺産が認定されます。

また、世界遺産は、人の手が加えられたりしてその希少価値が欠けると、認定地域が縮小されたり、登録を抹消されたりすることもあります。

「世界自然遺産」をもっと詳しく


世界自然遺産は、人類全体にとって重要な地形や生物多様性、景観美をもつ土地を対象に、認定し、保護をします。

認定する基準は4つあります。

  1. 自然景観:珍しい自然的な美しさや美的な要素をもっていて、かつ優れている自然現象又は地域
  2. 地形:生命の進化や、地形の形成において重要で、かつ地球の歴史の主要な段階を代表する珍しい例であるもの
  3. 生態系:あらゆる動植物の進化や発展において、現在も進行中で、かつ重要な生態学的・生物学的な経過を示す珍しい例であるもの
  4. 生息地:多様性保全の観点から重要な生物の生息・生育地があるもの。又は、絶滅の恐れがある種がいる場所

①を満たしたタンザニアのキリマンジャロ国立公園は、75万年ほど前からの火山活動で作られた美しい山並みが評価されました。

②を満たしたエジプトのワディアルヒタンは、もともとは海の底だったものが海面の低下で4000万年前に陸地化し、クジラ等のの化石が砂漠に点在しています。

③を満たした青森県の白神山地は、人為の影響をほとんど受けていない世界最大級の原生的なブナ林が分布する山地帯で、この中に多種多様な動植物が生息しています。

④を満たしたオカピ野生生物保護区には、野生で3万頭しかいないオカピ5000頭が生息しています。オカピとは、20世紀に初めて発見された顔がキリン、体がシマウマに似ている動物のことです。

世界自然遺産に認定されるためには、以上の基準のうち1つ以上を満たす必要があります。オーストラリアのグレートバリアリーフなど、多くの世界自然遺産が項目4つすべてを満たしています。

自然遺産は、各国からの推薦をもとに、NGO団体(企業や政党と関係をもたない国際協力組織)であるIUCN(国際自然保護連合)が現地調査を行い、評価をします。

この報告書をもとに、毎年1度、世界遺産委員会で登録の可否が決定されます。

「世界文化遺産」をもっと詳しく


世界文化遺産は、歴史・芸術・研究の上で重要な建造物や遺跡、石碑を対象に認定し、保護するものです。

認定する基準は6つあります。

  1. 人類の傑作:人間の創造的な才能を表現する傑作であるもの
  2. 文化交流:一定の期間、又は世界のある文化圏において、建築・技術・記念碑・街並み・景観デザインの発展において、人類の価値の重要な交流を示しているもの
  3. 文化・文明の証拠:現存する、又はすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいはまれな証拠を示しているもの
  4. 重要な建築物や景観:人類の歴史の重要な段階を示す建築物、建築様式、技術集合体、または景観の珍しい例
  5. 環境利用:ある文化(ある複数の文化)や人類の環境的相互作用を特徴づける人類の伝統的集落や土地や海洋利用の顕著な例であるもの。特に、回復が困難で、存続が危うい状態にあるもの
  6. 出来事・伝統:顕著で普遍的な価値を有する出来事や現在存続する伝統で、思想・信仰・芸術作品・あるいは文学作品と直接に、または実質的に関連があるもの

①を満たしたインドのタージマハルは、建物も庭園もすべて緻密な計算に基づいて完璧に対称であり、その優美さが評価されました。

②を満たしたドイツのシュパイヤー大聖堂は、世界最大のロマネスク様式の建物であり、当時の神聖ローマ皇帝や、その後の神聖ローマ皇帝、ドイツ王、そしてその妻たちも埋葬されました。

③を満たしたスペインのヘラクレスの塔は、ギリシア神話の半神半人の英雄を模したといわれる巨大な石像です。これは港湾都市であるラ・コルーニャのシンボルにもなっています。

④を満たしたデンマークのクロンボー城は、城の一角が灯台となっていて、頑丈な城壁と堀があり、海に向かって砲台が並んでいます。煉瓦(れんが)造りの重厚な姿は北欧ルネサンス様式の傑作と言われています。

⑤を満たしたノルウェーのヴェーガ群島は、ケワタガモ産業(ケワタガモの羽を採取するという伝統産業)と共に展開したヴェーガ群島の歴史、そして都市の景観の発展が文化的価値を認められました。

⑥を満たした広島の原爆ドームは、時代を超えて、核兵器が世界からなくなることや平和の大切さを訴えつづける人類共通の記念碑であると言えます。

世界文化遺産に認定されるためには、以上の基準のうち1つ以上を満たす必要があります。複数項目が適用される文化遺産もありますが、項目6つすべてを満たしている文化遺産ははほとんどありません。

文化遺産は、各国からの推薦をもとに、NGO団体であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)が現地調査を行い、評価をします。

この報告書をもとに、毎年1度、世界遺産委員会で登録の可否が決定されます。

まとめ

以上、この記事では、「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の違いについて解説しました。

  • 世界自然遺産:人類に重要な地形や生物多様性、景観美をもつ土地を対象に認定・保護
  • 世界文化遺産:歴史、芸術、研究の上で重要な建造物や遺跡、碑を対象に、認定・保護
世界自然遺産と世界文化遺産には、人の手で作られたかどうかとういう違いがあることがわかりました。人の手と、自然が融合したものが世界複合遺産だといえます。

普段の生活から飛び出して、世界の美しさに目を向けることもとても重要ですね。