シームレスとは「継ぎ目や途切れがないこと・途切れずなめらかであること」という意味です。
衣類に関してだけではなく、ビジネスにおいても重要な言葉です。
しかし、さまざまな分野でも使われるので、専門的な意味を知らない人も多いですよね。
この記事では、複数の分野におけるシームレスの意味を詳しく説明します。
☆「シームレス」をざっくり言うと……
英語表記 | シームレス(seamless) |
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意味 | 継ぎ目や途切れがないこと・途切れずなめらかであること |
語源 | 「縫い目がない」という意味の英単語 “seamless” |
類義語 | 混然一体となって |
対義語 | 垣根がある 継ぎ目がある |
このページの目次
「シームレス」の意味
継ぎ目や途切れがないこと・途切れずなめらかであること
例:弊社は、シームレスなサービスを心がけています。
もともとシームレスは、布などに縫い目がなく、ひとつづきであることを表す言葉です。
ここから、途切れておらずなめらかであることを表すようにもなりました。
そして、布などの物理的なものがひとつづきであることだけでなく、形がない異なるサービスや交通手段間で垣根がない状態を表す意味を持つようにもなりました。
現在では、さまざまな業界で「複数のシステムやサービスを、境目を意識せずに利用できる」という意味で使われています。
まずは、一般的なビジネスシーンで使われるシームレスの意味を見ていきましょう。
ビジネスにおける「シームレス」の意味
ビジネスシーンでのシームレスは、機能やサービスが一貫していて利用者にとってストレスが少ないことを表すために使われます。
複数の要素を状況に応じて使い分けたり切り替えたりしなければならないときに自動的に切り替えや引き継ぎを行ってくれたり、利用者が使い分けを意識しなくてもよかったりすることをシームレスと言います。
また、ひとつの会社の中の部署間などで連携が円滑に取れており、業務が滞りなく進んでいる状態もシームレスと表現できます。
業界ごとの「シームレス」の意味
シームレスは、以下のような業界で使われます。
- IT業界
- 交通業界
- 建築業界
- ファッション業界
- 医療業界
- ゲーム業界
- 小売り業界
業界によって若干意味が異なりますので、それぞれの意味を見ていきましょう。
業界➀:IT業界
IT業界において「シームレス」は、複数のシステムやソフトウェアを使う場合に、利用者がそれらの違いを感じずに一体的に使えることを意味します。
また、サービスやソフトウェア、システムを切り替える際にそれらの違いや垣根が少なく、ひとつづきの流れで使うことができる状態のことです。
異なるサービス間で、操作方法などが統一されており、利用者システムの切り替えを意識しなくても済むこともシームレスに当たります。
スマートフォンでWi-Fi接続と携帯データ通信サービスの切り替えが、自動的に行われることがシームレスです。
この機能によって、Wi-Fi接続が切れたときに、わざわざデータ通信サービスに切り替える作業を行わなくてもいいのです。
業界➁:交通業界
交通業界においてシームレスは、「異なる交通手段同士の接続をよくしたり、利用時の不便さを解消すること」を表します。
電車からバス、バスから飛行機などの交通手段を切り替える際の負担が少ない状態がシームレスです。
また、駅構内のバリアフリー化や、一箇所の駅にいくつかの沿線や電鉄が重なっていることなども、利用者の負担が少なくなっているという点でシームレスだと言えるでしょう。
このような「移動を便利にすること」「交通機関同士の接続をよくすること」が交通における「シームレス」です。
例えば、現在の交通システムでは、異なる鉄道会社の路線でもSuicaやPASMOなど共通のICカードを使うことができます。
また、鉄道に限らず、バスや路面電車の支払いにも使うことができ、この状態はシームレスであると言えます。
業界➂:建築業界
建築業界における「シームレス」とは、以下の3つを表します。
- 基礎を一体化する建築構造
- 建築物の中と外の境界をあいまいにすること
- 建築物内の区切りをなくすこと
「基礎を一体化する建築構造」の意味
建築業界において、基礎の底面と立ち上がり部分の隙間をなくすことがシームレスです。
家を建てる際には、最初に基礎と呼ばれる土台を作り、その上に家を建てるという手順になります。
コンクリートなどで基礎の底面をつくり、その上に「立ち上がり部分」という40センチほどの柱のようなものを立てます。
しかし、基礎の底面と立ち上がり部分の間に隙間があると、シロアリが入り込むスペースができてしまいます。
そのため、土台と立ち上がり部分につなぎ目を作らず、一体化させるのが「シームレス」です。
「建築物の中と外の境界をあいまいにすること」の意味
建築物の中と外の境界をあいまいにすることもシームレスになります。
例えば、以下のような方法で内と外の境界線を薄くすることができます。
- リビングのすぐ横にウッドデッキなどを作り、大きな出入り口を取り付ける
- 室内と庭に一体感を持たせるために、窓やドアをつけない
内と外との境界をあいまいにすることで、開放感のある広々とした空間を作り出せます。
「建築物内の区切りをなくすこと」の意味
建築物内の区切りをなくすこともシームレスだと言えます。
部屋や空間ごとの境やラインをはっきりと作らないことを表します。
たとえば、キッチンエリアとリビングの区切りをなくし、ひとつの広い空間としてデザインすることがシームレスです。
業界➃:ファッション業界
ファッション業界では、シームレスはもとの意味の通り、「縫い目がないこと」「つなぎ目がないこと」を表します。
下着やアウターなどに縫い目を残さないシームレスの製法がよく使われます。
シームレスな商品では、下着は縫い目が肌に当たらないことで着心地のよさに優れており、アウターは継ぎ目から風が入らないことで防寒性に優れています。
業界➄:医療業界
医療、看護業界でのシームレスは、以下の2つを表します。
- 異なる段階の治療をひとつの病院で一貫して行うこと
- 病院間での情報の受け渡しをスムーズに行うこと
ひとつの病気の治療でも、急性期、回復期、入院中、入院後のリハビリ、介護などの多くの段階があります。
この異なる段階の治療を、段階ごとに転院するのではなく、ひとつの病院で行うことがシームレスです。
転院によって情報の伝達が上手くいかなかったり、利用者の負担が大きくなったりすることを防ぐという目的があります。
業界➅:ゲーム業界
ゲーム分野におけるシームレスとは、RPGや冒険系のゲームで敵との戦闘時に、画面が切り替わらないシステムのことです。
画面が切り替わって対戦画面に移動するのではなく、敵の出現の直後にそのまま対戦となります。
シームレス方式によって、プレイヤーの待ち時間やストレスが少なくなる一方で、プレイヤーが操作する動作が多くなり、ゲームの難易度が上がりやすいという欠点もあります。
具体的には、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などがシームレス方式を採用したゲームです。
シームレス方式のゲームの反対語は、「エンカウント方式」です。
ポケットモンスターシリーズのように、戦闘時にいちいち画面が切り替わる方式を表します。
業界➆:小売り業界
小売業界では、ウェブや店舗などのチャネルの違いを意識せずに商品を購入できるようにする取り組みをシームレスステーリングと言います。
現代では、実店舗だけではなくインターネット上でショッピングを不自由なく行うことができます。
その中でも、実店舗でもインターネットでも商品数や品揃え、ディスカウントなどが変わらない状況がシームレスステーリングになります。
業界⑧:物流業界
物流業界では、異なる企業や国の間で作業システムや法制度を統一して物流をスムーズにすることがシームレスです。
異なる企業や国では、物流ターミナルの運営方法や作業システム、制度などが異なることが多く、それが物流の流れを悪くしてしまっているのです。
これらの要因を統一することで、物流をスムーズにすることがシームレス化です。
業界➈:金融業界
金融業界において、金融サービス間の垣根をなくすことがシームレスです。
サービス間の垣根をなくし、利用者が複数のサービスを巨大なひとつのシステムとして使用できる状態のことです。
銀行や証券、保険などの異なるサービスの支払いなどを、同じ口座で完了できるようにすることがシームレスです。
「シームレス」の使い方
これまでも説明してきたように、シームレスはビジネスの業界や分野ごとによって意味が異なります。
そのため、文脈によって意味を判断したり、使い分けたりする必要があります。
また、シームレスな状態にすることを「シームレス化する」と表現します。
これらを踏まえて、具体的な例文を見ていきましょう。
- 人気ゲームシリーズの最新版では、シームレス方式が採用されている。
- 患者の負担を減らすために、シームレス化を進めていきたいですね。
- 交通手段は年々、シームレス化している。
➀のシームレスは、ゲーム業界において「RPGや冒険系のゲームで敵との戦闘時に、画面が切り替わらないシステム」を表しています。
➁のシームレスは、医療業界において「異なる段階の治療をひとつの病院で一貫して行うこと」という意味で使われています。
➂のシームレスは、交通業界において「異なる交通手段同士の接続をよくしたり、利用時の不便さを解消すること」という意味で使われています。
「シームレス」の語源
シームレスの語源は、「縫い目がない」という意味の英単語 “seamless” です。
英単語 “seamless” は、「縫い目」という意味の “seem” と「~がない」という意味の “less” で構成されています。
直訳で「縫い目がない」「継ぎ目がない」という意味になります。
ここから派生したのが「途切れていない」「なめらかである」という意味です。
カタカナ語のシームレスは、英単語 “seamless” と同じ意味を持っていることがわかります。
「シームレス」の類義語
シームレスには以下のような類義語があります。
- 混然一体となって
すべてがとけ合ってひとつになっているようす - スムーズ
物事が滞らずに,すらすらとなめらかに進むさま
「シームレス」の対義語
シームレスには以下のような対義語があります。
- 垣根がある
ものごとの間にハードルや違いがあること - 継ぎ目がある
物と物のつなぎ目があること
「シームレス」の関連語
シームレスには以下のような関連語があります。
- シームレス地質図
独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センターが無償で公開している地質図 - シームレスドール
関節がないのにポーズを形成できるドール
「シームレス」のまとめ
以上、この記事ではシームレスについて解説しました。
英語表記 | シームレス(seamless) |
---|---|
意味 | 継ぎ目や途切れがないこと・途切れずなめらかであること |
語源 | 「縫い目がない」という意味の英単語 “seamless” |
類義語 | 混然一体となって |
対義語 | 垣根がある 継ぎ目がある |
シームレスは、分野ごとにさまざまな意味を持つ言葉だということがわかりましたね。