「先触れ」には、「事前に知らせること」「後に起こる出来事を予感させるもの」という2つの意味があります。
「先触れ」の意味は理解していても、具体的にどのような言い回しで使うべきか、迷ってしまいませんか。
また、「先触れ」と「前触れ」の違いが気になる人も多いでしょう。
この記事では、「先触れ」の意味や使い方、類義語との違いなどについて、詳しく解説します。
☆「先触れ」をざっくり言うと……
読み方 | 先触れ(さきぶれ) |
---|---|
意味 | 事前に知らせること 後に起こる出来事を予感させるもの |
類義語 | 前触れ 予告 前兆 など |
英語訳 | notify 〜 in advance(〜に事前に知らせる) harbinger(予感させるもの) など |
「先触れ」の意味
- 事前に知らせること
- 後に起こる出来事を予感させるもの
「先触れ」の1つ目の意味は、「事前に知らせること」です。
具体的に言い換えると、「会話や文書などを通して、前もって相手に伝えること」となります。
2つ目の意味は、「後から起こることを予感させるもの」です。
この意味での「先触れ」は、「ある出来事が、これから起きるのではないか」と感じられるときに使います。
「先触れ」の正しい読み方は「さきぶれ」です。
誤って「さきふれ」と読まないようにしましょう。
室町時代や江戸時代における意味
「先触れ」は、室町時代や江戸時代において、以下のような意味で使われていました。
- 身分の高い人物が到着する前に、宿駅(しゅくえき)に事前準備をさせること
(馬や人員の確保など) - ①を申し伝える命令書
現代では、上記のような意味で使われることはありませんが、参考までに知っておきましょう。
宿駅とは、主要な道の各地点に設置された、宿泊所のことです。
「先触れ」の使い方
「先触れ」のそれぞれの意味に分けて、使い方と例文を見てみましょう。
- 事前に知らせること
- 後に起こる出来事を予感させるもの
使い方①「事前に知らせること」という意味
「事前に知らせること」という意味では、「先触れする」というかたちで使います。
特によく使われるのが、「先触れしておく」という言い回しです。
具体的な例文を見てみましょう。
- 次回の議題について、先触れしておく。
- 取引先に、明日の訪問時間について先触れしておきました。
- あの教授が試験内容について先触れするのは珍しい。
- 今日のホームルームでは、半年後の修学旅行について先触れしたいと思います。
使い方②「後に起こる出来事を予感させるもの」という意味
「後に起こる出来事を予感させるもの」という意味では、「〇〇の先触れ」というかたちで使います。
〇〇には、後に起こる出来事の内容が入ります。
具体的な例文を見てみましょう。
- この強風は、きっと春の先触れだ。
- 飛行機雲は、雨の先触れと言われている。
- その村には、「空に虹がかかるのは幸運の先触れだ」という言い伝えがある。
- 思い返すと、あの事件は悲劇の先触れだったのかもしれない。
- 災難先触れはないから、定期的に防災バッグの点検をしよう。
「後に起こる出来事を予感させるもの」という意味での「先触れ」は、ポジティブな文脈でもネガティブな文脈でも使うことができます。
また、自然現象に対して使うことも多いです。
なお、例文⑤に登場する「災難の先触れはない」という言い回しは、ことわざです。
このことわざは、「災難はいつ起きてもおかしくないのだから、普段から充分に気をつけるべきだ」という意味を表します。
「先触れ」の成り立ち
「先触れ」は、「先」と「触れる」の二語が組み合わさった言葉です。
それぞれには以下のような意味があります。
- 先
事前に - 触れる
人々に広く知らせる
以下、それぞれの意味について詳しく解説します。
「先」の意味
「先」にはたくさんの意味がありますが、「先触れ」の「先」には「事前に」という意味があります。
- 先端
例:「枝の先でつつく」 - 長いものの端
例:「糸の先を結ぶ」 - 列などの先頭
例:「先生が生徒の先に立って歩く」 - 前方
例:「二軒先の家に行く」 - 金額・数量が、一定のラインを超えること
例:「2000円から先の商品はこちらです」 - 継続する物事の残り
例:「先を急いでいるので、失礼します」 - 目的の場所
例:「行き先に着いた」 - 将来
例:「先のことを見すえる」 - 事前に
例:先触れ - 以前
例:「先の戦争で亡くなった人を悼む」 - 前のほうの順序
例:「お先にどうぞ」 - 優先すべきこと
例:「何よりも先に挨拶が大事だ」 - 交渉の相手
例:「先の動向をうかがう」 - 「先物(さきもの)」の略
※未来の売買の価格や数量を事前に決めること - 行列を導く役目
例:「先となる」 - 「先駆け(さきがけ)」の略
※他のものより先になること - 「幸先(さいさき)」の略
※良いことが起きそうな予感のこと
- 先端
「触れる」の意味
「触れる」も数多くの意味をもつ言葉です。
そのなかでも、「人々に広く知らせる」という2つの意味が、「先触れ」の「触れ」に含まれています。
- 少しだけさわる
例:「手に触れる」 - 脈が反応する
例:「脈が触れる」 - 少しだけ見聞きする
例:「人の目に触れる場所」 - あることに言及する
例:「核心に触れる」 - ある物事に出会う
例:「折に触れる」 - ルールに反する
例:「法に触れる」 - 怒りを身に受ける
例:「社長の怒りに触れる」 - 感動する
例:「琴線(きんせん)に触れる」 - 人々に広く知らせる
例:先触れ
「先触れ」の類義語
「先触れ」には以下のような類義語があります。
- 前触れ(まえぶれ)
事前に知らせること
後に起こる出来事を予感させるもの - 予告(よこく)
事前に知らせること - 前兆(ぜんちょう)
後に起こる出来事を予感させるもの - 予兆(よちょう)
後に起こる出来事を予感させるもの
「先触れ」と「前触れ」の違い
「先触れ」と「前触れ」は、どちらを使っても問題ありません。
なぜなら、「前触れ」には、「先触れ」と全く同じ2つの意味があるからです。
- 事前に知らせること
- 後に起こる出来事を予感させるもの
もしも「先触れ」と「前触れ」を厳密に使い分けたい場合には、下記の細かい違いを確認しましょう。
日常での使用頻度 | 室町時代での使用 | |
---|---|---|
先触れ | 低い | 使われていた |
前触れ | 高い | 使われていない |
「先触れ」と「予告」の違い
「予告」には、「事前に伝えること」という意味しかありません。
つまり、「予告」は、「後に起こる出来事を予感させるもの」という意味を表すことはできないのです。
「先触れ」と「前兆」の違い
「前兆」には、「後に起こる出来事を予感させるもの」という意味しかありません。
つまり、「予告」は、「事前に伝えること」という意味を表すことはできないのです。
「先触れ」と「予兆」の違い
「先触れ」と「予兆」には、以下のような違いがあります。
意味 | 使える対象 | |
---|---|---|
先触れ |
| 自然以外にも使う |
予兆 | 後に起こる出来事を予感させるもの | おもに自然現象に対して使う |
「予兆」は「後に起こる出来事を予感させるもの」のみ表すため、「事前に伝えること」という意味はありません。
また、「予兆」は、地震などの自然現象に対して使うことが多いのです。
「先触れ」の英語訳
「先触れ」のそれぞれの意味に分けて、英語訳を見てみましょう。
- 事前に知らせること
- 後に起こる出来事を予感させるもの
英語訳①事前に知らせること
「先触れ」の1つ目の意味「事前に知らせること」は、以下のような英語に訳すことができます。
- notify 〜 in advance
(〜に事前に知らせる) - let 〜 know beforehand
(〜に事前に知らせる)
具体的な例文を見てみましょう。
- In that case, please notify me in advance.
(そのような場合には、私に事前に知らせてください。) - I will let you know beforehand.
(あなたに事前に伝えますね。)
英語訳②後に起こる出来事を予感させるもの
「先触れ」の2つ目の意味「後に起こる出来事を予感させるもの」は、以下のような英語に訳すことができます。
- harbinger
(予感させるもの) - sign
(予感させるもの) - forerunner
(予感させるもの)
具体的な例文を見てみましょう。
- The event was the harbinger of a new day.
(その出来事は、新時代の先触れだった。) - A headache is a sign of a cold.
(頭痛は風邪の先触れだ。) - This big wind may be the forerunner of spring.
(この大風は、春の先触れかもしれない。)
「先触れ」のまとめ
以上、この記事では「先触れ」について解説しました。
読み方 | 先触れ(さきぶれ) |
---|---|
意味 | 事前に知らせること 後に起こる出来事を予感させるもの |
類義語 | 前触れ 予告 前兆 など |
英語訳 | notify 〜 in advance(〜に事前に知らせる) harbinger(予感させるもの) など |
類義語との違いもふまえながら、「先触れ」を正しく使いこなしましょう。