「最初はグー」とは「じゃんけんを始めるときの掛け声」です。
「最初はグー」は、じゃんけんで当たり前のように使うフレーズであるため、「役割や由来などについては考えたことすらなかった」という人が多いのではないでしょうか。
この記事では、「最初はグー」の意味や使い方、由来、英語訳などについて詳しく解説します。
☆「最初はグー」をざっくり言うと……
読み方 | 最初(さいしょ)はグー |
---|---|
意味 | じゃんけんを始めるときの掛け声 |
由来 | お笑い芸人・志村けんさんが考案した言葉 |
英語訳 | Rock, scissors, paper, one, two, three! (じゃんけんぽん、1・2・3!) Rock, paper, scissors, go! (じゃんけんぽん、ゴー!) Rock, paper, scissors, shoot! (じゃんけんぽん、シュート!) |
じゃんけんの歴史 | 江戸時代〜明治時代にかけて日本で生まれたとされる |
このページの目次
「最初はグー」の意味
じゃんけんを始めるときの掛け声
「最初はグー」とは、じゃんけんを始めるときの掛け声です。
じゃんけんは、以下のような流れで進みます。
- 「最初はグー」と言いながら、グーを差し出す
- 「じゃんけんぽん!」と言ったあと、グー・チョキ・パーのどれかを出す
- 勝敗が決まる
「最初はグー」で最初の足並みを揃えることには、以下のようなメリットがあります。
- 「最初はグー」で一度落ち着いてから、それぞれの手を出すことによって、皆のタイミングが揃いやすい
- 皆のタイミングが揃えることで、じゃんけんの公平性が保たれる
- 何も言わずに「じゃんけんぽん!」と始めるよりも、リズミカルで楽しい
なお、「最初はグー」に関して以下のようなジンクスもありますが、科学的な根拠はありません。
- 「最初はグー」なしに始めると、グーを出す確率が高まる
- 「最初はグー」は言わない方が、勝率が高まる
じゃんけんとは
じゃんけんとは、自分と相手がグー・チョキ・パーの3つの手のかたちを出し、勝敗を決める遊びのことです。
グー・チョキ・パーには、それぞれ以下のような特徴があります。
じゃんけんは、自分が出した手のかたちと、相手が出した手のかたちを見比べて勝敗が決まります。
グー・チョキ・パーの力関係は、次のようになっています。
- グー(石)
チョキ(はさみ)で切れないほど固い
→チョキより強い
パー(紙)に包み込まれてしまう
→パーより弱い - チョキ(はさみ)
パー(紙)を切ることができる
→パーより強い
グー(石)を切ることはできない
→グーより弱い - パー(紙)
グー(石)を包み込むことができる
→グーより強い
チョキ(はさみ)に切られてしまう
→チョキより弱い
そのため、グー・チョキ・パーは、以下のような勝敗の組み合わせになっています。
グー(相手) | チョキ(相手) | パー(相手) | |
---|---|---|---|
グー(自分) | あいこ | 勝 | 敗 |
チョキ(自分) | 敗 | あいこ | 勝 |
パー(自分) | 勝 | 敗 | あいこ |
じゃんけんをする目的として、以下のようなものが挙げられます。
- 心理戦を楽しむ
相手がグー・チョキ・パーのどれを出すかを予想する - 短時間で何かを決めるときの手段として使う
「ジャンケンで買った人が選択権を得る」など - 競技として向き合う
日本じゃんけん協会が主催する日本大会
国際じゃんけん協会が主催する世界大会(トーナメント方式)
「最初はグー」の使い方
「最初はグー」は、じゃんけんで遊ぶ際、以下のように使います。
- 最初はグー、じゃんけんぽん!
- 出さなきゃ負けよ、最初はグー、じゃんけんぽん!
このように、「じゃんけんぽん」の前に「最初はグー」をつけるのです。
また、例文②のように、「最初はグー」の前にさらに「出さなきゃ負けよ」をつけて使うこともあります。
なお、「じゃんけんぽん」という掛け声の部分は、地域によって以下のように変わる場合があります。
北海道 | 全体 | じゃらけつほい |
東北 | 仙台 | いしけんぎっ じっけっぴっ |
南東北 | じっけった | |
関東 | 北関東 | じーげんぴっ |
中部 | 東海 | いんちゃんし |
静岡 | じすとっぺ | |
飛騨 | じゃんけんしっ | |
関西 | 全体 | いんじゃんほい |
中国 | 山陽 | じっけった |
「最初はグー」の由来
「最初はグー」は、お笑い芸人・志村けんさんが考案した言葉です。
志村さんは、以下のような経緯で「最初はグー」を使い始めたのです。
ある日、同番組の撮影後に飲み会が行われ、奢る人をじゃんけんで決めることになりました。
しかし、そこにいた人々は皆酔っていて、グー・チョキ・パーを出すタイミングがなかなか揃いません。
そこで、志村さんが「最初はグーだよ」と言い、皆で「最初はグー、じゃんけんぽん」としたところ、皆が手を出すタイミングが揃ったのです。
志村さんがなぜ「最初はグー」という言い回しを思いついたのか、その詳細は不明ですが、テレビ番組で本人は「自分が考案したものではない」と否定しています。
一説によると、志村さんが故郷の東京都東村山市で、小学生たちが「最初はグー」と言っていたのを聞いたことがあったからだと言われています。
このように、「最初はグー」は、志村さんが仲間内で使い始めた言葉なのです。
ここからは、「最初はグー」が日本全国で使われるようになった経緯を解説します。
「最初はグー」が日本全国で定着した経緯
志村さんは、『8時だョ!全員集合』の飲み会で「最初はグー」を提案しました。
このあと、志村さんは『8時だョ!全員集合』のコントでも使うようになったため、全国で「最初はグー」が定着しました。
ある日のコントで、志村さんと仲本工事(なかもと こうじ)さんが、西部劇に出てくる酒場のような場所でじゃんけんをして、負けた方が過激な罰ゲームを受けることになりました。
そのとき、志村さんは以下のような言い回しで、じゃんけんをしたのです。
最初はグー、またまたグー、いかりや長介あたまはパー、正義は勝つ、ジャンケンポン!
これを機に、子どもを中心に「最初はグー」が広まり、お決まりのフレーズとして定着しました。
「最初はグー」にあたるようなフレーズは地域によって様々に存在していたものの、しだいに全国で「最初はグー」が使われるようになりました。
このことから、志村さんは、日本のじゃんけんに大きな影響力をもたらしたといえます。
そのため、2020年3月に志村さんが亡くなった際、日本じゃんけん協会は追悼コメントを発表しました。
『8時だョ!全員集合』は、1971年10月2日〜1985年9月28日まで、TBSで放送されていたお笑い番組です。
出演者は、コントグループ「ザ・ドリフターズ」の5人です。
- いかりや長介
- 高木(たかぎ)ブー
- 仲本工事(なかもと こうじ)
- 加藤茶(かとう ちゃ)
- 志村けん
「最初はグー」の英語訳
「最初はグー」にあたる英語訳はありません。
しかし、「最初はグー」のように、じゃんけんをするときにタイミングを揃えるために発する掛け声には、以下のようなものがあります。
- Rock, scissors, paper, one, two, three!
(じゃんけんぽん、1・2・3!) - Rock, paper, scissors, go!
(じゃんけんぽん、ゴー!) - Rock, paper, scissors, shoot!
(じゃんけんぽん、シュート!)
“rock(石)” “scissors(はさみ)” “paper(紙)” はそれぞれ、「グー」「チョキ」「パー」にあたります。
「最初はグー」以外の決まり文句
「最初はグー」のほかにも、生活のなかで当たり前のように使っている言葉はたくさんあります。
たとえば、以下のようなものが挙げられます。
- ピースサイン
- ハイ、チーズ
- ガッズポーズ
- マジで
上記の言葉について、由来とともに解説します。
決まり文句①ピースサイン
「ピースサイン」とは、手をチョキのようなかたちにするポーズです。
1969年のドラマ『サインはV』にも、ピースサインのようなポーズが見られますが、日本で初めて使ったのは、コメディアンの井上順(いのうえ じゅん)さんだと言われています。
1972年、コニカミノルタのカメラのコマーシャルで、井上さんがアドリブで取ったポーズが「ピースサイン」と呼ばれるようになりました。
井上さんはコント番組で、ボケを言ったあとに、「あまり強く突っ込まずに平和にしてね」という意味を込めて「ピース」と言うことが多かったため、「ピースサイン」という名前がついたのです。
この経緯から、現在でも日本では、写真を撮るときに「ピースサイン」をする慣習があります。
昔は、大きな声で「ピース」と言いながら写真に映る子どもいました。
なお、ピースサインは世界共通ですが、海外では「ピースサイン」ではなく「Vサイン」と呼ばれます。
Vサインの「V」は、“Victory(勝利)” に由来しています。
決まり文句②ハイ、チーズ
「ハイ、チーズ」は、写真を撮る際に、撮影者が言うフレーズです。
撮る側が言う場合も、撮られる側が言う場合もあります。
もともと英語圏では、写真を撮るときに “Say cheese(チーズと言って)!” と言う文化があります。
日本では1963年、雪印チーズのコマーシャルで、以下のようなシーンが描かれました。
(チーズ!)
日本にはそれまで、写真を撮る時の決め台詞がありませんでした。
そのため、このコマーシャルを機に、“Say cheese!” の日本語版が「ハイ、チーズ」になり、定着したのです。
決まり文句③ガッツポーズ
拳を握りしめて、やる気や喜びを表すポーズは、俗に「ガッツポーズ」と呼ばれます。
このようなポーズは、習慣として以前から存在していました。
しかし、1972年、ボウリング雑誌『週刊ガッツボール』で、「ガッツポーズ」という名前が使われるようになりました。
ボウリングでストライクになったとき、握りこぶしで喜びを表す姿が「ガッツポーズ」と書かれたのです。
さらに、1974年、ガッツ石松が、ロドルフォ・ゴンザレスにKO勝ちしした際に拳を築き上げたポーズも新聞で「ガッツポーズ」と書かれました。
この試合が行われた4月11日は、「ガッツポーズの日」となっています。
決まり文句④マジで
「マジで」の「マジ」には、以下のような意味があります。
- 真面目
- 本当
「マジ」は、「真面目」という意味で江戸時代から存在していました。
現在では「本当」という意味も含まれます。
「マジ」に「で」がついた「マジで」は、「真面目に」「本当に」という意味になります。
江戸言葉であった「まじ(真面目)」に由来しています。
じゃんけんの歴史
じゃんけんの歴史については諸説ありますが、明治時代に日本で生まれたと言われています。
具体的には、以下のような経緯で確立されたと考えられています。
↓
これらの拳遊びが日本に伝わる
↓
19世紀末(明治時代)、「石拳」という遊びをアレンジしたものとして、九州地方でじゃんけんにあたる遊びが発明される
20世紀以降は日本文化が世界に広まり、じゃんけんも世界中で親しまれるようになったとされています。
ただし、手のかたちで勝敗を決めるという遊びは、どの国にも古くから存在するとも言われています。
「じゃんけん」の呼び方
日本には、以下のように、地域によって様々な呼び方があります。
- じゃいけん
- いんじゃん
また、外国では以下のように呼ばれています。
- 中国
猜拳(ツァイチュアン) - アメリカ
Rock-paper-scissors
(ロック・ペーパー・シーザーズ) - イギリス
Scissors Paper Stone
(シーザーズ・ペーパー・ストーン)
海外では、特に英語圏でじゃんけんが人気です。
カナダには国際じゃんけん協会(the World Rock Paper Scissors Society, 略してWRPS)があり、トーナメント方式の世界大会が実施されています。
じゃんけんに関連する遊び
じゃんけんに関連した遊びには、以下のようなものがあります。
- あっち向いてホイ
じゃんけんに続けてする遊び - あと出しじゃんけん
相手が出した手を見たうえで、ワンテンポ遅れて自分も出す - カレーライスじゃんけん
あいこになったときに、先に「水!」と言ったら勝ち - グリンピースじゃんけん
あいこになったときに、先に「ドン!」と言ったら勝ち - たたいて・かぶって・じゃんけんぽん
じゃんけんで勝った方が相手の頭を叩く
負けたほうは、叩かれる前に頭を覆えばセーフ - グーパージャン
3人以上がグーとパーだけを使い、同じ手を出した人どうしが仲間になる
※「グットッパ」「グッパージャス」とも呼ぶ - グッチョ
3人以上がグーとチョキだけを使い、同じ手を出した人どうしが仲間になる - ゲーマーじゃんけん
3人以上がじゃんけんをして、手の種類の重複が最も少なかった人が勝つ - 最初はグー じゃんけんポンとだすアホがいる
じゃんけんをしようと見せかける遊び - 最初はグー じゃんけんポンと出さないアホがいる
じゃんけんをしようと見せかける遊び - グリコ
じゃんけんをするたび、買った側が歩数を進めていく遊び - 軍艦(ぐんかん)じゃんけん
グーを軍艦、チョキを沈没、パーを破裂という言葉に置き換えたもの
※置き換える言葉は地域によって異なる - ビームフラッシュ
二通りの手のかたちを提示したうえでじゃんけんする - じゃんけんブルドッグ
じゃんけんで負けたほうが頬をつねられる - 脚じゃんけん
手ではなく、足のかたちでじゃんけんする - 舌じゃんけん
手ではなく、舌のかたちでじゃんけんする - 野球拳(やきゅうけん)
じゃんけんで負けた方が罰ゲームとして服を脱いでいく遊び
上記の遊びはすべて、じゃんけんが基礎になっています。
以下、代表的なものについて詳しく説明します。
①あっち向いてホイ
「あっち向いてホイ」は、じゃんけんの後に続けて行われる遊びです。
以下のような流れで遊びます。
負けた人は、相手が指を指すのと同時に、上下左右のいずれかの方に顔を向ける
↓
指さした方向と、顔を向けた方向が同じになると、指をさした人の勝ちとなり、終了
指さした方向と、顔を向けた方向が違うと、もう一度じゃんけんからやり直す
「あっち向いてホイ」は、もともと座敷遊びとして、舞妓(まいこ)さんとお客さんが行うものでした。
しかし、以下のようなテレビ番組がきっかけで、一般的な遊びとして世間に浸透しました。
- バラエティ番組『ヤングおー!おー!』
落語家の6代目桂文枝(かつら ぶんし)さんが「あっち向いてホイ」を紹介 - オーディション番組『スター誕生!』
コメディアンの萩本欽一(はぎもと きんいち)さんが実践
※「あっち向いてホイ」ではなく、「こっち向いてホイ」という掛け声が使われた
②あと出しじゃんけん
「あと出しじゃんけん」とは、相手が出した手を見たうえで、ワンテンポ遅れて手をだすというものです。
相手をからかうために行う遊びです。
ちなみに、「あと出しじゃんけん」は、「ずるい」という意味の慣用句としても使われます。
「最初はグー」のまとめ
以上、この記事では「最初はグー」について解説しました。
読み方 | 最初(さいしょ)はグー |
---|---|
意味 | じゃんけんを始めるときの掛け声 |
由来 | お笑い芸人・志村けんさんが考案した言葉 |
英語訳 | Rock, scissors, paper, one, two, three! (じゃんけんぽん、1・2・3!) Rock, paper, scissors, go! (じゃんけんぽん、ゴー!) Rock, paper, scissors, shoot! (じゃんけんぽん、シュート!) |
じゃんけんの歴史 | 江戸時代〜明治時代にかけて日本で生まれたとされる |
「最初はグー」の由来をしっかり理解したうえで、じゃんけんを楽しみましょう。
(チーズと言って!)