「復讐」と「報復」の違いとは?意味から使い方の例まで解説

違いのギモン

「復讐」と「報復」。どちらも「恨みを晴らす行為、仕返し」という意味を持っています。しかし、両者が異なる2つの単語として存在する以上、何かしらの違いがあるはずです。あなたは、「復讐」と「報復」の違いを知っていますか。

ある時は推理小説で、ある時は魔法使いが出てくるファンタジー作品で、そしてある時は現実世界で事件を引き起こす「復讐」と「報復」。今回は両者の違いを明快に解説していきます。

結論:「復讐」は感情的。「報復」は淡々と。

どちらも「恨みを晴らす行為、仕返し」という意味を持っています。

「復讐」は感情的な行動であることが多いです。

一方「報復」は質的・量的に同程度の仕返しで冷静な行動であることが多いです。

「復讐」をもっと詳しく


「復讐」とは、自分や自分の仲間に対して危害を加えた相手に対し、仕返しをすることです。相手に対する恨みや憎しみといった感情が行動の根本にあり、感情によって動く点が「報復」との違いです。

「報復」は国家間といった規模の大きな仕返しにも使用することができます。一方「復讐」はそこまで大規模な仕返しに用いることはなく、仕返しの規模が小さめであるといえます。

 

「復讐」の「讐」には、「あだ、かたき」といった意味があります。恨みのある相手のことを「讐敵(しゅうてき)」といい、相手を恨むことを「怨讐(えんしゅう)」といいます。また、恩義と恨みのことを合わせて「恩讐(おんしゅう)」といいます。

これらの熟語のように、「復讐」にも「讐」の「あだ、かたき」という意味が反映されています。

また、肉親や恋人を殺された恨みにより、加害者に復讐する悲劇のことを「復讐劇」といいます。シェークスピアの『ハムレット』は「復讐劇」にあたります。

「復讐」の使い方の例

・家族を全員殺され、復讐を誓った少年の目は、涙を溢れさせながらも強い決意を感じさせた。

→より個人的で感情的な仕返しの場合、「復讐」を使います。

「報復」をもっと詳しく


「報復」とは、相手がしてきた何らかの行為に対し、仕返しをすることです。「復讐」ほど感情的ではなく、冷静に淡々と行動するイメージがあります。

また「報復」は個人的な仕返しだけでなく、国家間の措置についてもいいます。具体的には、他国がしてきた不当な行為に対し、仕返しとして質的・量的に同程度の行為をすることをいいます。

 

「報復」の「報」という漢字は、訓読みで「報(むく)いる」となり、「相応のむくい、応報」という意味があります。また「報復」の「復」には「同じことを繰り返す」という意味があります。

このことから、「報復」とは、「相手がしたことと同程度のことを、相手に対してする」というニュアンスであることが分かります。

 

似た意味の言葉として、「意趣返(いしゅがえ)し」「返報(へんぽう)」があります。

「意趣返し」も「返報」も、「仕返しをして恨みを晴らす、仕返しをする」という意味があります。しかし、「返報」には「人の好意に対して報いる」という良い意味でも使われます。

また、ニュース等でしばしば取り上げられる言葉としては、「報復関税(ほうふくかんぜい)」があります。これは「他国の不当に高い関税に対する報復として、他国からの輸入品にかける高い関税」のことです。英語では、 “retaliatory duties” といいます。

「報復」の使い方の例

・1914年、皇太子夫妻が暗殺された報復として、オーストリアはセルビアに宣戦布告した。

→第一次世界大戦のきっかけも「報復」でした。

・会社の評判を不当に下げた男に対し、法の力により報復する。

→「復讐」ほど感情的ではなく、淡々と計画通りに行動するイメージが強いです。

まとめ

以上、この記事では、「復讐」と「報復」の違いについて解説しました。

  • 復讐:個人的で感情的な仕返し。
  • 報復:冷静で、被害と同程度の仕返し。国家間にも使える。

普段なかなか違いを意識しない「復讐」と「報復」ですが、実はある程度使い分けがあります。

例えば、大切な恋人を殺された男が涙ながらに犯人に吐き捨てる言葉として、「絶対に報復してやる」というのは若干違和感があるのではないでしょうか。

 

また、「関税を上げられた復讐として、復讐関税をかける」というのは、あまり聞きなれないと思います。

どちらも使わないでいられれば幸せな言葉ですが、もしかしたら使うときが来るかもしれません。違いはしっかりと分かっておきましょう。