「つつしむ」と読む言葉には「謹む」と「慎む」の二つがあります。「謹慎」という熟語もあるため、両者の使い分けに悩んだことのある方は多いのではないでしょうか。
今回は「謹む」と「慎む」の違いについて解説します。
結論:「謹む」は相手への敬意、「慎む」は自重
一方、「慎む」とは、言動を控えめにして度が過ぎないようにすることを指します。
「謹む」をもっと詳しく
「謹む」とは、かしこまって相手へ敬意を示すことを指します。自分のためではなく、相手のために使う言葉であるという点がポイントです。
「謹む」は、「謹んで」の形で使われることが多く、例えば「謹んでお詫び申し上げます」や「謹んでお引き受けいたします。」という言い回しがあります。
「謹む」の使い方の例
- 謹んでお悔やみ申し上げます。
- 謹んでお慶(よろこ)び申し上げます。
- 謹んで新年をお祝いいたします
3つとも、「謹んで」をつけることで相手の方に敬意を表明しています。また➌は、四字熟語で言うと「謹賀新年」になります。
「慎む」をもっと詳しく
「慎む」とは、度が過ぎないように言動を控えめにすることを指します。「謹む」とは違い、相手への敬意を示すのではなく、自分のために言動を抑制することを意味します。
例えば、「言葉を慎む」という表現は言葉の暴力を未然に防ぐことを指し、「酒を慎む」という表現は自分の体調を気遣って飲酒を控えることを指します。このように、当人が悪い結果に至らないように振る舞いを控えめにすることを「慎む」と言います。
「慎む」の使い方の例
- 授業中は私語を慎みなさい。
- 健康のために偏食を慎む。
- 和を乱さないように自分本位な行動は慎む。
「謹慎」とは
冒頭でも紹介しましたが、「謹む」と「慎む」の両方の字を持ち寄って構成される「謹慎」という言葉があります。この言葉はどういう意味になるのでしょうか。
「謹慎」とは、言動を控えめにすることを指します。「慎む」との違いは、悪い行いをしたことへの償いという意味合いが強いということです。周囲に対しての反省の意から言動を自重することが「謹慎」です。「謹慎」は、自分のためだけではなく、また相手のためだけでもありません。
そうした意味から派生し、何か悪い行いをした罰として、出勤や登校を一定期間禁じることを指す言葉として「謹慎」が使われることもあります。「自宅謹慎」という言葉はその例です。
元々「謹む」と「慎む」は両方とも「包む」という言葉が語源であり、何かをあからさまに見せつけない奥ゆかしさが込められています。その奥ゆかしさが他人のためであるならば「謹む」となり、自分のためであるならば「慎む」となるのです。
まとめ
以上、この記事では、「謹む」と「慎む」の違いについて解説しました。
- 謹む:相手に敬意を表明する
- 慎む:言動を控えめにして度が過ぎないようにする
相手に向けて敬意を示す場合は「謹む」であり、自分が失敗しないように言動を控えめにすることが「慎む」です。両方の字を含む熟語である「謹慎」との違いも意識しながら、上手に使い分けてくださいね。