返報性とは?具体例や恋愛やマーケティングにおける意味を解説

言葉

返報性は「他人からの施しに対してお返しや仕返しをしようとする人間の心理」という意味です。

返報性は心理学用語ですので、意味を知らない人も多いでしょう。

しかし返報性は、日常に多く潜む心理現象を表す言葉です。

この記事では、返報性の詳しい意味や日常における具体例を説明します。

「返報性」の意味

返報性へんぽうせい

他人からの施しに対してお返しや仕返しをしようとする人間の心理

例:返報性によってプレッシャーを感じている。

この「他人からの施し」とは、物理的なプレゼント以外にも好意や手助けなどの形のない物も含みます。

また、そのようなプラスのものだけでなく、敵意や嫌がらせなどのマイナスな行為にも返報性が当てはまります。

返報性の別名

「返報性」は「返報性の原理」と呼ばれることもあります。

「返報性」の具体例

返報性は、以下のように日常の小さな出来事にも当てはまります。

  1. お土産のやりとり
  2. 食品コーナー

例➀:お土産のやりとり

例えば、友人が旅行のお土産にお菓子をくれたとします。

すると、次に自分が旅行へ行ったときに、その友人に「何かお土産を買っていかなければ」と考える人が多いです。

これは、自分が受けた施しに対して返そうと考える返報性になります。

例➁:食品コーナー

食品コーナーの試食にも返報性が応用されています。

無料で試食を食べさせてもらったからには、「何かを返さなければいけない」という返報性の心理が働き、つい商品を購入してしまうのです。

このように、人間の「お返しをしなければ」という心理をマーケティングに活用している例も存在するのです。

「返報性」の実験


返報性を明らかにした実験はいくつもありますが、特に有名な実験を紹介します。

心理学者デニス・リーガン氏が1971年に発表した論文で以下のような実験を行いました。

デニス・リーガンは、スタンフォード大学の男子学生81人に対して、美術品の複製を評価するという「偽の課題」を与えました。

実験部屋には、被験者のほかに同じ課題に取り組む仕掛け人が一人紛れ込んでいます。

 

課題の最中に「仕掛け人からコーラをもらう」「誰からもコーラをもらわない」「第三者(実験の監督)からコーラをもらう」のうちどれか一つの出来事がランダムに被験者に発生します。

そして課題の後に、被験者は仕掛け人から「抽選で景品が当たるチケットを買ってほしい」と頼まれます。

このとき、課題の最中の出来事によって被験者が購入するチケットの枚数が変化するかを観察しました。

被験者はコーラの条件によって3つのグループに分けられます。

その上で「仕掛け人への好感度が高い」「仕掛け人への好感度が低い」という基準で、さらに2グループに分けられました。

仕掛け人への好感度は、仕掛け人の言葉遣いや態度によって判断されます。

このようなグループ分けと実験の結果、被験者がチケットを買った枚数の平均値は以下のようになりました。

仕掛け人からコーラをもらったコーラをもらわなかった第三者からコーラをもらった
好感度が高い1.91(グループA)1.00(グループB)1.50(グループC)
好感度が低い1.60(グループD)0.80(グループE)0.80(グループF)

上記の結果から、仕掛け人からコーラを貰ったAグループとBグループが、チケットの購入枚数が多かったことがわかります。

つまり、コーラを貰うという借りをチケットを購入することで返そうとする返報性の原理が働いたのです。

また、Bグループは仕掛け人への好感度が低いにもかかわらずチケットの購入枚数は1.60であり、「仕掛け人への好感度は高いけれど、コーラをもらわなかった」Cグループの購入枚数を上回っています。

つまり、「コーラのお返しをしたい」という気持ちが、相手への好き嫌いを超えて機能していることがわかります。

「返報性」の提唱者


返報性の提唱者は、社会学者のグールドナーです。

グールドナーは、以下のような「返報性の原理」を1960年に提唱しました。

  • 人は支援されると、支援をしてくれた人を助けたくなる。
  • 以前受け取った援助が大きいほど、返報行為は促進される。

この原理を提唱する前に、グールドナーは以下のような仮説を立てて理論付けをしていったのです。

返報性の仮説
  • ひとは自分をサポートしてくれたひとをサポートし、攻撃をしないであろう。
  • 以前受けたサポートが大きいほど、サポートが受けたひとにとって報酬価の高いものであるほど返報行動は促進される。

「返報性」の分類


返報性には、以下のように分類があります。

  • 贈答物と返報性
  • 好意の返報性
  • 敵意の返報性
  • 譲歩の返報性
  • 自己開示の返報性

それぞれの意味について詳しく解説します。

「贈答物と返報性」の意味

「贈答物と返報性」とは、相手から物理的に物を贈与されたときに、それに返そうと考える人間の心理のことです。

お中元を贈り合う文化や、旅行に行ったときにお土産を購入し合う文化に「贈答物と返報性」が現れています。

「好意の返報性」の意味

「人間が他人から好意を向けられたときに、同様に好意を相手に返そうとする心理」が好意の返報性です。

先ほどの「贈答物と返報性」が「何かを返さなければならない」という意識的なものだったのに対して、「好意の返報性」は無意識的な側面が強いです。

人に好かれたからと言って、「その人を好きにならなければ」と意識的に思う人は少ないでしょう。

自分に対して向けられる好意によって、無意識のうちにその相手に好意を抱いてしまうことが「好意の返報性」です。

 

例えば、今までまったく異性として意識していなかった男性がいるとします。

その男性から、好意を伝えられてアプローチを受けるようになりました。

すると、これまで好きでもなかったその男性のことがいつの間にか好きになってまうのです。

これが好意の返報性です。

「敵意の返報性」の意味

敵意の返報性とは、好意の返報性の反対で「相手から敵意を向けられたときに、その相手に敵意を持ってしまう心理」のことです。

もともと嫌いだと思っていない相手にも、敵対的な態度を取られるとその相手のことが嫌いになってしまうものです。

「譲歩の返報性」の意味

譲歩の返報性とは、相手に譲歩されると自分も何か譲歩しなければと感じてしまう心理のことです。

2人で旅行へ行く際に、行きたい観光地を相手が譲歩して自分に選ばせてくれたとします。

すると、「では、宿は相手に決めてもらおう」という譲歩を相手に対して行いたくなるのです。

「自己開示の返報性」の意味

自己開示の返報性とは、相手から情報を開示されると自分の情報も教えたくなる心理のことです。

少し仲が良い程度だと思っていた友人から、非常に個人的な相談を受けると急に親密な関係になったような気がします。

そして、自分の秘密や個人的な情報も開示したくなるのです。

「返報性」の関連語

返報性には、以下のような関連語が挙げられます。

  • 返報性の規範
  • ドア・イン・ザ・フェイス
  • 一貫性の法則

「返報性の規範」の意味

返報性の規範とは、過度な譲歩やプレゼントを行うことで「お返しをしなければならない」という心理的圧力を感じる状態になることです。

好意による手助けや贈答物だったとしても、返すことが義務であるように感じられ、義務感や罪悪感を抱くことを表します。

「ドア・イン・ザ・フェイス」の意味

返報性という人間の心理を利用したテクニックが「ドア・イン・ザ・フェイス」です。

ドア・イン・ザ・フェイスとは、「最初に非現実的な要求をして、相手に断られた後に要求のハードルを下げて承諾させる技法」です。

例えば、営業マンがひとつ3000円のサプリを販売して歩いています。

3000円は安い金額でもないので、普通の売り方をすると多くの家からは断られてしまいます。

しかし、最初に100万円のダイヤを購入してほしいと営業をかけ、断られたあとにサプリを紹介すると購入する人が増えるのです。

これは、「相手に譲歩されるとこちらも譲歩したくなる」という譲歩の返報性を利用したテクニックです。

相手が「要求のハードルを大きく下げる」という譲歩をしたのだから、こちらも「要求を断らない」という譲歩が必要だと感じてしまうのです。

「一貫性の法則」の意味

返報性の法則と似た概念に「一貫性の法則」があります。

一貫性の法則とは、「自分自身の過去の行動・発言・態度などを一貫させ、矛盾のないようにしたいと感じる心理」のことです。

返報性の法則と一貫性の法則は、どちらも「筋の通った行動をしたい」という思いから生じるという点で似ている心理現象です。

ただし、返報性の法則では「相手からの見返り」が重視され、一貫性の法則では「自分の中での一貫性」が重視されるという部分が異なります。

「返報性」の類義語


返報性には、以下のような類義語があります。

  • 報いる
    受けた事に対して、それに見合う行為を相手に行うこと
  • 返礼する
    人から受けた礼・贈り物に対して行為や品物で報いること
  • 恩返し
    受けた恩に報いること

「返報性」の英語訳


返報性を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • reciprocity
    (返報性)
  • norm of reciprocity
    (返報性の原理)

「返報性」の注意点


返報性はさまざまな場面で活用できますが、利用する際に以下のような注意点があります。

  1. 見返りを迫る
  2. 大きすぎる貸しを作る

それぞれの注意点について詳しく解説します。

注意点➀:見返りを迫る

自分が行動やプレゼントによって相手に貸しを作ったとしても、あからさまに見返りを求めすぎると返報性の法則が働きにくくなります。

要求があからさまになると、下心を感じて「お返しをしたい」という欲求や「お返しをしなければ」という義務感が弱まってしまうのです。

注意点➁:大きすぎる貸しを作る

相手に与えるものが大きすぎると、返報性の法則が働きにくくなります。

相手との関係性が薄いのにもかかわらず、あまりにも高価なプレゼントをしたり、あまりにも相手のために労力をかけすぎると相手に警戒されてしまいます。

また、人間の心理として、「もらったものと同程度のものを返さなければ」という思いが働きます。

そのため、大きすぎる貸しはお返しのことを考えて、そもそも受け取ってもらえない場合が多いです。

「返報性」のまとめ

以上、この記事では返報性について解説しました。

読み方返報性(へんぽうせい)
意味他人からの施しに対してお返しや仕返しをしようとする人間の心理
提唱者社会学者グールドナー
英語訳reciprocity(返報性)
norm of reciprocity(返報性の原理)

日常生活の中に多く見られる心理現象であることがわかりましたね。

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LEON
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年間100冊読む本の虫。InstagramよりTwitter派。 大学でも、精神分析を学びながら文章の書き方を日々勉強しています。 「言葉」と「心理学用語」の執筆が得意です。