今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「リコール」です。
「リコール」の意味・使い方・語源・類義語についてわかりやすく解説します。
☆「リコール」をざっくり言うと……
英語表記 | リコール(recall) |
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意味 | 欠陥製品を生産者が公表し、無料で回収・修理・製品交換すること/国民・住民の意思により公職者を解職する請求をすること |
語源 | 「呼び戻す」という意味の英語 “recall” |
類義語 | 国民罷免、国民解職 |
「リコール」とは?
「リコール」の意味を詳しく
「リコール」には、大きく2つの意味があります。
➀欠陥製品の回収・修理をすること
「リコール」とは、欠陥製品を生産者が公表し、無料で回収・修理・製品交換をすることです。「リコール」は、購入者に過失がありません。そのため、費用は全額生産者が出します。生産者にとっては多額の出費となります。
「リコール」がなされる場合としては、自動車などの製品の設計・製造段階に不備があり、国の安全・環境基準を満たしていないような時が多いです。
自動車の場合、「リコール」をする生産者は国土交通省に届け出た上で、製品回収の意思を伝えます。その後、国土交通省が「リコール」を行う生産者名や車種を発表します。
車の所有者の元には、多くの場合生産者やディーラーから「リコール」の連絡が届きます。それ以外の人の多くは、国土交通省の発表を報じた新聞やテレビを通じて知ります。
また、自分が所有する車が「リコール」の対象となっているかを知りたいときには、国土交通省の「リコール・不具合検索システム」というサイトや生産者のホームページで確認することができます。
車の「リコール」は、1994年に改正された道路運送車両法で明文化されました。生産者による届け出については、以下のように規定されています。
第六十三条の三
自動車製作者等は、その製作し、又は輸入した同一の型式の一定の範囲の自動車の構造、装置又は性能が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合において、当該自動車について、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため又は保安基準に適合させるために必要な改善措置を講じようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に次に掲げる事項を届け出なければならない。
しかし、車以外の製品についても、「リコール」の対象となることがあります。ちなみに、商品によって根拠となる法律や管轄の省庁が異なります。
自動車以外の生活用製品の「リコール」は消費生活用製品安全法、医薬品や医療機器の「リコール」は薬事法に規定されています。また、食品や添加物の「リコール」は、食品衛生法で規定されています。
ちなみに、「リコール」は「自主回収」とは異なります。「リコール」は、製品の使用が危険であるような場合に、管轄の省庁に届け出て行います。
道路運送車両法の第六十三条の三にも、「装置又は性能が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態にあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合」とあります。つまり、自動車を「リコール」をするかどうかは、保安基準に適合してるかどうかで決まります。
一方、「自主回収」は、使用による危険はないものの、企業が自主的に行う措置です。多くの場合、企業はイメージ低下等を避ける目的で行います。
➁公職者を国民・住民の意思により辞めさせる請求をすること
「リコール」とは、国民・住民の意思により公職者を解職する請求をすることです。また、住民が議会の解散請求をすることも意味します。
具体的には、最高裁判所裁判官の国民審査、地方自治体の議員などの任期が終わる前の解職請求、地方議会の解散請求などが「リコール」にあたります。国民・住民の意思が、国家に直接的な影響を与える制度であるといえます。
最高裁判所裁判官の国民審査については、日本国憲法第79条第2項及び第3項と最高裁判所裁判官国民審査法に規定されています。地方自治体議員の解職請求や地方議会の解散請求は、地方自治法に規定されています。
「リコール」という制度は、スイスの2つの州で1852年に採用されたのがはじまりであるとされています。
「リコール」の使い方
- 今日は、A社の軽自動車のリコールが発表された。おそらく、A社の株価にも影響が出ているだろう。
- P社のパソコン用バッテリーパックの発火事故が複数発生している。今週中にでも、リコールが発表されるのではないか。
- 市議会のリコールの署名活動が行われている。
➀と➁の例文は、「欠陥製品を生産者が公表し、無料で回収・修理・製品交換をすること」という意味で「リコール」を使用しています。
➂の例文は、「公職者を国民・住民の意思により辞めさせる請求をすること」という意味で「リコール」を使用しています。
「リコール」の語源
「リコール」の語源は英語の “recall” です。
“recall” は、「re(再び)」と「call(呼ぶ)」の2つに分解することができます。元は、「呼び戻す」という意味の単語でした。
ここから派生し、英語の “recall” には多くの意味があります。
- 思い出す
- 思い出させる
- (不良品を)回収する
- 呼び戻す
- (解任するために)召還する
- 一般投票により、公職者を解任する
- 思い出すこと
- 記憶力
- 呼び戻し
- 取り消し
- 欠陥商品回収
- 一般投票による公職者の解任
「一度売れた商品を呼びかけて戻す」ということから、「不良品を回収する」という意味を持つようになりました。
また、「住民を再び呼び、もう一度選ばせる」ということから、「一般投票により、公職者を解任する」という意味も生まれました。
英語の “recall” の意味のうち、上記2つが伝わり、「リコール」が現在のような意味で定着しました。
「リコール」の類義語
「リコール」には以下のような類義語があります。
- 国民罷免
- 国民解職
まとめ
以上、この記事では「リコール」について解説しました。
英語表記 | リコール(recall) |
---|---|
意味 | 欠陥製品を生産者が公表し、無料で回収・修理・製品交換すること/国民・住民の意思により公職者を解職する請求をすること |
語源 | 「呼び戻す」という意味の英語 “recall” |
類義語 | 国民罷免、国民解職 |
「リコール」の2つの意味を正しく理解できたでしょうか。
「欠陥製品を生産者が公表し、無料で回収・修理・製品交換すること」という意味はなじみがある人も多いでしょう。しかし、「公職者を国民・住民の意思により辞めさせる請求をすること」という意味は、知らなかった人もいるのではないでしょうか。
どちらの意味でも、「リコール」という言葉はニュース等でたびたび使用されます。しっかり覚えておきましょう。