今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「投影(とうえい)」です。
言葉の意味、具体例、提唱者、英語訳、反対語についてわかりやすく解説します。
☆「投影」をざっくり言うと……
読み方 | 投影(とうえい) |
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意味 | 自分の感情や素質を認めたくないときに、それらを他人のものだと考えてしまうこと |
提唱者 | ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイト |
英語訳 | Psychological projection(投影) |
反対語 | 取り入れ |
「投影」の意味をスッキリ理解!
「投影」の意味を詳しく
「投影」とは、自分の感情や素質を認めたくないときに、それらを他人のものだと考えてしまうことです。
自分自身の心の中にある欲求や感情を自分が認めたくないときに、その感情や欲求を他人に押し付けてしまうのです。
これは「この感情が自分のものだと認めたくないから、他人のものだと考えよう」と意識的に行われるわけではありません。無意識のうちに思い込んでしまうのです。
たとえば、なんとなく嫌いだと感じる相手がいる場合に、自分が相手を嫌っているのにも関わらず、「相手が自分のことを嫌っているのだ」と思い込んでしまうのが「投影」です。
これは、「相手に明確な悪い部分がないのに不当に嫌っているという自分の感情を認めたくない」という気持ちから起こる現象です。
また、「相手が不当に嫌ってくるから、自分も嫌い」と、自分自身の不当な嫌悪感を正当化しようとする働きがあります。
「投影」の具体例
上で挙げたのは「自分のマイナスの感情を相手に投影する」という例です。
一方で、「自分の好意を相手に投影する」ということもあり得ます。
自分が片思いをしている相手がいる場合に、「相手も自分のことが好きに違いない」と思い込むことも「投影」です。
自分自身の一方的な好意を認められないため、その感情を相手に投影してしまうのです。
片思いの相手の細かい言動や仕草に、自分への好意を勝手に見出してしまいます。
「投影」の提唱者
「投影」の考えを提唱したのはイギリスの精神分析家であるアンナ・フロイトです。
「投影」とは、防衛機制のひとつです。
防衛機制とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムのことを指します。
この防衛機制という考えは、もともとオーストリアの精神科医であるジークムント・フロイトの研究から考えられたものです。ジークムント・フロイトは、精神分析の創始者だと言われています。
後にジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトが、父の研究をもとに正式に「防衛機制」を提唱しました。
ちなみに、「防衛機制」は「投影」のほかにも以下のようなものがあります。
- 退行:本来の自分より幼い時期の発達段階に戻ること
- 抑圧:つらい体験の記憶を無意識の中に封じ込め忘れようとすること
- 否認:心を閉ざしたり現実と向き合わないこと
- 打ち消し:恥ずかしい感情を打ち消すために、似たような行動や真逆の行動をすること
- 取り入れ:他人の感情や衝動を自分自身のものとして受け入れること
- 合理化:理由付けをして自分自身を納得させること
- 昇華:感情や衝動を社会的に望ましい方向に変化させ発散させていくこと
「投影」の英語訳
「投影」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Psychological projection
(投影)
“Psychological” は「心理的な」という意味の英単語です。
“projection” は「投影」「投射」「映写」という意味があります。「プロジェクションマッピング」などの言葉もあるので想像しやすいのではないでしょうか。
「投影」の反対語
「投影」の反対語は、「取り入れ」です。
「取り入れ」も防衛機制のひとつです。
他人の感情や衝動を自分自身のものとして受け入れてしまう、自分自身のものだと思い込んでしまうことです。
他者の感情を取り入れることで、自分自身の価値観を補強したり、他人との価値観や感情の衝突を回避したりする目的で起こります。
たとえば、相手から自分が理不尽に嫌われていると感じたとき、自分自身も相手を憎んでしまうことです。
まとめ
以上、この記事では「投影」について解説しました。
読み方 | 投影(とうえい) |
---|---|
意味 | 自分の感情や素質を認めたくないときに、それらを他人のものだと考えてしまうこと |
提唱者 | ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイト |
英語訳 | Psychological projection(投影) |
反対語 | 取り入れ |
「投影」は無意識のうちに起こりやすい心理現象です。意味や具体例をしっかりと理解しておきましょう。