「可能性」と「蓋然性」の違いとは?使い方から英語まで解説

違いのギモン

将来どうなるか、また事実がどうであるかを見積もる際に、「可能性」や「蓋然性」という言葉を用いることがあります。両者は、使う場面が非常に似ているため、厳密に意味の違いを押さえておく必要があります。

以下では、「可能性」と「蓋然性」の違いについて解説します。

結論:あるかないかを問う「可能性」、確からしさを問う「蓋然性」

「可能性」とは、ある物事を実現できる見込みや、ある事柄が事実である見込みのことです。

一方、「蓋然性」とは、ある物事が起こることについての確からしさを表す度合いのことです。

両者の違いは、物事が起きる見込みについて、価値判断を含むか否かという点にあります。

「可能性」をもっと詳しく


「可能性」とは、ある物事が現実になる見込み、また事実がそうである見込みのことです。後に解説する「蓋然性」との違いは、見込みが高いか低いかについての価値判断が含まれないという点です。

「可能性」は、あるかないか、という点がまず重要です。0%でなければある、と考えるのが「可能性」です。たとえば、エースと呼ばれるほど勉強のできる生徒が、「次のテストで平均点を下回る見込み」は、ないとは言えないわけです。この時、平均点を下回る可能性がある、と考えるのです。

しかし、現実としては、当該生徒は次のテストでも高得点を取ると考えるのが妥当でしょう。そうした考えを表現する際には、後に解説する「蓋然性」を用いることが適切です。

 

ここで、「可能性が高い」と表現するのはおかしいのかと感じる方もいるでしょう。ただ、「可能性」は本来、起こりうるかどうかという点に重きを置いている言葉であるため、「可能性」という言葉に高いか低いか等の意味付けはされていないのです。

そのため、「可能性が高い」と表現する際は、高いと評価したのは自分自身の尺度によるものであるということを意識しましょう。

未来への期待を表す「可能性」

「可能性」は、発展した未来を期待するというニュアンスで用いることもあります。カタカナ語では、ポテンシャルと表されます。

たとえば、「彼の卓越したスキルを見ていると、可能性を感じずにはいられない」といった文が考えられます。ここでの「可能性」とは、彼が将来目覚ましい活躍をする見込みという意味です。

「可能性」の使い方の例

  1. 今は晴れているが、1時間後に雨が降る可能性は、ないとは言えない。
  2. 氏名を記入し忘れた彼が、試験に合格する可能性はない。
  3. 彼が無事でいる可能性はなくはないが、あまりにも連絡がこないため、不安になった。

①では、ないとは言えない以上あると見なす「可能性」の特性が表れています。雨が降らないと言いきれない以上、降る可能性はあるわけです。

②では、起こりえない現実を指して「可能性はない」と言っています。氏名を書き忘れた答案用紙は、誰の得点にもなりませんよね。

③では、彼が無事であるということが事実かどうかについて、その見込みを検討しています。

「可能性」の英語訳

「可能性」の英語訳は、以下の通りです。

「可能性」の英語訳
  • possibility
    (起こりうること)
  • potential
    (発展する見込み)

それぞれを用いた例文は以下の通りです。

例文
  • There is a possibility that our team will beat that powerful opponent.
    (我々のチームが、あの強敵を倒す可能性だってあるんだ。)
  • He has a great potential for growth.
    (彼は、成長する可能性を大いに秘めている。)

「蓋然性」をもっと詳しく


「蓋然性」とは、物事が発生することについての確からしさの度合いを指す言葉です。「蓋」は、「蓋(けだ)し」と訓読でき、後に来る言葉に対して「確かに~である」というように確信を強める副詞の役割を果たします。

「可能性」との違いは、そこに「発生しやすい」等の価値判断や評価が含まれるという点です。

「蓋然性」は、「高い」や「低い」という言葉を使って表現されることがほとんどです。「蓋然性」は、ある物事が発生することに関して、どの程度確からしいと言えるのかに焦点を当てています。そのため、その確からしさがどの程度あるのか、つまり高いのか低いのかを合わせて表現するのです。

「蓋然性」と「確率」

物事が起こる確からしさを指す言葉には、「蓋然性」の他に「確率」があります。「蓋然性」と違い、「確率」は数値化がなされます

〇%といった形で、起こる見込みを数値化できるのが「確率」です。つまり、「確率」という言葉を用いる以上、対象となる物事には一種の法則性があるのです。たとえば、立方体のサイコロを振る時、どの目も平等に出やすいことから、それぞれの目が出る確率は 1/6 と表現できます。

逆に、「蓋然性」の場合は、数値化できない要素も含んで価値判断を下しています。たとえば、不調のサッカー選手が、次の試合で得点をする「確率」はと問われても、数値化は出来ません。とはいえ、不調なわけですから、得点するとは考えにくいでしょう。

以上のような場面では、「あの選手が得点する蓋然性は低い」と表現します。

「蓋然性」の対義語

「蓋然性」の対義語は「必然性」です。「必然性」は、確実にそうなること、そうなる以外にはありえないことを指します。つまり、100%を保証する言葉です。

「蓋然性」は、確からしさを表しますが、「確かに〇〇である」と言い切ることは出来ません。その点で、「必然性」との間には明確な線引きがあります。

「蓋然性」の使い方の例

  1. 快晴という予報が的中しているため、30分後に雨が降る可能性はあるが、蓋然性は低い。
  2. 蓋然性合理主義もよいが、どこか物足りない。
  3. 彼が犯人である蓋然性は高いように思われた。

①の「可能性はあるが、蓋然性は低い」とは、起こりうるが、起こるとは考えにくいということを言っています。快晴の予報がなされており、現に晴れている以上、雨が降る未来は考えにくいということです。

②の「蓋然性合理主義」とは、確実性にもとづき、よい結果が期待できない行動は切り捨てるという考え方のことです。株式投資に関してよく使われます。リターンが得られる確実性の高い選択をすることが、株式投資家にとっては極めて重要です。

しかし、新しい何かに手を付けることや、未知の領域を冒険する楽しさを感じたい人には、蓋然性合理主義はどこか物足りないのかもしれません。

③は、彼が犯人だと断言はできないものの、そうらしいと言えるだけの客観的な要素は揃っているという文意です。たとえば、当人に犯行の動機を見出すことができ、またアリバイもなく挙動が不審だった場合には、その人物に目星を付けるのが筋であるとも言えます。

ただ、100%そうだとは言い切れないという点に注意が必要です。

また、もう1つ注意すべき点は、「蓋然性」は、できるだけ客観的に判断されるということです。「確率」のように数値化は出来ませんが、不調の選手は得点しづらいなど、数値化できないながらも客観的な要素を伴った判断であるということをさえておきましょう。まったくの主観ではありません。

「蓋然性」の英語訳

「蓋然性」の英語訳は、probability です。例文は以下の通りです。

「蓋然性」の英語訳
  • Because he had caught a cold yesterday, there is a low probability that he will come to the school.
    (彼は昨日風邪を引いたから、今日学校に来る蓋然性は低い。)

まとめ

以上、この記事では、「可能性」と「蓋然性」の違いについて解説しました。

  • 可能性:ある物事を実現できる見込みや、ある事柄が事実である見込み
  • 蓋然性:ある物事が起こることについての確からしさを表す度合い
「可能性が高い」「可能性が低い」という表現を私たちはよく用いますが、「蓋然性」のニュアンスがそこに混じっているということを理解しておきましょう。両者を上手に使い分けられるとよいですね。