今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「ポピュリズム」です。
「ポピュリズム」の意味や使い方、語源、類義語、民主主義との違い、「ポピュリズム」の例についてわかりやすく解説します。
☆「ポピュリズム」をざっくり言うと……
英語表記 | ポピュリズム(populism) |
---|---|
意味 | エリート層に対抗して民衆の意見を重視し取り入れる政治体制や思想 |
語源 | 「人民」という意味のラテン語 “populus” から |
類義語 | 衆愚政治、大衆迎合主義、人民主義、民衆主義 |
民衆主義との違い | 感情や空気に流された民衆を扇動するという点 |
「ポピュリズム」の例 | アメリカのトランプ政権、ドイツのナチス・ドイツなど |
このページの目次
「ポピュリズム」とは?
「ポピュリズム」の意味を詳しく
「ポピュリズム」とは、エリート層に対抗して民衆の不満や願望を重視し取り入れる政治体制や思想ことです。
「ポピュリズム」には2つのポイントがあります。
- エリート層への反抗
- 愚かな民衆の扇動
エリート層への反抗
ここで言う「エリート層」とは、知識人や支配階級などのことです。日本で言うと高学歴の人や弁護士や医者や政治家など、なるのが難しい職業に就いている人を指すことが多いです。
「ポピュリズム」では、大衆が「エリート階級」に不満を抱き、対抗しようとします。
「ポピュリズム」では、人を「エリート層」と「一般市民」に二分化して、「エリート層」が悪、「一般市民」が善と決めつけます。
ここでの「エリート層」とは「一般市民」を騙して権力や利権を貪る人達であり、「一般市民」は善良で純粋無垢な人達であるのです。
愚かな民衆の扇動
「ポピュリズム」では大衆の不満や願望、意見を多く取り入れます。
この部分だけ聞くと、とてもいい政治体制に聞こえますが、「ポピュリズム」は否定的な意味で使われることが多いです。
なぜなら、「ポピュリズム」における「大衆」とは、政治についてある程度の見識があり、冷静に考えて合理的な判断を下すことができる民衆ではなく、一時的な感情や空気に流されて政治的態度を決める民衆のことを指すことが多いからです。
「ポピュリズム」では、政治的指導者が民衆の一時的で一面的な欲望をみたすことで人気を得て権力を維持します。
このような「ポピュリズム」は「衆愚政治(しゅうぐせいじ)」や「大衆迎合主義(たいしゅうげいごうしゅぎ)」などと訳されます。
「ポピュリズム」の使い方
- トランプ政権はポピュリズムの典型と言える。
- 同党の政策にはポピュリズムの傾向が強いものが多い。
- 年々、ポピュリズムへの批判が強くなっている。
- ポピュリズムと民主主義の違いは何であろうか?
「ポピュリズム」の語源
「ポピュリズム」の語源はラテン語の “populus” です。
“populus” とは「人民」という意味で、英語の “people” のもとになった単語です。
また、「ポピュリズム」は英語で “populism” と書きます。後半の “ism” は「主義」や「主張」を意味する接尾語です。
“ism” はラテン語の “isma” がもとになっています。
「ポピュリズム」の類義語
「ポピュリズム」には以下のような類義語があります。
- 人民主義
- 民衆主義
- 大衆迎合主義
- 衆愚主義
➋は「民主主義」と間違えないように気を付けましょう。
民主主義との違い
大衆の意見を取り入れる「ポピュリズム」は「民主主義」と何が違うのでしょうか。
これについては意見が分かれますが、大きな違いは「大衆」のレベルの差です。
「民主主義」では見識ある合理的な大衆を想定しています。
それに対して「ポピュリズム」における大衆は空気や感情に流されやすく冷静な判断を行うことができません。
また、「民主主義」における政治的指導者は民衆の意見を取り入れながらも、国の全体像を見て政策を行います。
それに対して「ポピュリズム」における指導者は、その場その場で多数派が求めることを行って喜ばせるだけで、国や政治がこうあるべきだという主軸がありません。
また、「ポピュリズム」では「エリート層」を敵視して反抗するということも重要です。
「民主主義」では、無理やりに敵を作る必要はありません。
「ポピュリズム」の例
アメリカ
アメリカの代表的な「ポピュリズム」はトランプ政権です。
トランプ氏がアメリカ国民の「移民問題への不安感」に対して「メキシコとの国境に壁を作る」という短絡的な政策や、国民の大多数を占める白人の中産階級をターゲットにした政策を出すことで当選したため「ポピュリズム」だと言われています。
フランス
フランスでは近年、ユーロ圏の離脱と移民の制限を主張している国民戦線という政党が注目を集めています。
この政党が移民問題などについて過激な主張をしているため「ポピュリズム」だと非難されることがあります。
イギリス
イギリスでは「英国独立党」という政党が「ポピュリズム」だと批判されています。
この政党は「移民の権利縮小」などを主張しています。
ドイツ
「ポピュリズム」を批判する際によく引き合いに出されるのが「ナチスドイツ」です。
勘違いしている人も多いのですがナチス党の党首であるヒトラーはただの独裁者ではなく、きちんと選挙で当選して、法律にのっとって政治を行っていたのです。
彼は徹底したプロパガンダによって民衆を煽り、自分の有利な法律を通して戦争を行いました。
その手法から「ポピュリズム」とされています。
まとめ
以上、この記事では「ポピュリズム」について解説しました。
英語表記 | ポピュリズム(populism) |
---|---|
意味 | エリート層に対抗して民衆の意見を重視し取り入れる政治体制や思想 |
語源 | 「人民」という意味のラテン語 “populus” から |
類義語 | 衆愚政治、大衆迎合主義、人民主義、民衆主義 |
民衆主義との違い | 感情や空気に流された民衆を扇動するという点 |
「ポピュリズム」の例 | アメリカのトランプ政権、ドイツのナチス・ドイツなど |
「ポピュリズム」という言葉は、ニュース番組や討論番組でよく耳にする言葉です。
しかし、「ポピュリズム」そのものの意味を詳しく知る機会はなかなかないと思います。
特に「民主主義」との違いはとてもややこしいです。
これを機に、しっかりと理解して使いこなせるようになりましょう。