ポリバレントとは「➀サッカーで複数のポジションをこなせる選手➁サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手」という意味です。
ポリバレントは、サッカーで重要になるスポーツ用語です。
しかし、もとは化学の分野で使われていた言葉ということもあり、難しい意味だと思いがちですよね。
この記事では、ポリバレントのもとの意味も含めて、詳しく解説していきます。
「ポリバレント」の意味
- サッカーで複数のポジションをこなせる選手
例:彼はポリバレントとして起用された。 - サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手
例:ポリバレントがチームに不足している。
意味➀:サッカーで複数のポジションをこなせる選手
ポリバレントのひとつ目の意味は「複数のポジションをこなせる選手」です。
サッカーには、以下のようなポジションが存在します。
- ゴールキーパー
自チームのゴールを守る選手。唯一、エリア内で手を使用できる - ディフェンダー・バックス
自チームのゴール寄りで、守備を行うポジション - ミッドフィルダー
フォワードとディフェンダーの間で、中継地点となるポジション - ボランチ
守備的な要素が強いミッドフィルダー - フォワード
敵チームのゴール近くで点を取りに行くポジション
また、選手の利き足や得意な形によって、右側のフォワード、左側のディフェンダーなどのように左右のポジションも分かれます。
選手には、特に得意なポジションというものが存在しますが、チームメンバーとの兼ね合いや戦術によって、それ以外のポジションを担わなければならない場面も存在します。
さらに、サッカーの公式大会では、チームメンバーとして登録できる選手の数が決まっています。
サッカーは、選手の怪我が多いスポーツなので、あるポジションをこなせる選手が1人しかメンバーに登録されていないのは危険です。
その選手が怪我をした際に、ポジションに穴が空いてしまうのです。
これらの理由から、ポリバレントの選手が好まれる傾向があります。
意味➁:サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手
サッカーには、ゴールキーパー以外に「このポジションの人以外はこれをしてはいけない」などのルール上の規制はありません。
そのため、ディフェンダーが攻撃に参加することも可能ですし、逆にフォワードが守備に加勢しても問題はありません。
このようなルールの中で、ひとつのポジションの中でも複数の動きができる選手を、ポリバレントということがあります。
例えば、ミッドフィルダーでも、以下のように複数の動きのパターンがあります。
- 中継地点として、ディフェンダーからフォワードにボールを回す
- 積極的に攻撃に参加する
- 相手がボールを持っている時には大きく後ろに下がって守備に回る
中継地点としての役割だけをこなすミッドフィルダーよりも、上記の3つをどれもこなせる選手の方が、戦術の幅が広がることがわかります。
「ポリバレント」の化学的な意味
ポリバレントは、もともと化学の分野で「多価」という意味を持つ言葉でした。
多価とは、「ひとつの分子の中に、官能基(かんのうき)が二個以上含まれている化合物」のことを表す言葉です。
官能基とは、化合物を特性づける原子の塊で、他の分子と結びつくことができるパーツでもあります。
つまり、化学におけるポリバレントは、他の物質と結び付くことができ、複数の性質を持った物質を表します。
「ポリバレント」の具体例
実際に、サッカーでポリバレントだと言われている日本人選手の例を見ていきましょう。
- 遠藤航(えんどう わたる)
センターバック・リベロ・ボランチなど複数のポジションをこなせる - 阿部勇樹(あべ ゆうき)
リベロからトップ下までこなすことができる - 田中マルクス闘莉王(たなか マルクス トゥーリオ)
リベロからセンターフォワードまでこなすことができる
どの選手も、その機能性を買われて、ワールドカップや国際試合のメンバーに選出されています。
具体例に登場したポジションには、以下のような役割があります。
- センターバック
相手フォワードを抑える役割 - リベロ
ディフェンスラインに位置しつつ、縦横無尽にボールに関わり続ける役割 - トップ下
フォワードよりやや低めに位置する攻撃的な役割 - センターフォワード
最前線でゴールを狙う役割
「ポリバレント」の語源
ポリバレントの語源は、「多価」という意味の英語 “polyvalent” です。
もともとは化学用語でしたが、「複数の性質を持つ物質」という意味から「複数のポジションをこなせる・動きができる選手」という意味でサッカーでも使われるようになりました。
日本では、当初ほとんど知名度のない言葉でしたが、日本代表の監督を務めていたイビチャ・オシム監督が好んで使っていたため、広く知られる言葉になりました。
オシム監督は、2006~2007年の間、サッカー日本代表の監督をしており、選手が複雑な動きができるかどうかを重視していました。
また、2018年5月には、サッカーワールドカップ日本代表の監督を務めていた西野朗(にしの あきら)の発言で、ポリバレントという言葉が再び話題になりました。
2018年の日本代表メンバーの発表の際、チームで活躍しており、「日本代表に選ばれるだろう」と思われていた中島翔哉選手が、メンバーに選出されなかったのです。
この落選理由を、西野監督は「中島選手は、1年間の活躍の中でポリバレントではなかった」というコメントで語っています。
つまり、西野監督にとっては、1つのポジションで大きく活躍できる選手より、活躍は派手でなくても複数のポジションをこなせる選手の方が重要であったことがわかります。
「ポリバレント」の使い方
ポリバレントは、「サッカーで複数のポジションをこなせる選手」「サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手」のどちらの意味で使われているのかを、文脈で判断する必要があります。
また、文法としては以下のように形容動詞的な使い方をします。
- 彼はポリバレントだ
- ポリバレントな選手
- ポリバレント〇〇
実際に、ポリバレントを用いた例文を見ていきましょう。
- 彼の、ポリバレントとしての活躍に期待しています。
- 君には、ポリバレントとしての動きを期待しています。
- 彼には、ポリバレント的な役割を担ってもらいたいです。
- 彼女は、世間で優秀なポリバレントだという評価を得ている。
- このチームには、ポリバレントな選手が不足していると思います。
- ポリバレントな動きが、最大の強みです。
- ポリバレントプレーヤーを獲得しなければなりません。
- ポリバレントプレーヤーである彼を失ったことで、チームは大きな損失を被った。
- 僕の強みは、ポリバレント能力です。
- 彼は、攻守ともに動けるポリバレントなミッドフィルダーです。
➀から⑧の例文のポリバレントは、「サッカーで複数のポジションをこなせる選手」「サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手」のどちらの意味ともとることができます。
➈の例文のポリバレントは、「サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手」という意味で使われています。
上記の例文には、以下のようなポリバレントが付く言葉が使われています。
- ポリバレント能力
一人の選手が複数の役割をこなせる能力 - ポリバレントプレーヤー
複数役割をフレキシブルにこなせるプレーヤー
「ポリバレント」の類義語
ポリバレントには以下のような類義語があります。
- ユーティリティープレーヤー
複数のポジションをこなすことができる選手
ポリバレントプレーヤーと、ユーティリティプレーヤーの意味は、公式な機関などで厳密に定義されているわけではありません。
そのため、両方の言葉をまったく同じ意味だと捉える人もいます。
その一方で、以下のような違いがあるという考えもあるのです。
- ポリバレントプレーヤー
一つのポジションで複数の動きができる選手 - ユーティリティプレーヤー
複数のポジションをこなすことができる選手
ユーティリティーという言葉には、「役に立つこと」という意味があります。
「ポリバレント」のまとめ
以上、この記事ではポリバレントについて解説しました。
英語表記 | ポリバレント(polyvalent) |
---|---|
意味 | ➀サッカーで複数のポジションをこなせる選手 ➁サッカーで一つのポジションで複数の動きができる選手 |
語源 | 「多価」という意味の英語 “polyvalent” |
類義語 | ユーティリティープレーヤー |
ポリバレントの意味だけではなく、類義語や語源もしっかりと理解しておきましょう。