「与党」と「野党」の違いとは?役割までわかりやすく解説

違いのギモン

「与党」と「野党」という言葉をテレビニュースで聞かない日はありません。「与党は法案を強行採決。野党は痛烈批判」などという見出しを新聞で見ることも時たまあります。

そのくらい「与党」という言葉と「野党」という言葉は報道番組の中での出現率が高い言葉です。

しかし、「与党」と「野党」の違いをみなさんしっかりと理解しているのでしょうか。「なんとなくはわかるけど詳しくはわからない」、そんな人が大半なのではないでしょうか。

今回はそんな「与党」と「野党」について詳しく解説していきます。

結論:「政権」を握っているかどうかの違い

政権を握っている政党を「与党」、そうでない政党の総称を「野党」といいます。

そもそも「政党」とは何か

「与党」と「野党」の違いを解説するためにはまず、「政党」とは何かを解説しなくてはいけません。

「政党」とは、ある程度の政治的思想やスタンス、目的を共有した政治的集団のことを指します。「徒党を組む」という日本語からもわかるように「党」という字には「仲間」や「集団」という意味があります。

つまり、「政党」とは「政治的な党」「政治的な仲間」「政治的な集団」という意味になるということです。

 

では、なぜ「政党」を組む必要があるのでしょうか。

なぜなら、現代の政治的仕組み、つまり民主主義は「多数決原理」に則っているからです。「多数決原理」とは、なにかの決定をする際に多数派の意見をその集団の意見にするルールのことです。日本の政治のありとあらゆる仕組みにも、この「多数決原理」が採用されています。

つまり、何かの決定の際に、自分の意見を通そうと思ったら自分は「多数派」でなくてはいけません。自分が「少数派」だったとしたら自分の意見を通すことはできません。自らの意思を通すためには、仲間を作って、協力してもらい、自分が「多数派」になる必要がある、ということです。

 

このことは、田中角栄(第64・65代内閣総理大臣)が放ったとされる格言、「政治は数だ、数は力だ」によく表れています。

「数」がなければ、「力」を持てないのです。それが「政党」が組まれる理由というわけです。

「与党」についてもっと詳しく


「与党」とは一言で言うと「政権を握っている党」のことを指します。「与」という字には「くみする」「仲間になる」「味方をする」という意味があります。

だから「与党」は「政府に味方をする党」「政権を握っている党」という意味になるのです。

 

また、「与党」を英訳すると、government party もしくは ruling party となります。

government は「政府」、ruling は「支配的な」、party は「党」という意味なので、前者は「政府党」、後者は「支配的な党」という日本語訳になります。

このことからも「与党」が「政権を握っている党」であるということがわかります。

 

では、具体的に「政権を握っている」とはどういった状況でしょうか。

「政権」とは、読んで字のごとく「政治をする権利」です。つまり、それを持つ与党は、ある程度、自分の意見を通すことができるということです。

日本は民主主義国家であり、「多数決原理」を採用していることは先ほど説明した通りです。そして、そのような制度の上で「自分の意見を通す」ためには「多数派」でいることが必要であるということもまたそこで説明しました。

 

つまり、「政権を握っている」ということは国会の中で「最大多数派」であるということです。

選挙に勝利し、最も多い議席を獲得し、自分たちの意見を国会である程度通せるようになった党のことを「与党」と呼ぶのです

国会は「立法権」、つまり法律を作る権利を持つ唯一の機関です。与党はその国会の議席の大多数を占めているので、ある程度自分たちの考えを法律に反映させることができます。

 

また、日本のように「議院内閣制」をとっている国の場合、この立法権に加え、与党は「行政権」にも大きく干渉することができます。

なぜなら「行政権」を持つ機関である内閣の長、内閣総理大臣は国会議員の中から多数決によって決定されるからです。国会の中での最大勢力は与党ですので、当然与党の中から選出されます。

ほとんどの場合、その党のトップである「党首」が内閣総理大臣になります。

 

また、総理大臣は他の国務大臣の任命権を持っています。その権利を使い、自分の仲間、つまり同じ党のメンバーを国務大臣に任命することもできます。

以上のことから分かるように、与党は行政に関しても非常に大きな力を持ちます。

「議院内閣制」とは

政府(内閣)が議会(国会)を母体として成立し、また政府(内閣)が議会(国会)からの信任を得て初めて存在できる制度のことを指します。

これと対照的な制度がアメリカなどで採用されている「大統領制」です。「大統領制」は「議院内閣制」とは違い、政府(大統領)と議会はそれぞれ独立して存在しています。

「議院内閣制」の場合、国民が選挙した国会議員の中から内閣総理大臣(行政の責任者)が選出されますが、「大統領制」の場合、「大統領選挙」と「議員選挙」は別々に行われます。それは、上記したように、互いに独立した機関だからです。

「野党」についてもっと詳しく


「野党」とは一言で言うと「政権を握っていない党」の総称です。与党ではない党をまとめて「野党」と呼びます。

ちなみに「野党」は英語では non-government party (非政府党)や the party out of power (権力から外れた党)、Opposition (反対勢力)と称されています。

 

先ほど触れた通り、与党は国会内での最大勢力です。ということは、自明に野党は少数派の側に回るわけです。そして再三言っているように、民主主義は多数決原理に則っています。

ならば、少数派である野党には法律を通すこともできず、総理大臣や国務大臣を出すこともできず、なにもすることができないのでしょうか。

全くもってそんなことはありません。野党の議員も国民によって選挙されています。もしも野党の議員がなにもすることができなかったら、その議員に票を投じた国民の意思が蔑ろにされることを意味します。国民の意思が軽視されるようでは民主主義とは言えません。

 

では、野党の仕事は一体なんなのでしょうか。それは与党を監視し、暴走を防ぐことです。

与党は確かに国会の最大多数派です。つまり、国民の大多数が支持している政党ということになります。しかし、選挙の際に与党に票を投じていない人もまた同時に存在します。

そういった状況の下で、与党が自分たちの意見をそのまま修正を加えずに押し通していけば、与党に投票しなかった、つまり与党に賛同していない国民の意見が無視されることとなります。

 

民主主義の理念は「自分たちのことは自分たちで決める」ということです。無視される声があればそれは民主主義ではありません。

「無視される声」が出ないように、与党と熟議を重ね、妥協点を探し、別の視点を与え、調整を行っていく。それが野党の役目です。野党がきちんと機能しなければ、与党を支持する国民だけしか満足できない、非常に偏屈な政治になってしまいます。

野党は野党で大変重要な役目を担っているということです。

まとめ

以上、この記事では与党と野党の違いについて解説しました。

  • 与党:政権を握っている党。国会や内閣を主導していく役割を持つ。
  • 野党:政権を握っていない党の総称。与党を監視し、暴走を防ぐ役割を持つ。

よく「野党は与党に対して文句ばっかり言っている」というような批判を耳にしますが、それは間違っています。与党のやることを監視し、口出しし、改善を目指すのが野党の仕事なのです。

野党が口出しをしていないことがもしあったら、それは与党の出した案がよほど完璧か、野党が本来の仕事を放棄しているということになります。