「及び」と「並びに」の違いとは?意味から使い方までわかりやすく解説

違いのギモン

「及び」と「並びに」は、ほとんど同じ意味で使われますが、ニュアンスが異なる言葉です。

今回は「及び」と「並びに」の違いについて解説します。

結論:「及び」は同じレベル、「並びに」は違うレベルのものごと

「及び」と「並びに」には、次のような違いがあります。

  • 及び(および)同じレベルの物事を並べる語
  • 並びに(ならびに)異なるレベルの物事を並べる語

「及び」をもっと詳しく


「及び(および)」は、「同じレベルの複数の物事を並べる語」です。

「○○と△△」などいくつかの物事を並べるときに、「○○及び△△」と表現することができます。ここで「○○」と「△△」は同じレベルや同じ種類である必要があります。

たとえば、「一月及び三月は下水道の工事のためトイレが使用できなくなります」というように使います。「一月」と「三月」は同じ暦の中の月であり、同じ種類とみなせます。

 

「及び」を使う際に、読点(、)を打つ必要はありません。打ちたい場合は「○○、及び△△」と「及び」の前に打ちます。

三つ以上の物事を並べるときの「及び」の使い方

「○○」と「△△」と「□□」を並べる場合、「○○、△△、及び□□」と表現します。

一般的に、「○○及び、△△、□□」という並べ方は行われません。

四つ以上に増えても、「及び」を最後に持ってきます。

「及び」の使い方の例

及び」を使用した例文を以下に示します。

  1. 野球及びソフトボールは、一時的にオリンピックの種目となることに決定された。
  2. わが校の受験科目は数学、理科、及び英語である。

①の「及び」は、野球とソフトボールという競技を並べています。野球とソフトボールは似た競技であるため、同列に扱っています。

②の「及び」は、数学と理科と英語という科目を並べています。どれも授業の科目であるため、同列に扱っています。

「並びに」をもっと詳しく


「及び(および)」は、「異なるレベルの複数の物事を並べる語」です。

「○○と△△」などいくつかの物事を並べるときに、「○○並びに△△」と表現することができます。「及び」とは異なり、「○○」と「△△」は異なるレベルや異なる種類だというニュアンスを持ちます。

たとえば、「氏名並びに電話番号」というように使います。「氏名」と「電話番号」は種類の異なる情報であるため、「並びに」と表現されます。

何を同列として扱い、何を扱わないかは使う人の裁量に任せられています。

「並びに」の使い方の例

並びに」を使用した例文を以下に示します。

  1. 危険物質を取り扱う研究室の教授並びに学生は、来月の健康診断を受ける義務があります。
  2. 履歴書、マイナンバーカードの写し、並びに筆記用具をご持参ください。

①の「並びに」は、教授と学生を並べています。しかし、教授と学生は立場が違うため、同列に扱わないように「並びに」が使われています。

「○○様並びに…」「先生並びに…」などの表現は、あらたまったイベントの挨拶や、書籍のあとがきなどによく使われる表現です。「並びに」は丁寧な言葉として扱われることが多いく、敬語と共に使われる傾向があります。

②の「並びに」は、履歴書とマイナンバーカードの写しと筆記用具を並べています。「履歴書」と「マイナンバーカードの写し」の2つが書類であるのに対し、「筆記用具」は書く道具であり書類ではありません。したがって、履歴書とマイナンバーカードの写し違うため「並びに」が使われています。

法律や公用文・公文書における「及び」「並びに」

法律や公用文・公文書における「及び」「並びに」の使い分けには、厳密なルールがあります。

上述した使い方は、日常生活における一般的な使い方です。

しかし、法律用語や公用文や公文書における「及び」と「並びに」は、それぞれに定められたルールで使う必要ががあります。

法律における「及び」と「並びに」の使い分け

法律において、「並びに」は単独で使用しません。「並びに」は「及び」と併用する形で使われます。

たとえば、「学生及び保護者並びに職員の同席が必要」というように使われます。「学生」と「保護者」は「及び」を使って同列に、それとは別の立場にある「職員」は「並びに」を使って区別しています。

「及び」と「並びに」の類義語

「及び」と「並びに」には以下のような類義語があります。

  • かつ:二つの物事が並行して行われること
  • 加えて:現在あるものの上に付け足す語
  • そして:前述の内容を受けて、さらに付け加えることを表す語
  • さらに:その上に、重ねて
  • また:他にも述べる事があり、それを続けて言う時に使う語

「及び」と「並びに」の対義語

「及び」と「並びに」には以下のような対義語があります。

  • もしくは:どちらか一方を選択するのに用いる語
  • または:どちらか一方を選択するのに用いる語
  • 或いは(あるいは):どちらか一方を選択するのに用いる語、もしかすると

「もしくは」と「または」は、日常会話で同じ意味として使われます。

法律用語として使用する場合は、ニュアンスが異なります。法律用語では、種類の違う選択肢がある場合、選択肢のなかの大きなくくりを「または」でつなげ、小さなくくりを「もしくは」で繋げます。

「及び」と「並びに」の英語訳

「及び」と「並びに」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • and
    (~と~)
  • as well as
    (~だけでなく~も)

まとめ

以上、この記事では、「及び」と「並びに」の違いについて解説しました。

  • 及び:同じレベルの物事を並べる語
  • 並びに:異なるレベルの物事を並べる語
「及び」と「並びに」の使い分けによって、物事を同列に扱うかどうかを表現できます。適切に使い分けましょう。

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シェスカ
公的文章に詳しい大学院生。 学術論文や特許の執筆を得意としています。 スッキリではその知識を活かし、専門用語の解説を担当しています。