「オーバーオール」と「サロペット」は、どちらも胸当てと吊り紐(つりひも)がついたズボンのことを指します。
それでは、両者にはどのような相違点があるのでしょうか。そう問われると、どのように区別するのか気になりませんか。
この記事では、「オーバーオール」と「サロペット」の違いについて解説します。
結論:言語とデザインが異なる
- オーバーオール:英語。背中が布で覆われる。布や丈の種類が少ない
- サロペット:フランス語。背中で吊り紐が交差する。布や丈は様々
「オーバーオール」をもっと詳しく
1848年、アメリカでは金の採掘が盛んになりました。作業員たちは、採掘によって服が汚れてしまうことを悩んでいました。
そこでうまれたのが「オーバーオール」という作業着でした。「オーバーオール(Overall)」とは、英語で「すべてを覆う」という意味です。
この名前の通り、「オーバーオール」は、服を覆うようなデザインなのです。胸と背中を覆う布がついていて、ズボンの丈も足首までの長さがあるため、中に着ている服が汚れるのを防ぐことができます。
また、当時の「オーバーオール」の柄は細かいストライプで、ついた汚れが目立たないようになっていました。さらに、厚手の生地が使われ、安全性も高かったのです。
このように、新しい作業着として「オーバーオール」が普及したのです。
その後、腕や首元など、「オーバーオール」では覆えなかった箇所も覆う「つなぎ」という作業着がうまれました。このため、「オーバーオール」は「つなぎ」に取って代わられ、重労働を行う現場では使われなくなりました。
しかし、「オーバーオール」の独特なデザインはやがて人気を集め、作業着としてのみならず、私服としても親しまれるようになったのです。
現在でも、胸と背中の部分を布で覆っているという点は変わりません。
しかし、生地や柄には変化がありました。19世紀当時のように細いストライプ柄の入った厚手の生地ではなく、無地のデニムを使ったものが主流になったのです。
つまり、「オーバーオール」の特徴は以下のようになります。
- 英語
- 胸と背中を布で覆っている
- 十分丈
- 無地のデニムが主流
「サロペット」をもっと詳しく
前項で、「オーバーオール」はアメリカで生まれた作業着であると解説しました。
私服として人気を博した「オーバーオール」は、フランスにも普及しました。そこで、フランス語で「サロペット(Salopette)」という名前がついたのです。
「サロペット」も「オーバーオール」と同じように胸当てと吊り紐がついているものの、細かいデザインが異なるのです。
まず、「サロペット」は、吊り紐が背中で交差しています。また、素材はデニム以外にも、コーデュロイやスエード生地など、様々な種類があります。
無地のものもあれば、柄が入っているものもあります。さらに「サロペット」は、十分丈だけでなく七分丈のものも多いことが特徴です。
つまり、「サロペット」には以下のような特徴があります。
- フランス語
- 背中で吊り紐が交差している
- 丈・生地・柄は様々
まとめ
以上、この記事では、「オーバーオール」と「サロペット」の違いについて解説しました。あらためて、両者の相違点を表でおさらいしましょう。
オーバーオール | サロペット | |
---|---|---|
言語 | 英語 | フランス語 |
背中部分のデザイン | 布が背中を覆っている | 吊り紐が交差している |
生地 | デニム地が主流 | いろいろな布 |
丈 | 十分丈が多い | 七分丈など様々 |
なお、近年では両者の違いはあいまいになりつつあります。
たとえば、日本のアパレル業界では、デザインや材質の違いではなく、着る人の性別で両者を区別する場合もあります。男性用は「オーバーオール」、女性用は「サロペット」と区別するのです。
胸当てと吊り紐がついているズボンが売られているのを見かけたら、定義に従って「オーバーオール」「サロペット」と区別されているのか、それとも定義にこだわらずに名づけられているのか、チェックしてみるのもおもしろいですね。