敬語は日本語ならではの表現です。
そして、敬語は日本人にとっても難しく、きちんと使える人は多いとは言えないでしょう。
しかし、間違えた言葉を使ってしまうと、時に失礼な人だと思われて、社会的信用を失ってしまう場合があります。
なので、きちんと敬語を理解しておくことは重要です。
例えば、「お疲れ様です」と「ご苦労様です」はそれぞれ、目上の人に使うと失礼でしょうか、それとも失礼ではないでしょうか。
今回はそんな「お疲れ様です」と「ご苦労様です」の違いについて解説していきたいと思います。
結論:目上に使うと失礼かどうかが違う
一方、「ご苦労様です」にはねぎらう気持ちがこめられていて、目下が目上に使うと失礼です。
つまり、「お疲れ様です」と「ご苦労様です」では目上の人に使うと失礼かどうかが異なるのです。
「お疲れ様です」をもっと詳しく
「お疲れ様です」には相手をいたわる気持ちがこめられていて、目下が目上に使っても失礼ではありません。
そして、単に挨拶して使われることも多くあります。会社などでは頻繁に「お疲れ様です」という挨拶が飛び交いますよね。
この言葉は皮肉ではない限り、誰が誰に使っても失礼ではないとされているので、「ご苦労様です」に比べるとずっと無難な表現です。
ちなみに、厳密に言うと、この言葉の用法は大きく 2 つにわけることができます。
まず 1 つめは他人がなんらかの労働を行っていた時に、それをねぎらう用法です。
例えば、客がレストランの従業員に「いつもお疲れ様です」と言った場合、これはレストランの従業員が労働を行っているのをねぎらっていますよね。
次に 2 つめは共同で労働や作業を行っていた人同士がお互いをねぎらう用法です。
例えば、職場で同僚へすれ違いざまに「お疲れ様です」と言った場合、この用法になります。
そして、2 つめの用法で使われることが多いでしょう。
ちなみに、「お疲れ様です」という言葉は今でこそ目上に使っても失礼な言葉ではありませんが、昔は目上に使うと失礼だというのが常識でした。
なぜなら、古くから日本には目上の人に対しては評価をしたり、ねぎらいの言葉をかけたりしてはいけないという決まりがあったからです。
ちなみに、厳密には目上の人に対してお礼を言うことすら失礼なことであるとされていました。
そして、「お疲れ様です」は相手をいたわるというニュアンスはあるものの、ねぎらいの言葉にあたるため失礼とされていたのです。
しかし、現代では目上の人に「お疲れ様です」と言うのは許容されるべきとされています。
なぜなら、「お疲れ様です」という言葉は現代社会で完全に浸透してしまっているからです。
また、現代の言葉にはほかに妥当な表現が見当たらないという理由もあります。
ただ、年配の人の中には「お疲れ様です」と言われると不快だと感じる人もいます。
そのため、そのような考えを持つ人に対してはこの言葉を使わないようにしたほうが無難でしょう。
「ご苦労様です」をもっと詳しく
「ご苦労様です」にはねぎらう気持ちがこめられていて、目下が目上に使うと失礼です。
具体的には自分に対して直接的・間接的に利益をもたらす労働や作業に従事した人をねぎらう時に使われます。
つまり、相手に対して苦労をかけたという文字通りの言葉なのです。
また、人の労をあざ笑う時に使われるあります。
そのため、「ご苦労様です」には「えらいね」、「頑張ったね」などの少し上から目線のニュアンスがこめられていると言えます。
なので、「ご苦労様です」を目下の人が目上の人に使ってはいけません。
また、家族や同僚など地位が同じ人に対してもあまり使わないほうが無難でしょう。
つまり、「ご苦労様です」は目上の人が目下の人に使うのが一番適切だと言えます。
ちなみに、「ご苦労様です」は「お疲れ様です」とは対照的に昔は目上に使っても失礼ではなかったのではないかと言われています。
なぜなら、江戸時代にはこの言葉は目下が目上に使う言葉であるとされていたからです。
その後、明治時代でもまだその傾向はあり、大正時代からだんだん目上に使うと失礼であるという認識が広がっていったのではないかと言われています。
そして、現在ではもちろん目上に使うと失礼な言葉です。
まとめ
以上、この記事では、「お疲れ様です」と「ご苦労様です」の違いについて解説しました。
- お疲れ様です:相手をいたわる気持ちがこめられていて、目上に使っても失礼ではない
- ご苦労様です:ねぎらう気持ちがこめられていて、目上に使うと失礼
「ご苦労様です」は上司に使うと失礼な言葉だったんですね。日常では「お疲れ様です」と言ったほうが無難かもしれません。