「収める」と「納める」と「治める」と「修める」の違いとは?

違いのギモン

同音異義語。国語の授業で何度もテーマにされ、受験でも必ずと言っていいほど出題される鉄板のジャンルです。実際に漢字検定の1級~7級の出題範囲すべてに同音異義語が含まれており、同音異義語の理解は非常に重要だということがわかります。

「ややこしくてよくわからない」という苦手意識を持っている方も多いと思いますが、理解してしまえばとても面白いものなんです。

今回は、同音異義語の中でも誰もが一度は頭を抱える「収める」「納める」「治める」「修める」の違いを解説していきます。

☆「収める」「納める」「治める」「修める」の違いをざっくり言うと……

収める残す(記録する。好ましい結果を手に入れる)
納める終わる・渡す
治める回避(混乱が起こらないようにする)
修める自己発展(自分を高める)

結論:「残す」「終わる・渡す」「回避」「自己発展」

「収める」「納める」「治める」「修める」の違いを分かりやすくまとめたものが以下の表になります。

収める残す(記録する。好ましい結果を手に入れる)
納める終わる・渡す
治める回避(混乱が起こらないようにする)
修める自己発展(自分を高める)

 

「収める」をもっと詳しく

「収める」には以下のような意味があります。

  1. 記録に残す
  2. 成果を残す

①の意味では「カメラに収める」「収録する」、②の意味では「勝利を収める」「成功を収める」という風に使います。

 

「納める」をもっと詳しく

「納める」には以下のような意味があります。

  1. その動作で終わりとする
  2. 受け取り手に渡す

①の意味では「仕事納め」「見納め」、②の意味では「月謝を納める」「得意先に商品を納める(納品)」という風に使います。

「治める」をもっと詳しく

「治める」には「統制する」の意味があり、「国を治める」という風に使います。

「統治」「政治」「治水(川から水があふれるのを防いだりすること)」のような熟語を思い浮かべると理解が深まります。

「修める」をもっと詳しく

「修める」には以下のような意味があります。

  1. 行いを正しく整える
  2. 学問・技芸を身に付ける

①の意味では「身を修める(修身)」、②の意味では「オランダ医学を修める」「博士課程を修める」という風に使われます。

以上では「収める」「納める」「治める」「修める」の独自の意味について解説しました。ただ、中には似ている意味を持つものがあります。以下ではそれらの違いについて見ていきます。

似た意味を持つもの1(収める・納める)

「収める」「納める」には「ものを中に入れる」という共通する意味があり、「収納」という熟語がそれに当たりますが、「収める」と「納める」にはニュアンスの違いがあります。

簡単に言うと「義務があるかないか」です。義務があるのが「納める」、義務がないのが「収める」です。

  • 納税・納期
  • 収集・収容

納税しなければならない義務がありますし、納期必ず守らなければならない締切です。しかし収集収容には単に「ものを入れる」という意味しかなく、そこに強制力はありません。

似た意味を持つもの2(収める・治める)

「収める」「治める」には「乱れをしずめる」という共通する意味があり、「丸く収まる」「せきが治まる」がこれに当たりますが、こちらにもニュアンスの違いがあります。

「落ち着かせる」という意味が強いのが「収める」で、「正しくする」という意味が強いのが「治める」です。

「収束」や「治安」を思い浮かべるとわかりやすいです。

まとめ

以上、この記事では、「収める」「納める」「治める」「修める」の違いについて解説しました。
最後にもう一度、下記の表を確認しましょう。

収める残す(記録する。好ましい結果を手に入れる)
納める終わる・渡す
治める回避(混乱が起こらないようにする)
修める自己発展(自分を高める)

 

一口に「おさめる」と言っても、その意味や使い方は多岐(たき)に渡っていることがわかりました。特に「収める」は「納める」や「治める」と重なる意味を持っていて、ニュアンスの違いで使い分けがされていることを押さえておきましょう。

それらをやみくもに暗記するのではなく、上の表のように一言で表してイメージをつかみ、合わせて熟語を覚えれば効果的に使いこなせるようになれるでしょう。

「収める」「納める」「治める」「修める」の違いを見事に「修めた」そこのあなたは、立派な同音異義語マスターです。

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mikan
愛読書は広辞苑。 日本語の持つゆかしさや含み、趣深さが大好きです。大学では音声学・日本語学を専攻しました。 慣用句や四字熟語が得意分野です。