あったかいお風呂にのんびり浸かっていると、体が元気になる感じがしますよね。とりわけ温泉に入っていると気持ちがいいものです。
温泉といえば「体によさそう」「あったかくて気持ちいい」というイメージを持つ人が多いと思います。
では、「鉱泉」と聞いてイメージがわきますか?「温泉」と「鉱泉」は似ているようで違います。
結論:ガスは温泉に入るけど鉱泉には入らない
鉱泉は基準を満たした「地中から湧出する温水および鉱水の泉水」と決められています。
つまり、温泉に含まれる「水蒸気その他のガス」は、鉱泉には含まれません。
ガスが「温泉」に含まれるのは意外に思われるかもしれません。
「温泉」と「鉱泉」の定義
温泉の条件は、以下の条件のどれかを満たしている地下水やガスであることです。
- 25℃ 以上
- 1kg あたりの溶存物質(ようぞんぶっしつ:水を蒸発させて残る物質)が 1000mg 以上
- 19種類の成分の少なくとも一つが規定量以上
この定義は、1948年に定められた「温泉法」に書かれています。温泉についての法律があるのは意外に思う人も多いでしょう。
実は鉱泉の条件も、温泉の条件と同じです。ただ、ガスは含まれなくなります。その点だけが異なっています。
鉱泉の定義は、2002年に改訂された環境省の「鉱泉分析法指針」によっています。鉱泉も、法律ではないものの、国が決めたルールがあるのです。
水じゃないのに「温泉」ってどういうこと?
先ほど、ガスも温泉に含まれる場合があることを紹介しました。一つ例をあげてみます。
日本最大の宿泊客数を誇る箱根温泉郷では、「造成温泉」が温泉全体の3割で使われています。
造成温泉とは、火山から出てくる高温のガスを水に含ませて作られた温泉水です。図のように温泉水が「造成」されています。
[出典:https://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/6,580,17,121,html]
この場合、蒸気自体が「温泉」なので、できあがった水は温泉水に含まれます。
慣用的には冷たい「鉱泉」
温かい湧き水も「鉱泉」に含まれると聞いて、違和感を感じるかもしれません。「鉱泉」は冷たいもの、というイメージを持つ人も少なくないでしょう。
ヨーロッパでは古くから温泉水や鉱泉水を健康のために飲む習慣がありました。火山の少ないヨーロッパでは、温泉と言っても温度が高くありません。
「ぬるい温泉」も、「冷たい鉱泉」も、ミネラルを求める人びとに愛されてきました。
ミネラルウォーターの訳語は「鉱泉水」です。鉱泉と鉱泉水では定義が違いますが、このあたりが「鉱泉は冷たいもの」というイメージにつながっているのでしょう。
実際、温泉法が作られる前は、温泉は温かいもの、鉱泉は冷たいもの、と呼び分ける習慣がありました。
今でもその名残で、環境省の指針では 25℃ 以下の温泉水を「冷鉱泉」と呼ぶことにしています。たとえば、塩分を多く含む温泉の場合、25℃ 以上では「塩化物泉」と呼びますが、 25℃ 以下では「塩化物冷鉱泉」となります。
現在でも、源泉の温度が 25℃ 以下の温泉では、「〇〇鉱泉」と名乗っているところが数多くあります。
たとえば、東京・上野にある「六龍鉱泉」は戦前からの歴史を持ち、今でも「鉱泉」の名前を守っています。
まとめ
以上、この記事では、「温泉」と「鉱泉」の違いについて解説しました。
- 温泉:25℃以上または成分が基準量以上の湧き水・ガス
- 鉱泉:25℃以上または成分が基準量以上の湧き水
違いを図にしてみました。鉱泉は温泉よりも狭い定義なのですね。