「遵守」と「順守」。どちらも「決まりを守る」というような意味を持っています。しかし、2つの異なる漢字が使われている以上、何か違いがあるはずです。
「遵守」と「順守」の間には、一体どのような違いがあるのでしょうか。今回は、紛らわしい2つの漢字について解説していきます。
結論:「遵守」も「順守」も同じ意味
「遵守」をもっと詳しく
「ルールや法律などに背かず、従うこと」を「遵守」といいます。「順守」も同じ意味ですが、公用文書や教科書、ビジネス文書などでは「遵守」が使われることが多いです。
「辶(しんにょう)」は道路を表す「彳」と、足を表す「止」が合わさった部首です。そのため「道、道を歩くこと、進むこと」などの意味があります。
一方「尊」という字は、酒樽を表す「酉」と両手を表す「寸」が合わさった漢字です。酒樽を両手で差し出すイメージで、「うやまう、身分が高い、非常に価値ある」といった意味を持っています。
「遵」という字には、「辶」と「尊」が組み合わさり、「筋道に従う、規則を守る、決まりに従う」という意味があります。「順守」という言葉には、このような「遵」のイメージが色濃く反映されています。
他に「遵」を使った言葉としては、「遵法」という言葉があります。これは「法律を尊重し、守る」という意味があります。
「順守」をもっと詳しく
「ルールや法律などに背かず、従うこと」を「順守」といいます。「遵守」も同じ意味ですが、新聞業界・放送業界では「遵守」が使われることが多いです。
元々は「遵守」という言葉だけがあり、「順守」という言葉はありませんでした。
しかし昭和29年3月15日の国語審議会第20回総会で、当用漢字(法令・公用文書・新聞・雑誌など、日常で使用する範囲の漢字)に対する再検討の報告がなされました。その中の「当用漢字から漢字を減らす場合の候補漢字」の中に「遵」が含まれていました。
これを受けた新聞協会は、新聞に「遵」を使わない方針を打ち出し、「遵守」の代用語として「順守」がつくられました。その後昭和56年に当用漢字は廃止となり、常用漢字が設定されました。常用漢字の中に「遵」は含まれていたため、「遵守」という使い方も相変わらず定着しています。
新聞社は「遵」が常用漢字として残り続けても、あえて「遵守」を使うことはせず、「順守」という表現を変えませんでした。
「遵法」という言葉もありますが、こちらも新聞社や放送業界では「順法」と書きます。同じく「法律を尊重し、守る」という意味です。
まとめ
以上、この記事では、「遵守」と「順守」の違いについて解説しました。
- 遵守:昔からある表現
- 順守:昭和に新しく作られた表現
「遵守」と「順守」は、意味としてはまったく同じです。両者は同音同義語別漢字の熟語になります。しかし、歴史があり、難しい分「遵守」の方がフォーマルでかたいイメージがあります。
昭和には「人に歴史あり」というテレビ番組がありましたが、どうやら漢字にも歴史があるようです。気になる漢字があったら、調べてみると、何か面白い発見があるかもしれません。