皆さんは「栄養士」という職業を知っていますか？「小学校の給食を考える人」くらいの認識でしょうか。それとも単に「栄養のエキスパート」という印象でしょうか。どちらにしても「栄養士」という言葉自体を耳に挟んだことはあると思います。
それでは「管理栄養士」はどうでしょうか。こちらはあまり馴染みのない人や聞いたことがない人がいるかもしれません。
「栄養士」と「管理栄養士」。どちらも「栄養の専門家」であることには変わりませんが、両者には様々な違いがあります。今回はこの2つの職業について解説していきます。
結論：管理栄養士はより専門的で高度な栄養士
「栄養士」も「管理栄養士」も栄養指導や栄養管理を行う仕事です。しかし「管理栄養士」は「栄養士」よりも難易度が高く、仕事の幅が広いです。施設によっては「管理栄養士」を置くことを義務付けられています。
栄養士
栄養士とは、様々な機関・施設で栄養の指導を行う職業のことです。学校、一般企業、病院の他、保育園や給食会社など給食や食事を提供する幅広い現場で活躍します。
「栄養士」は厚生労働大臣から認可された学校の課程を履修し、卒業することで資格を得ることができます。学校の中には、修業年限が2年の学校から4年の学校までありますが、どの学校を卒業しても同様の栄養士の資格となります。
栄養士は都道府県知事が認定する資格です。
管理栄養士
管理栄養士とは、栄養士の中で「複雑又は困難なものを行う適格性を有する者として登録された栄養士」です。つまりより専門的な知識を有した栄養士のことです。
例えば、病院では患者ごとに病状や体力は異なり、高度な栄養管理が求められます。医師や看護師とコミュニケーションをとりつつ、栄養管理や栄養指導で中心的な役割を担うためには、管理栄養士の専門的な知識が必要になります。
管理栄養士になるためには「管理栄養士国家試験」に受験し、合格する必要があります。これは通常の栄養士とは異なり、厚生労働大臣により認定された国家資格です。給料は雇用形態や勤務先等で異なりますが、平均収入は栄養士より高くなります。
管理栄養士になるためには
管理栄養士になるためには、大きく2つの方法があります。
- 管理栄養士養成課程（4年制）に入学し、卒業後に管理栄養士免許取得
- 栄養士免許取得後、栄養士実務を経て管理栄養士免許取得
後者の栄養士の実務を経て管理栄養士になる場合、「管理栄養士国家試験」に受験するためには、栄養士養成施設の修業年と実務期間が合計5年以上になる必要があります。
つまり、2年制の栄養士学校を卒業した場合、管理栄養士になるためには3年の実務経験が必要ですが、4年制の栄養士学校を卒業した場合、1年の実務経験で受験することができます。
平成29年の管理栄養士国家試験では、総受験者 19472名 のうち、合格者が 10622名 、合格率は 54.6％ でした。
その中で栄養士としての実務経験を経て受験した人が 8192名 、合格者が 1565名 、合格率は 19.3％ でした。総受験者の合格率と比較すると、実務経験を経た受験者は合格率が低めです。この合格率の差は、栄養士として働きながら、資格勉強をすることの厳しさを表しています。
管理栄養士を置かなければならない施設
健康増進法21条では、「特定給食施設であって特別の栄養管理が必要なものとして厚生労働省令で定めるところにより都道府県知事が指定するものの設置者は、当該特定給食施設に管理栄養士を置かなければならない」としています。
特定給食施設とは、次のような施設を指します。
- 医学的な管理を必要で、継続的に1回 300食以上又は1日 750食以上の食事を供給する施設
- 特別な栄養管理を必要とし、継続的に1回 500食以上又は1日1500食以上の食事を供給する施設
前者の施設には、病院や介護老人保健施設が当てはまります。後者の施設には、児童福祉施設、社会福祉施設(老人ホーム、障害者支援施設など)、事業所(自衛隊、矯正施設なども含む)などが当てはまります。
病院や介護老人保健施設で、管理栄養士を置く基準が低いのは、より繊細で専門的な栄養管理が必要とされるためです。
まとめ
以上、この記事では、「栄養士」と「管理栄養士」の違いについて解説しました。
- 栄養士：栄養の指導を行う職業・資格
- 管理栄養士：より専門的な栄養の指導を行う職業・資格
「管理栄養士」はより高度な知識を持つ「栄養士」です。そのため活躍できる場はより広いといえます。しかし、志望する業務内容によっては「栄養士」の知識で十分な場合もありますし、「栄養士」として活躍している人もいます。
「管理栄養士」は国家資格なので、資格取得は決して簡単ではありません。「栄養士」を志望する場合は自分のキャリアデザインを考えながら、将来を決める必要があるでしょう。
