「看護士」と「看護師」の違いとは?正しいのはどっち?わかりやすく解説

違いのギモン

病院に行くと、お医者さんのほかに、「かんごし」さんもいますよね。「かんごし」は白衣の天使とも言われることがあり、女性に人気の職業です。ところで、「かんごし」の漢字は「看護士」でしょうか。それとも「看護師」でしょうか。

どちらだか確信が持てないという人も多いと思います。そこで、今回は同じ読み方なのに別の意味を持つ「看護士」と「看護師」の違いについて解説していきたいと思います。

結論:看護士は男性のみを指し、看護師は看護人全般を指す

看護士は現在は法律上で使われていない用語ですが、昔の法律では男性看護人のことを指していました。

一方、看護師は現在の法律でつかわれている用語であり、看護人全般のことを指します。

序論:看護人の歴史

現在、特に日本では看護と宗教は無縁の存在ですよね。しかし、初期の看護は宗教と密接に結びついていました。なぜなら、男性の修道士が奉仕活動の一環で病院を訪れ、看護活動を行ったのが看護の起源だからです。

そして、修道士は男性の職業だったため、看護人は男性の職業でした。

 

しかし、クリミア戦争(※1)におけるフローレンス・ナイチンゲールの活躍により状況は変わります。

ナイチンゲールはイギリスの看護人でしたが、戦争で負傷した兵士を敵味方関係なく看護し、その死亡率を大幅に改善したのです。ちなみに、白衣の天使という言葉はナイチンゲールが由来です。

彼女は戦争が終結した後に世界初の看護学校となるナイチンゲール看護学校を設立し、宗教と密接に結びついていていた当時の看護学を改革して、体系的な学問として確立しました。

そして、ナイチンゲールが近代における看護の祖であることから、看護人は女性の職業として認識されるようになりました。

ちなみに、現在でも看護職についている人は男性より女性のほうが圧倒的に多く、看護人の93%ほどが女性です。ただ、男性の看護人の割合は上昇しつつあります。

  • クリミア戦争(※1):ロシアがオスマン帝国、イギリス、フランスなどと戦った戦争。

「看護士」とは

看護士は昔の法律で使われていた言葉で、男性の看護人のことを指していました。そして、女性の看護人のことを指す、看護婦の対になる言葉でした。

そもそも、最初に看護人に関する法律ができたのは1948年のことで、この法律は「保健婦助産婦看護婦法」というものです。そして、当時は男性の看護人も、女性の看護人も「看護婦」と呼ばれていました。

そして、この法律は50年以上同じ名前で存在しました。そのため、看護婦という言葉は私たちにもなじみの深い言葉です。

そして、1968年の法改正で、男性の看護人のことは看護士と呼ぶことに決まりました。女性は相変わらず看護婦です。

この法律は長い間このままでしたが、2002年に法律が改正され、法律の名前自体も変わります。「保健婦助産婦看護婦法」は「保健師助産師看護師法」に変わったのです。

これにともなって、男性の看護人も女性の看護人も「看護師」と呼ばれるようになりました。以上が看護人の職業名の変遷の歴史です。

 

看護師の詳細は次の項で解説するので、看護士に話を戻します。

昔、男性は看護士、女性は看護婦と呼ばれていましたが、違うのは名前だけで、看護士と看護婦に法律上で決められた業務内容の差はありませんでした。

しかし、やはり女性より男性のほうが力があります。そのため、実際には患者を監視したり押さえつけたりする必要がある精神科や、機材の運搬が必要な手術室周辺の仕事を行っている場合が多かったようです。

「看護師」とは

看護師とは現在の法律で使われている表現で、怪我や病気などの人を世話したり、医師の診療の補助を行ったりする職業のことです。

そもそも看護師は上の項で紹介した通り、2002年の法律で初めて出てきた、男性の看護人と女性の看護人の総称ですが、「師」という漢字には専門家やスペシャリストという意味が込められていると言われています。

これは、専門知識があまり必要ないと思われがちな看護の職を専門職として認識してもらうためです。医師や薬剤師にも「師」がついてますよね。これらの専門的な職と同じくらい専門知識が必要なんだと主張しているわけです。

 

ちなみに、男女で呼び名が統一されたのは、「男女共同参画社会基本法」も関係しているようです。この法律は男女が分けへだてなく社会進出をし、活躍してもらうことを目的としている法律です。

呼び名が違うとそこから男女差別が生まれてしまうので、看護人の名前は看護師に統一されました。

ほかにも、性的少数者に配慮するという意味もあります。男性と女性とで職業の名前が違うと、男性と女性しかないのだと感じ、生きづらさを感じてしまいますよね。看護師だと性別は関係なので、このようなことを気にすることなく職業を名乗ることができるのです。

まとめ

以上、この記事では、「看護士」と「看護師」の違いについて解説しました。

  • 看護士:昔の法律で使われていた、男性の看護人を指す言葉
  • 看護師:現在の法律で使われている、看護人の総称

「看護士」は現在使われていない言葉なので、冒頭の問題の答えは「看護師」です。まぎらわしいですが、間違えないようにしたいものです。

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和佐 崇史
文章を書くこと、読むことが大好きな大学生です。中学2年生で漢検2級を取得するなど、言葉については詳しい自信があります。Webライターとしてはこれまで累計1,000記事以上を執筆してきました。