生命が子孫を残すのに欠かせない DNA を構成する最小単位は「ヌクレオチド」だと、高校の生物の授業で習います。
ヌクレオチドの重合したものが DNA や RNA ですよね。
しかし、よく似た言葉として「ヌクレオシド」を聞いたことはありませんか?
「ヌクレオチド」と「ヌクレオシド」は同じものなのでしょうか。それとも、違いがあるのでしょうか。
結論:リン酸がくっついているのが「ヌクレオチド」
「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドにリン酸が化合したものです。
ヌクレオシドに使われる糖はデオキシリボースかリボースで、完成したヌクレオチドの重合体はそれぞれの頭文字をとって DNA、RNA と呼び分けられます。
「ヌクレオシド」をもっと詳しく
「ヌクレオシド」は、糖と塩基の化合物です。
糖は五炭糖で、DNA になるデオキシリボースか、RNA になるリボースが使われます。これらの糖が五炭糖と呼ばれるのは分子が五角形をしているからです。
デオキシ(deoxy)とは「酸素が取り除かれた」という意味で、酸素原子(O)が一つなくなっています。2’位(五角形の 2つめの角)のヒドロキシル基(OH のセット)が水素(H)に置き換わっているのです。
デオキシリボースの方が酸素原子が足りているリボースに比べて、DNA の構造である二重らせんになりやすく、そのため遺伝情報の保持には DNA の方が向いています。
しかし、遺伝子の複製の際には、二重に巻かれた DNA をほどいて転写する必要があります。その際にはらせんを巻きやすい DNA よりも、そのような性質のない RNA の方が有利なので、転写・運搬は RNA が担っています。
一部の細菌やウイルスは RNA しか持っていません。そのため遺伝情報が変わりやすく、病気の対策がしづらい原因にもなっています。
「塩基」とは核酸塩基のことで、核酸を構成する塩基は4種類あります。4種類の塩基は、2つずつ2種類に分けられます。
「プリン環」を持つ塩基(プリン塩基)として、アデニン(A)、グアニン(G)があります。ちなみに、痛風の原因と呼ばれる「プリン体」は、プリンの代謝によって作られてしまいます。
「ピリミジン塩基」として、チミン(T)、シトシン(C)があります。RNA では、チミンの代わりにウラシル(U)が使われています。
それぞれの塩基が結びついたヌクレオシドを、アデノシン、グアノシン、5-メチルウリジン、シチジン、ウリジンと呼びます。
「ヌクレオチド」をもっと詳しく
[出典:http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/nuclacid.htm#Top]
糖と塩基が結合したヌクレオシドに、さらにリン酸が結合するとヌクレオチドになります。リン酸は、糖の塩基とくっついていない 4’位にくっつきます。
ヌクレオチドがいくつも重なって、二重らせん状に巻かれたものが DNA となります。糖がリボースのものは、ヌクレオチドが重合しても一本鎖のままで RNA となります。
アデニンとチミン(ウラシル)、グアニンとシトシンがそれぞれ結合しやすい関係にあります(塩基の相補性)。
二重らせん構造は一本のヌクレオチドのポリマーが、それぞれ相補性によってもう一本鏡写しのように塩基を並べることですぐに作られます。
アデノシンに3つリン酸が結合したヌクレオチドの一種を「アデノシン3リン酸」、ATP と呼びます。
ATP は代謝には必要不可欠で、代謝で作られたエネルギーを運びます。
エネルギーを運べるのは、リン酸が高エネルギーリン酸結合をしているためです。いわばリン酸をくっつけている「のり」の部分に多くのエネルギーが詰め込まれているので、それをリン酸の切り離しによって放出することで必要な場所にエネルギーを送ることができます、
まとめ
以上、この記事では、「ヌクレオシド」と「ヌクレオチド」の違いについて解説しました。
- ヌクレオシド:糖と塩基が結合したもの
- ヌクレオチド:ヌクレオシドにリン酸が結合したもの